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さあ、ワルツを  作者: 鰤金団
目覚めの光 姉との記憶
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108 敵意 話を聞かない人達

「では、これからも……。これからも、今までのように接しても良いのですか? 今までの関係で居てくれますか?」

 涙を堪え、エミリーは訊ねていた。

「もちろんよ。私達が先輩と後輩である事には、何時までも変わりないのだから」

 私がエミリーの立場なら、絶対に怒っていた。

 エミリーのライカへの入れ込み具合は度を越している。彼女はシスター制度を通し、家族のように深いつながりを持ちたいと考えていたはず。

 男女の仲に置き換えるなら、結婚式当日に別の相手と結婚するような暴挙だ。

 余りにも身勝手で、私なら絶対に許せない。


「分かりました。私はこれからも、ライカお姉様と呼び続けますよ」

「ええ、かまわないわ」

 エミリーは、それでも繋がりを切りたくないと、私が予想した通りの選択をした。

 そして、彼女は私の方を向いた。

「平野さん。私はあなたを許しません。この時から相容れない相手として、私はあなたをライバルとして見ますからね」

 まだシスターになるとも言っていない私に対し、ライバル宣言をするエミリー。

 全方位から見ても巻き込まれている私としては、迷惑でしかない。

 結果は見えているけれど、もう一度だけ訴えてみよう。

「ルスウィンさん。よく聞いて。私の負けで良いので、この人を引き取って。こんな面倒な状況に巻き込まれたくありません。それに、あなたも知っての通り、私は制度を利用する気は無かったの。だからね、分かってくれない?」

 ライカがどんな大企業の娘なのかは分からない。後で調べれば惜しい事をしたと思うほどかもしれない。でも私は、まだ分からない未知のお嬢様との関係よりも、既に分かっているお嬢様との関係を維持したい。

 エミリーに嫌われては、学院でも一二を争そうであろう大企業の娘との繋がりが一つ消えてしまう。

 それは、私にとって痛手だ。だから、彼女が欲しがっているライカ先輩を全力で押し付け、関係を維持しておきたかった。


「勝者の余裕ですか? ですが、勝負すらしていないのに譲り受けられません」

 最初から要らないと、引き取って欲しいと繰り返し言っているのに、プライドが許さないのか、エミリーは頑なだった。

「では、勝負しましょう。じゃんけんで。私はパーしか出さないので、勝ってください」

 誰の目から見ても分かる勝負だったら後腐れも無いだろうと、半ば破れかぶれだった。

「その様に手の内を宣言されては勝負ではありません。そもそも、ライカお姉様を物のように扱おうとするなんて失礼が過ぎますよ」

 ライカを崇拝している相手には申し訳無いのだけれど、私は本当に嫌がっていた。

 だから、彼女にその思いを理解してもらい、この勝負に買ってもらいたい一心で、嘘偽りの無い言葉で伝え続ける。

「ルスウィンさん。私はね、学院一の有名人とシスターの関係になるつもりは無いの。今だって周囲の目が凄いんだもの。それに、人間的にもこの人に好感が持てません」

 周囲がざわつく。まあ、学院の人間全員から人気のある人物に対して、ここまで言っているのだ。当然だろう。

 けれども、それを承知の上で発言していた。

 ここまで抵抗をして見せれば、あらぬ疑いは払拭されるはず。


「本当に光さんは凄いわ。ライカさんに対してここまで言う人を見たのは始めてだもの」

 場が騒然とする中、エミリーのお姉さんが先ほどと同じ事を言いながら驚いていた。

 姉には私の思いが伝わっているようなので、きっと妹にだって伝わっているはず。

「そうね。私もここまで嫌われたのは始めてだわ。けれど、この場でそれを言える度胸がある事が知れて嬉しいわ。光、立派よ」

 拒絶された本人が、何故か上機嫌で褒めてきた。頭がどうかしているようにしか思えない。

「くっ。いきなり仲の良さアピールですか。見せつけてきますね。ですが、絶対に私はあなたに勝ってみせますからね。覚えておきなさい」

 これほど繰り返したのに、妹の方は何も理解していなかった。それどころか、肝心の勝負をせずに料理が並ぶテーブルに行ってしまった。


「え? これ、私が勝ったみたいな流れじゃない。勝手な事しないで……」

 会に参加した人達が、私が戦わずに勝ったみたいな反応をし、ざわつきが大きくなった。

 聞こえてくるのは、中途入学の方が学園の人気者を奪ったという内容のやりとり。

 これはもう、私が無実を訴えても意味が無い。誰も私の話など聞いてはくれないだろう。

「エミリーちゃんが騒ぎにしてしまって、本当にごめんなさいね」

 崖っぷち状態に項垂れている私に対し、ユミリア先輩は声をかけてた。その姉的な振る舞いをもっと早く出してくれていれば、私がここまで追い込まれる事はなかったと思うのだけれど……。しかし、言い返せない。文句を言ったら、周囲に更に根も葉もない噂を広められてしまうだろうから。

「この先の事を考えると、お先が真っ暗ですけど、頑張るので気にしないでください」

 様々な思いを押し込めた結果、これ以上の事は言えなかった。

「これで問題は解決したわね。ユミリアさん、私は部屋に戻るわね。光を部屋まで案内しないといけないから」

 周囲を静めもせず、まるっと解決したと言わんばかりの振る舞いをするライカ。


「何も解決してないでしょうが。それに、私はあなたと一緒にならないって何度も言ってるでしょ」

 距離を詰めてきたので、私は離れた。

「もうっ。光は本当に照れ隠しが凄いんだから。ほら、こっちよ」

「あ、待って。話は終わって無いし、料理もまだ食べてな……」

 素早く動き、ライカは強引に私の手を掴んだ。そして、そのまま寮へと私を引っ張った。

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