表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

一目惚れって傍若無人!

掲載日:2021/03/27

短編です。

何も考えずにサラッと読んでください。



シーボン・ハウズは斜陽男爵家の三女。

庁舎の医局で救護員をしている。

ある日、残業で遅くなったら、乗っていた乗合馬車が事故で迂回する事になってしまった。

すると、運の悪い事に盗賊に襲われている馬車を目撃してしまう。


馬車襲撃事件をきっかけに生まれる一目惚れを目撃するお話です。


頭をぶつけて痛みで目が覚めた。

「痛ったい!」

口の中で小さく呟いた。


ここは乗合馬車の中。


馬車の中で寝るとスリにあうから寝ちゃダメだって言われてたのに、残業の疲れでうたたねしてしまった。


朝は天気がよかったのにいつのまにか降り出した雨で乗合馬車は混み合っていた。

降り出した雨は強さを増すばかりで、一向に止む気配は無い。


今日は忙しかった…。

私が勤めるのは騎士団がいる庁舎の中の医局。

私はそこで救護員をしている。


今日は騎士団の演習があって怪我人が多数出たので忙しかった…。

「演習であんなに怪我人を出すなんて!

もしもこのタイミングで他国から攻め込まれたらどうするつもりなのかしら?これだから脳筋は!」

って、先輩方は終わってから文句を言っていた。


まだ見習いの私は、少ししか手当をしていない。

それでもこんなに疲れたのだから先輩達はさぞお疲れだろう。


だらしなく寝ていた私の斜め前に、いつもの可愛らしい女性が座っている事に気づいた。


この可愛らしい女性は私が乗る庁舎前の次の停留所である図書館前からいつも乗ってくる。


長い金髪を綺麗に結っていて、小さい顔に大きな垂れ目。ツンと上を向いた形の良い小さな鼻。そしてぷっくりとしたピンク色の唇。

歳は…多分同じくらいだと思う。

質素なドレスを纏っているが、綺麗にメイクをした顔はまるでお人形のようで、そこにいるだけで美貌がダダ漏れしている。

そんな彼女を心の中では『夕暮れの乙女』って呼んでいる。


それに比べて私は…赤毛に近い茶色の髪は生まれつきの癖毛で、クルクルと色々な方向に向いている。

肌は白いがそばかすがあって、ノッポで寸胴。

しかも今日は、うたた寝をしてだらしない顔を晒してしまった。

せめてもの救いはヨダレを垂らす直前であったこと…。




いつもの女性が乗ってきた事すら気付かないくらい、乗ってすぐに寝ちゃったんだ。


今、ここはどのあたりかな?


外を見た。あと2つくらいで家の近くの停留所だ。


外は薄暗い。

雨のせいで余計に暗く感じる。


急に馬車が止まった。


しばらくしてから


「お客さん方、すいません、この先で馬車同士の事故があったみたいで通れないので迂回します。

乗合馬車は車体が大きいので『公園通り』を通る道しか馬車が入れません。

だから、かなり時間がかかります。降りたい方はいますか?」

と御者が言った。


晴れていたら降りて歩く人が多いだろうが外は雨。

誰も降りなかった。


馬車が通る事にした『公園通り』とは、広大な敷地の公園の中を抜ける道だ。

この公園は、バラ園があったり小さな池があったりと、大きな都市の中の憩いの場だ。

だけど、薄暗くなってからでは真っ暗で誰も寄り付かない。

今、馬車が走っている道は林道で、夏は木陰になっていて涼しいが、今はただ暗いだけの陰気な道だ。


馬車はそんな公園の林道の中を走り出した。


雨が降っている上に日没が近いから余計に薄暗く感じる。


少し進んだところで馬車が止まった。



今度は何?


