105 強引な人々
「私の時なんかは、二言目には緊張が無くなってたみたいだけどね」
場が収まりそうな所で、水を差して横槍を入れてくるライカ先輩。彼女は何故、私にちょっかいを出してくるのか。
「良かったですね。先輩は、それくらい打ち打ち解けやすい人だったんですよ。距離感を大事にしてくださいね。嫌われますよ」
仕返しとばかりに少し刺し返す。
「あら。私は何時でも適切な距離で接しているつもりよ」
面の皮が段違いに厚いのか、気にしてすらいない様子。
「そうでしたか。なら、私達の距離を測り直した方がよろしいのでは?」
二度と近づくなと、オブラートで形くらいしか分からない程度に包んで送る。
「それは、もっと距離を詰めても良いという事? 光は意外と甘えん坊なのね。可愛いわ」
会話をしていたら、眩暈がしてきました。私とのこれまでのやり取りで、何故その答えが出てくるのか。脳が腐ってるとしか思えない。
「凄いわね、光さん。ここまでグイグイ行くライカさんを見たのは始めてです。ライカさんとこんなに自然に話せる人も」
やっぱり自分もこんな関係が欲しいと、羨ましそうな感情が声に出ているユミリア先輩。
私は、先輩の言葉を聞いても全く喜べなかった。何しろ、最初に出会った時から、ずっと迷惑としか思っていないからだ。
「そうなんですか。私としては遠慮したいのですが……」
オブラートの在庫が無くなったので、かなり直球で嫌ってみた。
すると、彼女を崇拝していたルスウィンさんがクレームを付けてきた。
先程から視線で殺されそうになっていたし、彼女なら仕方ない。
「平野さん。ライカお姉様とお話出来る事が、仲良くしてもらえる事が、どれほどに幸せな事か理解出来ていないようですね」
テレビの悪役が言いそうな台詞だ。まさか、自分が直接言われるとは思わなかった。
「それは仕方ありません。私は先輩の事を良く知りませんから」
「では、僭越ながら私が、ここで、お話ししましょう。ライカお姉様の素晴らしさを、食事を交えて語りましょう」
トークショーをするつもりのようだ。彼女は、信者が増えるのなら苦労は厭わないらしい。
「本当にそれは遠慮します」
私はただ、強制参加だから顔を出しているだけだ。だというのに、どうしてこんなにも面倒な絡み方をする人達に絡まれなければならないのだろう。
「エミリーちゃん。光さんが困っているから落ち着きなさい」
ピシャリと言う様は、実姉でなければ出来ない事だった。
「ですが、お姉様……」
表立ってはお姉様と言って使い分けているらしい。小さな子どものように、むくれるルスウィンさん。これはこれで珍しい。衆人の中で取り繕うも、身内への接し方らが漏れ出ているのが面白い。まあ、そんな場合では無いのだけれど。
「本郷さん。そろそろ助けてもらえない?」
姉妹のやり取りを見続ければ、二度と見る事が出来ないエミリーの一面を見れそうだとは思ったけれど、私の精神が持たなくなっては意味が無い。なので助けを求めた。
「ごめん。面白いからもう少し見ていたい」
それは私も同意見だ。けど、彼方は観客側で、私は巻き込まれている。この違いは大きい。
(ああ、もう帰りたい……)
交流会のあいさつが終わった後は自由にして良いという話なので、早くその時になるのを願うばかりだ。
「可哀そうに。私の隣りに居なさい、光」
しれっと味方面するライカ先輩の面の皮の厚さには、本当に驚かされる。
「元を辿ると、先輩がきっかけなんですけど?」
嫌味全開で、私は彼女に言葉をぶつけた。
「と言いつつも、今の方があなたらしいと思うのだけど」
「何を言い出すんですか」
自分を見抜かれたようで、動揺が表に出そうになった。
「あ、会のあいさつが始まるよ」
本郷さんの言葉を聞き、揉め事を止め、私達は用意されていた壇上に視線を向けた。




