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さあ、ワルツを  作者: 鰤金団
目覚めの光 姉との記憶
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101 板挟み

「平野さん、ちょっと待ってください」

 二人で教室を出ようとすると、覚えのある声に引き留められた。

 振り返ると、エミリーがこちらに近付いてきた。

「えっと、ルスウィンさん。どうしたのですか?」

 今まで、クラスメイトに囲まれていた彼女が、私達の所に来る理由が分からなかった。

「お二人はこれからどちらに行かれるのですか?」

「平野さんに学院を案内しようとしてたんだよ」

「そうですか。では、私も平野さんを案内しましょう」

 まさかの案内役二人目。


「いやいや。これから二人で行こうとしていたから。エミリーさんは間に合ってるよ」

 別に一人が二人になろうとかまわないのだけれど。二人はもしかして仲が悪いのだろうか?

 実際には見えないけれど、火花が散っているのが分かる。

(これは困った。本郷さんの方が会話が弾みそうだ。それに、最初に誘ってくれたのは彼女。流れ的にも、彼女に案内をされるのが道理だ。けれど、強いコネを得るにはエミリーに案内を頼んだ方が良いだろう。何せ、世界企業の娘だもの。けれど、本郷さんの家系がどのような仕事をしているかも分からないから、無下にするというのも絶対に後で影響が出るし……)

 私は、両方との関係を維持しつつ、波風が立たない手段を考えた。

「そうです。せっかくですから、三人で行きましょう。一人より二人。二人より三人です」

 そう、コネは多ければ多いほど良い。

「平野さんが望むのであれば、まあ」

「平野さんを困らせてもしょうがないしね」

 二人とも物分かりが良く、簡単に折れてくれて助かった。今日が初対面の相手の喧嘩の仲裁なんてどうすれば良いか分からないもの。


 それから、学院案内をする二人の様子を見ていると面白い事が分かった。

 エミリーは、これこそお嬢様と思わせるほどに振る舞いが優雅だ。すれ違う生徒達が身を正してあいさつをする様は、ドラマですか? と尋ねたくなるほど。家柄か、生まれながらなのか。それとも近くに見本になる相手が居たのだろう。けれど、品行方正を地で行くような彼女の在り方は、常に傍に居ると疲れそうだ。私が目指す振る舞いのお手本にしようと思うけれど、交流は合間の休憩時間の回数分だけでいいと思った。

 本郷さんは反対に、周囲の人が吸い寄せられるように近付き、自然と声をかけられていた。

 彼女は同級生相手には、私にも馴染みのある肩ひじを張らないあいさつで返す。上級生には可愛がりたくなるような妹。下級生には親しみやすいお姉さん。そんな感じで接していた。本郷さんとならば、お茶を飲みつつの長話をしても苦にならないだろう。

 結論を言うと、二人は正反対だった。

 先程の険悪な雰囲気も、単純にそりが合わないからのようだ。

 案内を受けていると、何かにつけて張り合っている事が分かった。

 食堂や図書館等の場所へ行くと、一つでも多くの情報を言おうと頑張るのだ。

 嫌っているのならば距離を取れば良いのに、何故こうも張り合おうとするのか。


 休憩中、ついでに私は聞いてみる事にした。

「二人は、この学院に初等部の頃から居るのですか?」

「そうですね。この学院の事なら隅々まで知っていますよ」

「なら私は、裏の裏まで知ってるけどね」

 小さな子どもの喧嘩を思い出しました。

「大きく出るのは良いですが、大きくなりすぎると、戻る所が無くなりますよ」

「ただ長く居るだけの人に言われてもねぇ」

 さらに続いて、二人はまた目に見えない火花を散らしていました。

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