遠くから激しく争っている声がする。

出入り口横に座っていた居眠りをしていた若い男性が目を覚ますと立ち上がり、外に出た。


様子を見に行ったようだが、すぐに戻ってきて、小さな声で言った。

「今、先に通過しようとした馬車が盗賊に襲われているようだ。

カーブの先で盗賊が馬車を囲んでいる。

来た道を戻りたいが馬車が大きすぎる。

盗賊に見つからないように木陰に馬車を隠すから声を出すなよ。」


男性は馬車内の蝋燭を消すよう指示を出した。


手分けして馬車の中の蝋燭の火を消した。


それから男性は外に出て、御者の手伝いをして馬車を木陰に隠した。

そして馬車を引いている2頭の馬のうち、一頭を外して御者に

「騎士団か警備隊を呼んできてくれ!」

と言うと、襲われている馬車に向かって走って行った。


皆声を出さないように震えていた。

男性の指示で盗賊から人影が見えないように床に座って外の様子を伺っている。


出入り口の木陰の先に襲われている馬車が見える。


先ほど馬車を誘導した男性は襲っている盗賊をなぎ倒して、馬車を守る騎士に加勢している。



「なんて正義感ある人なんだ。あの人に神様の加護を」

と横に座っているおばあちゃんが祈り出した直後。


あの可愛らしい女性が立ち上がると、外に出た。

馬車の中にいた人は、皆、動けない。



もしかしてパニックになって飛び出したのかしら?



女性は男性の後を追うように襲われている馬車に向かって走って行った。

盗賊に向かって走っていく!


「若い女の子には何もできないよ!」横のお婆ちゃんがつぶやいた。



しかし彼女は私たちの心配をよそに馬車を囲む盗賊に近づくと、いきなり、最後尾の盗賊の頭を回し蹴りで蹴り倒した!

そして蹴り倒した盗賊の剣を奪い、バッタバッタと盗賊を切り倒していく!


パニエの入ったフワフワなスカートはそのままで、

フワッと広がる扱いにくいドレスをものともせず蹴りを繰り出しながら、次から次へとなぎ倒していく。


その様子を馬車の乗客は皆、何が起きているか分からず見守っていた。



あの可愛らしい女性は一体何者なの?

いつも馬車の中で見る姿は儚げで、少なくとも勝手に片思いしていた殿方は多いであろう…。

だからだろうか。

身を潜める殿方の中には理解不能に陥っている方々がいる。でも、目がハートになっている殿方も…。



しかし盗賊の数が多すぎる!

乗合馬車から二人加勢したくらいではどうにかなるようには思えなかった。


それでも、加勢できない私達は声を潜めて身を寄せ合って縮こまっているしかできない。

皆、祈っていた…。




…。

気のせいだろうか?

だんだん盗賊が劣勢になっている。



そしてとうとう、盗賊を全滅させた。

時間にして約30分くらいの出来事だった…。


『夕暮れの乙女』は襲われていた馬車の入り口を開けて中をのぞくと、一緒に加勢していた若い男性に何かを言ってこちらに走って来た。

そして馬車の中をキョロキョロと見回した。

…私と目が合った。


「お前」

『夕暮れの乙女』は儚げな見た目とは真逆のハスキーな声で私を見て言った。


私はびっくりして自分を指さした。


「そうだ。クルクルの赤毛でそばかすがあるおまえだ」

私の容姿…。

気にしてるのにー!


「その袋の中に気付薬を持っているであろう?」


…レディの言葉使いではない…。


「はっ、はい。なんでご存知なんですか?」

確かに私は今日のお昼休みに医局で気付薬を買った。

寝込んでいる母のために。


「やはりか。

なら、気付薬と救護袋を持ってついてこい!」


なぜ、両方持っている事を知っているんだろうか?

