109 腹黒の部屋 彼女が強引だった訳
強引にライカの部屋に押し込まれ、私はやっと彼女の手から開放された。
彼女は、部屋に入った途端に鍵をかけた。
「ちょっと、何してるの!? 凄く犯罪臭い事してるって分かってる?」
部屋に連れ込まれ、逃げ道も塞がれた私は、身構えつつ問いかけた。
「そうね。でもその前に、まずは強引に進めてしまった事を謝らせて」
いきなり頭を下げるライカ。
「な、なんのつもりなの?」
先程までとは違う振舞い。もっと強気に攻めるタイプだと思っていたので、私は戸惑っていた。
「あなたが不満に思う事は当然だわ。それに、エミリーちゃんへの不義理について怒っているのも分かっている。何故自分が? と疑問もあるのは分かっているわ。順序立てて説明していくから、まずは話を聞いて欲しいわ。そこの椅子に座って。あ、飲み物は必要?」
これは演技だろうか? 私を騙すための? 私を飼いならそうとでもしているのだろうか。
「要らない。それよりも、あなたがこんな事をした理由について聞かせて」
私は勉強机とセットになっている椅子に腰を降ろし、話を急かした。
「気付いていないと思うけど、光の状況はとても不味いのよ。近い将来、必ず辛い目に遭うわ」
「あなたのせいで既にその片鱗を垣間見ているのだけど」
全ての原因はあんただと、睨みつける。
「こんなの序の口よ。あなた、中途入学という言葉を学院内で聞いた事がある?」
私の行動を無視し、ライカは話を続けた。
「ルスウィンさんが悪気も無く使っていたわね」
私は、この言葉が気に入らない。
一貫校では確かに言葉通りとも言えるのだけれど、進学という形で、この国の基準に沿って入学している。
中途入学という単語は、編入とも転校とも違い、割り込んできた余所者を指しているように聞こえて気分が悪い。
「この学院では一般的な単語よ。だから仕方ないわね」
「それは彼女も言っていたわ。それで、この言葉が何だというの?」
「分かりやすく言うと、ルスウィンさんや本郷さんと仲良くしている事が気に入らない生徒が大勢居るという事よ。途中から来た余所者が、人気者を独占してるってね。クラス内でそのような視線を感じた事は無い?」
「私に対して哀れみの目を向けられているのは分かるわ。二人で私に関わるから、何時も言い争うのよ」
「それは別の意味で大変ね。事情を汲んでくれるクラスで良かったわね」
二人が人気者なのは、入学当初から十分に理解出来た。コネ的な意味や、人間性的な意味でも。
「けれど、その事情を話だけで聞いている人達は違うわ。いきなりやって来た新参者が独占していると思う訳よ」
「それに加えて、今度は学院一の人気者を、シスター予定の子から奪って独占したという情報が加わる訳ね。あなたのせいで」
私は直球でライカに嫌味をぶつけた。
「そうね。そうなるのは自然な流れね」
「自然なって、あなたねぇっ」
反省の色が無く、当たり前だという態度に腹が立ち、詰め寄ろうと立ち上がる。
そんな私に、彼女は言った。
「エミリーちゃんとの約束を反故にして、光を選んだ理由がそこにあるのよ」
「何それ? まさかあなた、事態をややこしくしたくせに、私を守るためとか言い出すんじゃないでしょうね?」
先程の言葉から想像すると、一番導きやすい答えだった。




