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小説家人形  作者: 五島タケル
三章
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寄り添う命

 シールド隊員が控える建物の陰から、そーっと辺りを窺いながら隊員の一人が動き出す。


『いいかーお前らはシールドだからって攻撃しちゃいけないことはないからなー。危ないと思ったら持ってるレーザーガンでも自動小銃でもいいからやり返せよ!我々も応戦はするが基本自分の身は自分で守る意識でな。よーしっ健闘を祈る!』


 どこか離れた狙撃位置に陣取るため消えてしまった隊長から無線で連絡が入った。


 その言葉で気合が入ったのかヤケクソになったのか、最初の陽動役に任じられた隊員ががむしゃらに居酒屋へ向かって走り出した。


 ダッダッダッダッ・・・・。と、

シールドを前に掲げ一歩一歩が重たそうな足取りで走っていく。あまりにもバカ正直にまっすぐ走り過ぎている気がした。


 すると即座に遠く向こうから、煙を吐き出しながら何か物体が飛んでくるのが見えた。


 ヒュルル~~~~ッ!!と、

風を切り裂くような音を出しながら飛んできたそれは、走っていた最初の隊員を通り過ぎ、5メートルぐらい後方へ落下し炸裂した。


 ボオォォォン!!

破裂音と共に爆風が上がり、走っていた隊員は向こうへつんのめる形で吹き飛ばされる。


『おっ、おいおい・・・・・!』

 たちまち控えていたシールド隊員たちから動揺と心配の声が上がった。


『おいっ大丈夫かアイツ?誰か様子を見てきてやれ!

おそらく今のは威嚇目的の擲弾砲の一種で大した威力ではないとは思うが、我々は応戦するためここから離れられん。敵の居場所は大方つかめたから誰かが代わりの任務に当たれ!・・・・・プッ』


 隊長からの無線が入っていたが、そう言われても周りの隊員たちは怯えから足が動かず、互いに顔色を窺い合っていた。


 私はこれは逆にチャンスじゃないか?と、どうせ次の次が私の出番だったというのもあるが倒れた隊員の元まで走ることにした。

この隊員がケガをしているなら、彼を救護するフリをして遮蔽物の陰などに隠れても不自然ではない。そう妙案が浮かんだ


『あっ!おいお前・・・・・?』

 周りが抑える声も聞かず、シールドを前面に構え私は黙って走り出す。

装備と緊張で身体は重く感じ、脚を引きずるようなブサイクな走り方に格好になっている気がした。


 

 爆発の煙が上がっているそばで倒れる隊員の元へ駆けつけると、すぐに彼の容体を観察する。


『うっ、ううっ・・・・・』

 幸い意識はあったので、私は彼を後ろに抱えながらシールドを片手で持ち、引きずるようにして近くのビルの影を目指して進むことに。

一人の命を抱えているだけで、訳の分からない虚しい弾避けの任務よりはずっと重たい任務を果たせている気がした。

そして彼を抱えていることで少し身の安全が保証されている気がした。


『おいっ五島!どこへ向かっている。負傷した隊員はどうなんだ?無事なら物陰にでも置いておけ!後でそいつは助けてやる。お前は弾の飛んできた方向へ向かって走り応戦をしろ!何をしている!そのまま逃げるんじゃないだろうな!?』

 

 隊長からの怒気を含んだ口調で無線が入っていたが、私はあえて無視して、人命優先の気持ちでビルの安全な壁に囲まれた一階部分を目指して進み続けた。


 パァン!

もう少しで安全な死角へと達しようとする時、私の足元へ銃撃が一発放たれる。


 パァァン!