普段なら救護袋は医局に置いてくるが、今日は後片付けで遅くなり気がついたら医局の鍵がかかっていたので持って帰ってきた。


私は立ち上がり、馬車を降りた。

この見た目だけは天使な『夕暮れの乙女』は私が馬車を降りる時に手を貸してくれた。



雨でぬかるんでいる林を進み、襲われていた馬車の前まで来た。

倒れている沢山の盗賊の間を歩き、馬車にたどり着いた。


「やんごとなきお方だ。手当をして差し上げろ」

そう言われて中に入った。

綺麗な年配の女性が、座っているが体調が悪いようで息が荒い。

そばについている侍女はどうしていいか分からず顔面蒼白だ。


私は脈をみたりして、持っていた気付薬を飲んでいただいた。


「この方の様子は私が見ているから、護衛騎士の手当をしろ」

と夕暮れの乙女に言われ、馬車から降りた。


騎士服の男性4名がおり、手当をしていく。

乗合馬車から降りた、あの若い男性も手当をしようとしたが林の方に何かを見つけて走って行った。




ちょうど手当が終わった頃、乗合馬車の御者が警備隊を連れて戻ってきた。



それから少しして、このすこぶる強い『夕暮れの乙女』と一緒に戦っていた男性は、辻馬車の御者席に乗って戻ってきた。


「この辻馬車に似せた馬車に乗っている奴らが主犯だ。今気絶させてあるから早く縛ってくれ」

男性を見て警備隊長は敬礼をした。


「わかりました!しかし第一騎士団の副団長であるブライアン・ゴーダ様。

貴方様が偶然通りかかったから被害が少なかったんですね」

と警備隊長に言われて、


「偶然通りかかったのは私だけではないよ」

と苦笑いをしながら返事をしていた。

「あちらの馬車には、やんごとなきお方がいる。失礼のないように」

とゴーダ様は言い、


「集まった警備隊の3割は盗賊を捕獲し連行。

この辻馬車の中の連中も連れて行ってくれ。」

と辻馬車を開けて、中にいる貴族らしき外見の男を引きずり出した。


「それから、数名は、乗合馬車を大通りまで運ぶ事。

残った大半は、やんごとなき方の馬車の警護だ。」

ゴーダ様が指示を出した。


ゴーダ様は私を見て、

「君は…庁舎の救護員だね?

確か名前は、シボーン・ハウズ。いつも、救護長のサラの後に金魚の糞のようについて歩いている子だ。」


私は、恥ずかしくなって下を向いた。

金魚の糞…確かにそうです。


「ハウズ嬢。君は、あの方に寄り添ってくれないだろうか?

警備隊員に、今晩は公務が長引くと君の家に連絡をしてもらうがそれでも良いか?」


「はい」

と私は答えた。そして、警備隊員に住所を聞かれて伝えた。


私は馬車に向かった。

やんごとなき方がいらっしゃる馬車の中に入るのと入れ違いに、あの可愛らしい女性が馬車から飛び降りた。


そしてすごい勢いで、辻馬車から引きずり出された貴族の前に行くと、乱暴に貴族の顔を自分の方に向かせた。


「貴様は!

コックス男爵!お前、後ろ暗い噂があったが証拠がなかった奴だ。

今回の件は言い逃れができない。

覚悟しろや!」

とドスの効いた声で言った。


「それから、これはな」

と言うと、コックス男爵の背中を2回蹴り上げた。


「一回目はな、アタシの一張羅が泥だらけで使い物にならなくなった事への制裁だ。

それから、2回目は、あの子のドレスも使い物にならなくなった事への制裁だ!」

と言った。


顔に似合わないこの行動とドスの効いた声に恐怖を感じる…。

今までずっと天使だと思って眺めていた美女が、悪魔通り越し、魔王だった事は知りたくなかった。




空っぽになった辻馬車には、負傷している護衛騎士が乗り、御者席にゴーダ様が乗った。



私は、やんごとなき方の馬車に乗り出発した。

馬車の中には、護衛として『夕暮れの乙女、改め、魔王』と、看護師として私が乗った。


『夕暮れの乙女、改め、魔王』は、やんごとなき方に騎士の礼をして

「第二騎士団団長の、シャロン・ニボアと申します。

この度、護衛役を承りました。

この通り私は汚れておりますがどうか、少しの間、ご寛恕賜りたくお願い申し上げます」

と、先程のまでのドスの効いた声とは違う、可愛らしい声で挨拶をした。



ニボア団長様だったの!?

私がずっと『夕暮れの乙女』と心の中で呼んで憧れていた女性がニボア様なの?

この天使のような美女が?


