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お題小説

また次の雨の日に

作者: 水泡歌

 ピッチピッチチャップチャップランランラン♪

 こんにちは。私、あやか。5さい。

 今日はね、お外はザーザー雨がふってるの。

 だからお気に入りの水色のレインコートを着て、ながぐつをはいて、黄色いカサをさして、今はママと幼稚園から家にかえってるの。

 ママはよこで「雨ばっかでや~ね~」なんて言ってるけど私はちがうよ。

 私は雨の日がだ~いすき。

 だってね、雨の日はたくさんのものに会えるんだよ。

 

 あ、ほら、さっそく見つけた。

 カエルさん、こんにちは!

 みずたまりの上でカエルさんがピョコピョコはねる。

 なんだか雨がふってよろこんでるみたい。

 カエルさんは私にはなしかけてきた。

「こんにちは、お嬢ちゃん」

「こんにちは! ねぇ、カエルさんはなにをしてるの?」

「ん? ぼくはね。雨をあびてるんだよ。雨のシャワーを。気持ちいいんだよ。あやかちゃんもやってみる?」

「うん!」

 私は黄色いカサをちょっとだけはずしてみた。

 あ、ほんとだ。カエルさんのいうとおり。雨がかおにあたって気持ちいい。

 と、こんなことをしていたらママが言った。

「こら、あやか! ぬれちゃうでしょ! ちゃんとカサさしなさい!!」

 あ~あ、おこられちゃった。しょうがない。

 私はまたカサをさしなおした。

 そしてカエルさんとはバイバイした。

「バイバイ、カエルさん。また次の雨の日に。」

 カエルさんもピョンピョンはねて言ってくれた。

「バイバイ、お嬢さん。また次の雨の日に。」


 私がしばらく歩いていると、またまた会ったよ。

 こんどはね、カタツムリさん。

 カタツムリさんはあじさいの葉っぱの上でじっとお空を見つめてた。

 私はカタツムリさんにはなしかけた。

「こんにちは! カタツムリさん!」

 カタツムリさんはゆっくりとコッチを見て言ってくれた。

「こんにちは、お嬢さん。」

「カタツムリさんはなにをしてるの?」

「ん? 私は空にお願いしていたんだよ。雨をもっとふらせてくださいってね。」

「カタツムリさんは雨が本当にすきなのね。」

「ああ、大好きさ。お嬢ちゃんは嫌いかい?」

 私は元気よく首をふる。

「ううん、大好き。」

 私がそう言うとカタツムリさんは笑って言った。

「そうか。それはよかった。じゃあ、一緒にお願いしようか。」

「うん!」

 私はカタツムリさんと一緒にお空を見ながらお願いした。

 もっと雨をふらせてくださいって。

 そしたらママが言った。

「こら、あやか! いつまでそこにいるの? もういくわよ。」

 ちぇっ。しょうがない。

 私はカタツムリさんとバイバイした。

「バイバイ、カタツムリさん。また次の雨の日に。」

 カタツムリさんも笑って言ってくれた。

「バイバイ、お嬢さん。また次の雨の日に。」


 私が歩いていると、こんどはね、むこうからはなしかけてきたよ。

「やあ、お嬢さん。」

 私がふりむくとね、そこにいたのは、てるてるぼうずさん!

「こんにちは、てるてるぼうずさん! 私になにかごよう?」

 てるてるぼうずさんはお家の中から私をのぞきながら言った。

「お嬢さんもぼくと一緒に祈ってくれないかい? お天気がはれるように」

 私は考えた。けど、私はさっきお願いしちゃった。カタツムリさんと雨をもっとふらせてくださいって。

 私が考えているとてるてるぼうずさんは言った。

「お嬢さんははれて欲しくないのかい?」

「う~ん、けどね。カタツムリさんとお願いしちゃったもん。もっと雨ふらせてくださいって」

 てるてるぼうずさんはこまったように笑った。

「そう。けどね、いくらカタツムリさんが雨が好きでも、ぼくはずっと雨なんてつまらないと思うよ。楽しみは時々あるから楽しいんじゃないかな?」

 てるてるぼうずさんの言葉に私はなんだかなっとくした。

「そうだね、うん。じゃあ私、いのるよ。てるてるぼうずさんといっしょに」

 てるてるぼうずさんは笑顔でうなずいた。

 私はお空にいのった。

 はれますようにって。そして次にはまた雨をふらせてくださいって。

 そしたらね。

 私たちの願いはかなったみたい。

 本当にお空ははれてきた。

「てるてるぼうずさん、やったね!」

 てるてるぼうずさんはうれしそうに言った。

「ありがとう、お嬢さん。じゃあ、今日はこれでお別れだね」

 てるてるぼうずさんはお家の中の人にしまわれるみたい。

 私は言った。

「バイバイ、てるてるぼうずさん、また次の雨の日に」

 てるてるぼうずさんも言ってくれた。

「バイバイ、お嬢さん。また次の雨の日に」


 私がカサをしまってママのもとに走っていくと、ママはお空を見上げてた。

 私もお空を見上げた。

 そこにあったのは……。

 大きな虹さん!

 虹さんはすごくきれいだった。

 私はママに言った。

「ねぇ、ママ。雨の日もいいことあるでしょ?」

 ママは小さく笑って「そうね」と言った。

 私はそっと虹さんに言った。

「ありがとう、虹さん。ママもよろこんでるみたいだよ」

 虹さんはやさしく言った。

「ありがとう、お嬢さん。よろこんでくれて嬉しいよ」

 私は笑顔で言った。

「バイバイ、虹さん。また次の雨の日に」

 そして後ろを見ながら小さく手を振って言った。


「バイバイ、みんな。また次の雨の日に」

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