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さあ、ワルツを  作者: 鰤金団
目覚めの光 姉との記憶
103/182

103 籠の中の打開策

「ふぅ。疲れた……」

 休憩を終えた後も続いた案内でも、二人の張り合いは続いた。

 その間に挟まれ続けた私は、疲労困憊で部屋に戻って来た。

「こんな近場でも疲れているのは、慣れない場所での緊張か。いや、気疲れもプラスされてるか」

 どちらか片方なら大丈夫だと思うけど、ダブルだと本当にきつかった。これからは気を付けよう。

 本当の意味で初日を終えた私は、二人同時には関わらないようにしようと決めた。

 けれども、翌日からも二人は事あるごとに、示し合わせたかのように同時にやって来る。

 これにより、私の計画は大幅に狂ってしまった。

 これは重大な問題だ。二人以外と接点が持てないのだから。

 広く、ほどほどに太く繋がりを持つはずが、現状では浅く、図太くになってしまった。

 エミリーが世界企業の娘であるのは理解していたけれど、彼方の方も凄い会社のトップの娘だったのだ。

 彼方は、有名な本郷グループの娘だった。

 本郷グループのメインは運送業。国内トップのシェアであり、この国の血液だなんて呼ばれるほどの会社だ。国外の配達も海外にある支社が請け負うという、一社で全てを賄うという国内初の配達形式を行っている。国外までカバー出来るのは、国内トップだから出来る事だろう。

 けれど、本郷グループはこれだけでは終わらない。世界を飛び回って得たノウハウを元に立ち上げた旅行会社も大成功させている。様々なニーズにマッチしたプランを提供してくれると好評で、国内の旅行会社の中でも、海外支店が最も多く、どんな辺境でも現地で手厚く対応してくれる。

 他社では真似すら難しい事をやってのけているのは、やはり国内トップだからと言わざるおえない

 図らずも、親の権力が学院内でも上位に入る二人と接点を持ててしまったのだ。


 成果だけを見れば、十分過ぎるほどだ。

 けれど、日が過ぎるほどに気付き、肌で分かってしまった。学院側は親の社会的立場に関係無く指導すると言っているが、生徒達がその指針と同じ行動が出来る訳では無い。

 あの二人は、揃えば張り合ってばかり。そして、この時に二人の間に入ってくる人は誰も居ない。

 ある意味で独り占め状態になっているので、彼女らに近付く生徒達から不快に思われているかと不安になった時もあった。けれど、二人に挟まれている時の私を見る周囲の目は、哀れみだと気付いた。右も左も分からない新入生が、学院の二大派閥のトップの争いに巻き込まれているように見えるようだ。

 そりゃあ、私の所に来ては言い争うのだから、そういう見え方もするだろう。


 ほぼ四六時中二人と、もしくはどちらかと一緒に居る状況は不味いと思い、朝早くに教室に向かうようにした。

 流石に朝の時間は被らないだろうと思ったから。

 しかし、これも失敗に終わった。

 蓋を開けてみたら、一、二を争そうほどにエミリーが教室に来るのが早かった。

 顔見知り同士が人の居ない時間に出会えば、朝が早い者同士だと共感し、仲が深まる。

 エミリーとの友好度が上がっただけで、問題は更に悪化してしまった。

 今や私は、エミリーと彼方という二人の籠に閉じ込められてしまっていた。籠の中に入れられてしまっては、外に出る事が出来ない。それは、他のコネが作れないという事を意味していた。

 私は、現状を打開出来ないまま、シスター制度の相手を探すための交流会の日を迎えた。

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