メイクをすると別人で全く気づかなかった…。


ニボア団長は、そこらの男性騎士より強い女性で、20歳にしてすでに第二騎士団の団長さんだ。

男前な性格と、ドスの効いた声、そしてノーメイクで無造作に髪を一つに結んでいる。それが私の知っているニボア様。

ニボア様が通った後には屍だけが残ると言われている殺戮の女神だ。


今日の残業の原因となった演習も、ニボア様がほとんどの騎士を使い物にできないくらい傷だらけにしたから…。

だから私は残業を…。

あっ。それにニボア様は私が医局で気付薬を買う時に、医局の薬剤師と喧嘩していた…。

だから私が薬を持っているのを知っていたのね。



ニボア様に続き、私も挨拶をした。

「私はシーボン・ハウズ。庁舎の医局で救護員をしております。しばらくの間、付き添いいたします」

私はカーテシーをしてから、このやんごとなき方の様子を見た。


やんごとなき方は、先程の気付薬が聞いたのか穏やかに休んでいらっしゃった。





馬車にしばらく乗っていると、公園を抜けて、お城に近づいてきた。

城の門番が扉を開ける…。


警備隊はここまで。

あとは、馬車と、護衛騎士を乗せた辻馬車が門番の前を通過した。


…この方、王族だったの????


全く気づいていなかったバカは…どうやら私だけだよね…。



馬車は城の奥へと進み、城内の庭園を過ぎたところで止まった。


馬車のドアが開いた。


執事に促され、私とニボア様は馬車を降りた。


「おかえりなさいませ。上皇后様」

と執事が挨拶をして、上皇后様はタンカに乗せられ、待機していたお医者様と共にどこかへ行ってしまった。



執事はまだそこに待機しており、

「この度は、お忍びでお出かけした上皇后様の危機を救っていただきありがとうございます。

私は執事のポールと申します」

と丁寧に挨拶をしてくれた。



「第二騎士団団長の、シャロン・ニボアでございます」

ニボア様はまたもや可愛らしい声で騎士の礼をした。



私の挨拶の番だ。

「シーボン・ハウズと申します。庁舎の医局で救護員をしております。」

とカーテシーをした。


「もうお時間も遅いので、2人のお嬢様方にはお部屋を用意いたしました。今晩はゆっくりお過ごし下さい」

と言うと、控えていた侍女が来て、湯浴みに案内された。


靴も、ドレスも泥だらけで、あらためてみるともう泥ジミで使えないものになっていた。

…さっきニボア様が盗賊団頭にケリを入れていた気持ちがわかったわ。

これ、私のある意味一張羅。

通勤用に使っている数少ないドレス。


泣きたいけどここは我慢。

だって側から見ればみすぼらしいドレス。


私は涙を我慢して湯浴みの準備をした。



…湯浴みは素晴らしかった!

ドレスがダメになってしまった悲しみよりも、湯浴みの素晴らしさが勝った!


お姫様のように薔薇の浮かんだいい匂いのするお湯に贅沢に浸かるだなんて、一生経験する事はないであろう贅沢な体験をしちゃった!

しかも、侍女の方がお手伝いをしてくれる。

王城の内部にお勤めする侍女は高い地位の方も多いらしいけど、私は斜陽男爵の三女。

きっと今お手伝いしてくれている方々の方が地位が上のはずなのに、嫌な顔せずに私の世話を甲斐甲斐しく焼いてくれた。



湯浴みの後はシンプルな肌触りの良いドレスと、靴が用意されており、豪華なダイニングに案内された。


そこには、ニボア様がすでに座っていた。


給仕のメイドが控えているせいだろうか。

綺麗にメイクを施したニボア様は、流行りの髪型など淑女らしい会話をしてコロコロと笑う。


さっきの『魔王』どこに行ったの?

今は私が勝手に作り上げた妄想の『夕暮れの乙女』そのものが目の前にいる。

でも、これがきっと幻想なのかな…。


そんな事を考えるのは、給仕のメイドに見守られながら高級なディナーを食べるという、またしても一生味わうことのない経験をしているから。


ううう、緊張して味がわからない…。



ディナーの後、執事のポールさんが

「お食事はいかがでしたか?」

と聞いてくれたので、

「恥ずかしながら緊張いたしました」

と答えると


「お嬢様方、それなら緊張をほぐすために、私達が使う食堂に行ってみますか?

