伝説の乙女ゲーに転生しちゃった!?
1000文字縛りが面白そうだったので、書いてみました。
見覚えのある学園を前に、さぁっと血の気が下がる。
ここって伝説の乙女ゲー『あなたに恋する』のオープニングじゃない?
私、転生しちゃったの!?
ふと自分の髪を見るとピンクだった。
って事はヒロインじゃん!
記憶を辿ると孤児院で暮らしていたが、男爵家に引き取られてここに連れて来られていた。
前世の記憶はうっすらと残っているが、自分の名前までは思い出せない。ただこのゲームの内容は覚えていた。
攻略対象は溺愛系のベルナルドと脳筋のジャン、腹黒のエルンストにわんこ系のイグナーツ。
会話の選択肢で好感度を上げ、婚約者の妨害に耐えながらカップルになればハッピーエンドという、一昔前に一世を風靡した伝説の乙女ゲー。
いやいやいや、ないでしょ?
婚約者が居るのに浮気なんてサイテーじゃん。
それに私に貴族だなんて無理。
よしっ!決めたっ!
バッドエンドも怖いから友情エンドを目指す。ついでに平民の格好良い人を捕まえて男爵家からも逃げよう!
私は強制的に起こるイベントを卒なくこなし、勉強にも励んで大人しく過ごした。
半年くらいで商人の次男と付き合うようになり、一年後の卒業パーティには誰も断罪されず、普通に行われた。
攻略対象者達とは知り合い程度で済んだし、このまま彼氏との結婚を目標に勉強を頑張るのだー!!
◇
「あ〜あ、またこの子も友情エンドですよ。これでモニター全滅っス。どうします? 先輩」
「何で誰も攻略対象を攻略しないんだ!?」
記憶操作も出来るフルダイブ式のゲームの試作品として、伝説の乙女ゲーを再現してみたというのに、誰一人として攻略対象と恋愛しないとは如何なものか。
折角モブまでも全員細かく設定したというのに。
「あ〜アレじゃないっスかね。悪役令嬢が転生したヒロインをざまぁする話が流行ったじゃないっスか」
「何だと!? じゃあ、ざまぁされたくないから攻略しないっていうのか?」
「それに掠奪するってのも嫌なんじゃないっスか?」
う〜んと悩んでいた先輩は「そうだ!」とポンと手を叩いた。
「よしっ! じゃあ『転生してざまぁを回避できるか!?』に変更しよう!」
「はぁ!?」
「悪役令嬢のパターンも作って、それぞれのざまぁを回避するゲームだよ」
「今からやり直すんスかぁ?」
「だってこのままじゃあ売れないだろ?」
「そうだけど……」
「じゃあ、よろしくな!」
「え〜」
そして今夜も徹夜を強いられた後輩であった。
後にそのソフトがバカ売れしたのは言うまでもない。