1 プロローグ
聖サンブライト学院。
そこは小中高の一貫の全寮制の女学校。
学院は、海外で活躍出来る淑女を育てるための教育機関である。
設立当初に海外に行く事が出来るのは、政府関係者か、極少数のお金持ちでしかなかったため、お嬢様学校として、計画時から呼ばれていた。
その目的のため、教師は内外問わず、一流の者が集められた。
質の高い授業を維持するため、自然と授業料は高額になっていた。
そのような高額な授業料を支払えるのは、全国にある名だたる企業の上位の関係者しか居なかった。
こうした事実により、揶揄に等しいお嬢様学校という呼び名は一般的に浸透していった。
だが、現在は事情が異なっている。昨今の少子化に影響を受け、小中高の一年生時にのみ、外からも入学が可能となっている。現代でも高いとされる授業料も、庶民でも出せる金額となっていた。
もちろん、開校当時と同じく高い理念は今も変わらない。
しかし、当時ほど厳密では無くなっていた。
それでも、聖サンブライト学院を卒業したと聞くと、誰もがその者に一目を置くほどに地位は保たれていた。
あそこを出たのだから、知識、礼節、立ち振る舞いの美しさを兼ね備えた淑女なのだと。
学院の名を知る男子からも卒業生は人気が高く、ぜひとも彼女に、生涯の伴侶にと望むほど。
国内の人気も高いが、今では羽ばたいた先輩達のおかげで、海外からも入学を希望する者が後を絶たない。
古風ながらも愛らしく品の有る制服に夢を持つ者。大和撫子に憧れる者。学院で修得出来る全てを身に付け、自身に箔を付けたい者。他にも様々な者が門を叩く。
今年もまた、様々な理由で学院の試験に挑む者達が集まった。
その中でも、一際異彩を放つ理由で試験に挑む者が居た。
少女は、学院のとある生徒との出会いをきっかけに、その生徒に強く憧れた。
彼女が出会ったその人は、自身と同じく一般人だった。
しかし、お嬢様学校の中でも強く、逞しく生きている姿に感銘を受け、彼女のようになりたいと願った。
この少女をきっかけに、どれほどの人々の在り方を変えるのか。彼女はまだ知らない。