楽団が演奏していて、活気ある食堂です。

お好きなお飲み物や、デザートをお楽しみいただけますが、いかがいたしましょうか?」

と聞いてくれたので、

「是非行きたいです」

と答えた。



ポールさんに案内してもらい、王城の食堂に向かった。

中では、楽団が演奏する民族音楽や流行歌が流れる中で、沢山の人が食事をしていた。


私とニボア様は、サングリアをもらって2人がけの席に着いた。

おつまみにはサラミとチーズだ。


「今日の一件で、もう乗合馬車で通勤できなくなってしまった。あーあ。

どーすっかなーー。」

と元の口調に戻ったニボア様。


「…確かに、盗賊をやっつけたのはあの美女だーってなっちゃいますね。

そもそもなぜ制服のままでいないんですか?

騎士って男女問わずエリート職じゃないですか」


「あれは…その…なんだ。騎士の格好のまま帰れないから…」


「?ニボア様、それなら騎士用の寮に入っちゃえばいいんじゃないですか?」


「それも考えたんだがな。騎士団に就職する時のお父様の出した条件は家から通う事だったんだよ」


「あら!ニボア様、ひょっとして、いいお家柄なんですか?」


「お前、私がニボアだとわかっても普通にしてくれるんだな。お前、いい奴だな。

救護の時はオドオドしてるけど」


「オドオドとかやめてくださいよ。…なんでニボア様は新人の私の顔知ってるんですか?」


「お前は、騎士団の男供の間では有名な新人なんだ。お前の顔は、すごく整っていて、いわゆるクールビューティってやつらしい。」


「私は、自分の見た目、子供の頃から揶揄われてすごくコンプレックスだったのに」


「それはだな、好きな子にちょっかい出したくなるってやつじゃないのか?」


「えー?迷惑ぅ。ニボア様はどうなんですか?すごくモテるでしょ?」


「この性格を隠して人前に出ないといけないから、私はあまり人前には出ない。

実はな、私の家は伯爵家なんだ。

私には兄弟が多くて。この口調と、ガサツな態度。

妹達には、『姉がこんなだとバレたら嫁の貰い手がなくなる』だとか、兄弟には『こんな姉妹がいたのでは誰も嫁に来てくれない』だとか文句を言われてな。

仕事の時は伯爵家の名前は出すなと言われている。

だから、ニボア姓は、母の旧姓なんだよ。

母は、隣国から嫁に来たから…」

とニボア様。



「その話、本当か?」

といきなり話に割り込んできた人がいた。


なんと!盗賊団と戦っていた上皇后様おつきの騎士だった。サラサラの銀髪にブルーの瞳の甘い顔立ちの男性だ。

怪我の手当を終えて、ディナーに来たみたい…。


「その話本当か?」

ニボア様は2回、念を押された。


「あ?ああ。本当です」


とニボア様が答えると、男性はニボア様の前で膝をつき右手を出して


「貴方の強さに一目惚れしました。どうか私と結婚してください」

と言った。


その様子に気づいた楽団がプロポーズ?を盛り上げる曲をかける!

煽ってる!


ニボア様は何が起きているかわからないらしく固まっている?

男性は答えないニボア様に畳み掛けるように言った。


「あの、ドスの効いた声。そして高い戦闘力!最後に盗賊団にケリを入れた瞬間、私の相手はあなたしかいないと思ったんだ。

だから、無理を言って城に泊まってもらったんだ」


…ニボア様の処理能力が追いついていない。

「あっ!一目惚れした女性を前に焦ってしまった!

自己紹介がまだだった。

私は、ダニエル・ヒュー・ジョンストン。

将来は、ジョンストン公爵になる予定だ」


…私は気づいた!

気づきましたよ?

この国の第二王子様じゃないですか!



そこで笑い声が聞こえた。

「ダニエル、焦りすぎだな。」

そう言った男性は、ストロベリーブロンドにエメラルド色の瞳のまたもや甘いお顔の男子。

やっぱり、護衛騎士の1人だ。


「私はハロルド・ペルファム。ペルファム公爵家の次男。どうか私と結婚を前提にお付き合いしてくれませんか?」

またもやニボア様に膝をついて交際のお申込み。


ペルファム公爵家といえば代々、宰相を務める、御三家の一角!