足を止めるとさらにもう一発。私は身動きが取れなくなった。


『おらぁ五島!ケガ人は置いてさっさと走れっつってんだろう!それ以上進むと本当に撃つからなあ!』

 誰かよく分からないが機動隊の人間からの無線が入り、私は味方に狙われていることを知った。絶望感に襲われ恐怖から力が抜ける。


『うあぁっ・・・・・ってぇ~』

 頭が真っ白になり、抱えていたケガ人の彼をその場に落としてしまう。


「うっうあぁどうしたらいい・・・・・、うぅぁ、くっそぉ・・・・・」

もう全て諦めて後ろへ引き返し、走り出した方がいいと思った。


「うわああああ~~~~!!」

 私は走り出す。

シールドを顔の前に掲げて前も見ずに、全力で居酒屋方向へ向かって駆けた。



 ドッオオオオオーーーーン!!

 すると前方、かなり遠くの方から大きな発射音が聞こえ、上空にコチラへ弧を描いて何かが飛んでくるのが見えた。

この周辺に落ちたらもう・・・・・、当たったら即死。


 その物体の大きさ、放つスピードと衝撃音から

自分の命の危うさを感じ取った私は、その場で固まり身動きが取れなくなった。


 しかしその物体は私を大きく通り越して、斜めの方向に突き進んでいく、


 そして遠く50メートルほど離れたマンションの真ん中あたりに直撃した。


 ドッオオオーーーーーッグァーーーン!!!


とてつもない爆発音、そして私のところまで爆風と衝撃が押し寄せてくる。


 C3部隊でいつぞやの講習で教わった、

おそらく迫撃弾というやつだと思った。


 それが落ちた建物、マンションかアパートだったと思うが、2階から5階あたりまでが木っ端みじんに吹き飛び、建物の外装を削り取った形になっていた。


≪プーーッ、プーーッ・・・・・応答、せよ。シールド隊員たち・・・・・、誰か・・・・・、我々は攻撃を受けた・・・・・。だれか至急我々の救護にかけつけろ・・・・・・たすけて・・・・くれ≫

 無線からは先ほど怒鳴っていた誰かと思しき声が途切れ途切れで入る。


 まさか我らの誇る攻撃部隊、機動隊員が集団で同じ場所に控えていて、その場所が攻撃を受けほとんどがやられてしまったのだろうか?


 私たちが相手の居場所を突き止める前に、コチラの重要戦力の居場所がバレてしまったということだろう。私は大変無念で申し訳ない心境になった。


 私がもう少しちゃんと動き回れていれば彼らも多少なりには攻撃が出来て、相手の迫撃砲の発射も阻止できてかもしれないのに。

私が自分の命を最優先して行動したばかりに・・・・・。


 ただ同時に胸には若干の安堵感が広がり、一人の決断としては何も間違っていないとも感じた。


 

 もはや我らシールド隊員へ与えられた任務の大義は失われたことで、隊員たちはそれぞれに気が抜けた表情をして安全なビルを見つけそこの一階部分に固まっていた。私もけが人を引き連れそこへ向かう。


『おいっどうするよ?隊長さんたちやられたっぽいよな?もう俺ら動く意味なくね?』


『ああそうだな、確かにそれは間違いない。ただどうする?この後一旦ホテルに戻るか、あっバス運転できるって奴いる?』


『あっ僕大型持ってるんで多分大丈夫かと。ただルートをどう帰ればいいか、まだ全然攻撃受ける可能性ありますよね?』


 シールド隊員たちがそれぞれ出来ること、この後すべきことの案を出し合いながら話していた。その光景は緊張感がありながらどこか和やかで、旅行の工程や段取りを決める打ち合わせを連想させた。


『じゃっ意見はまとまっているのでとりあえずバスに乗って離脱と行きますかー!でも帰った後に叱責や処分があればみんな連帯責任だからなー、覚悟しとけよー!』


『アハハハハッ!じゃあこのままバスで沖縄一周旅行するってのもアリかもなー!』


『この状況でどこ観光すんだよ!?バカ野郎!』

『アハハハハハハ!』

最初に力が抜けてへたり込んだ隊員までもが笑っていた。


 バスに乗り込む隊員たちの表情は段々と人間らしさを取り戻し、生気に満ちていった。




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