ニボア様は固まっている。



2人のイケメンが膝をついて美女に交際を申し込んでいる様に、食堂は大盛り上がり。



「ニボア様!お返事を!」

私の声に我に返ったニボア様。


頬をピンク色にして、第二王子の手を取った。

「その傷は、私が背後から斬りかかられた時に受けた傷。深い傷を負ったにも関わらず全力で戦う様がステキで…私でよければ」


急に乙女になるニボア様は可愛らしい女性そのものだった。

あー。

一目惚れって傍若無人。

どこに転がっているかわからない。



結婚を申し込んだ2人の後ろに、第一騎士団の副団長であるブライアン・ゴーダ様が立っていた事に気づいたのは一時間後だった…。






あれから1ヶ月が経過した。

私とニボア様はあれから親友になり、よくお茶をする。

ニボア様の本当の名前は、シャロン・エドマンズ。

エドマンス伯爵家の長女だった。

確かに多産系で有名な伯爵家だ。


あの事件から一週間後、王室から『第二王子ダニエル・ヒュー・ジョンストン様と、エドマンス伯爵家の長女シャロン・エドマンズ様の婚約』が発表された。

王家に嫁ぐ方は由緒ある家柄が必要である。

エドマンズ伯爵はお金持ちというわけではないが、真面目さで評価が高い家柄だから、結婚には問題なし。

それに王妃は常に命を狙われるのに、シャロン様は自分で自分を守れる。

だから婚約発表までの障害は皆無だった。



エドマンス伯爵家の長女って誰だ?

みた事ないぞ?

という空気になり、急遽、舞踏会でのお披露目があったのが一週間前。



参加した貴族は、美しいシャロン・エドマンズ様を見て、男性陣は心射抜かれ、女性陣はあまりの美しさに憧れを抱いた。



けれども、あのニボア団長だとは誰も気づいていない。

騎士団はほとんどが貴族の子息で、今回の舞踏会にも多数参加していたのに、正体に気づいたのは、あの時のブライアン・ゴーダ様。

ゴーダ伯爵家の次男様だけだった。



今、私はニボア様つきの侍女として一緒にお城に来ないかと誘われている。

ニボア様に、

「私の素を知っている家族以外の唯一の友人だ」

と言われ、どうしても来て欲しいと懇願されている。


これもある意味、プロポーズよね。

ニボア様のお側に常にいる侍女って事だもの。



それならニボア様からのプロポーズ受けようかしら、という事で、私は救護員を辞めて、ニボア様付きの侍女になる事にした。


我が家は斜陽男爵家なのに、未来の王妃様付きの侍女に選ばれた事で、誰よりも出世頭となった!



「シーボン、お前はアタシが一生守ってやる。変な虫がつかないようにな!」

なんてニボア様改め、シャロン様は笑っている。

こんなに男前な美人はいない。

第二王子様は、こんなシャロン様を見染めたんだよね。

って、私もシャロン様のギャップに心奪われた1人だ。

こんなシャロン様に認めてもらって私と結婚する男性はあらわれるのだろうか…。



侍女の件を快諾した後に

「あ。シーボン。言い忘れてたけどさ、第二王子のダニエル様は王位継承権こそあるけど、王位を継ぐことはまずないからさ。

だから私とダニエル様の仕事は、上皇后様の警護だから。

シーボンは、警護しているアタシの侍女だから、つまりお前の主は結果的に上皇后様だ。

大出世だな!」

と笑って言われた…。



…警護しているシャロン様の侍女ということは?

警護中のシャロン様のお側にひかえるという事。

つまり、上皇后様のおそばにいると同じ事???


「上皇后様のおそばをチョロチョロするお前にも、支度金が降りるそうだぞ。

お揃いのドレスを作ろうな!」

と楽しそうなシャロン様。


あぁ、恋って傍若無人。

っていうかシャロン様の魅力って、一見するとわからないけど虜になっちゃうのよね。



私も一目惚れされて、結婚したいなぁー。



…当面は無理…。殿方に出会うことはない!

だって、王族のお側に控える侍女になるために、マナーや所作を学ぶ王立女子専門学校に入学させられている。

今日も紅茶の淹れ方の間違いを指摘され、怒られながら現実逃避をする私だった。





ガールズラブはなしです…表現が下手ですいません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