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小説家人形  作者: 五島タケル
三章
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報われぬ者たち

「そっか、じゃあ僕は幸運だったのかも。あの時仁村くんが来てくれなかったら僕も死んでいたのかもしれない。でも何であの時仁村くんはあそこに・・・・、もしかして安西さんが?」


「いやいや違うっす、私全然知らないっすよ。聞くところによると仁村さんは五島さんたち数人が私服で出ていくから様子がおかしいとは思ってたみたいで、後を追ってたらしいんす。そんでたまたまあの場面に出くわしたって言ってました」


「ははっなんだ。じゃあホント彼の行動に感謝だな」

自分の無事を感じると同時に、助けてくれた人たちへの感謝が浮かぶ。


「で、僕はこの後どうすればいいんだろう?C3部隊の活動は、ケガが治ったらまた被災地の復旧活動に戻ればいいんだろうか?」


 そして被災地にいた人たちの姿が頭に浮かんだ。

あの辺一帯で戦闘が起こっているなら、あの人たちの住む場所は、復興作業は一体どうなっているんだろうか?と。


「さあ?それはないんじゃないっすかね。敵勢力の侵入によりあの半島の復興活動は停止、場合によっては半島地域からは一時撤退・放棄するって言ってましたよ、この国の指導者さんたちは」


「そんなバカな!じゃああの街でもう一度やり直すことを願って、復旧を待ってくれていた人たちはどうなるんだ!? 」

「うーん、どうなるんすかね」

「そんな、まさか見捨てるなんてことしないよな国民を、そこに住む人たちを?」


「いや普通にあるんじゃないんすかね。過去にもこの国の人たちや、自由を標ぼうする国の人たちは似たようなことやってますし。

前の大戦の時には沖縄は捨て石にされましたよね、今もそれは続いてますし。それに前の大震災の時に発生した放射能汚染では、復興とは名ばかりで、実質あの周辺の街一帯や元住民は見捨てられてますよね」


「いやっ、でもそれは仕方ないってか。それ以外に道はなかった、どうしようもなかったんだから?今度のとは違うんじゃ」


「ホントっすかね?仕方ないで済まされるんすかね?。本当にそう思ってますか?前に会ったことも今度のことも、誰かが決定した政策や作戦に従った結果、捨て石にされてるんすよ。五島さんだってそうでしょ?」

「うん・・・・・、まあ言われてみればそうかもだけど」


 私が質問を続けるせいで少し困惑した表情の安西さんだったが、落ち着いて納得した姿を見せると、またいつもの彼女に戻る。


「まあ、それはあんま考えても仕方ないってか、心配しなくていいっすよ。ここでも自分の家でもいいんで、五島さんにはしばらく安静にしといてほしいっす。

だから小説書けばいいんすよ!ちょうどもうすぐ書き終えるところっすよね、頑張りどころっすよ~、もちろん私もお手伝いします」



 その後すぐ、私のケータイにはC3部隊のメンタルヘルス部門を名乗る人物からの連絡が入った。


『日本国への多大なる貢献と心労を痛み入ります。傷のお加減はどうですか?』とこちらが申し訳なくなるほど低姿勢で、鳴き声に近い発声をする女性の声に恐縮仕切りとなった。


 目覚めてから1日は安西さんの家でお世話をしてもらって過ごし、次の日には

動けるぐらいには傷がよくなっていると感じたので、帰ることにした。



 アパートに着くとポストに封書が届いていた。


【 五島タケル 様

この度の特殊任務における日本国への多大なる貢献、誠に感謝申し上げます。その結果、多くの同僚隊員を失い、そして 五島 様も傷を負う結果となってしまったことには、私ども隊を指揮するもの誰もが後悔の念を禁じえず、痛恨の極みと存じております。


 また、負傷されたことによる治療費、見舞金、その間休養せざるをえなくなった期間中の部隊活動の給与は、既定の額を支払わせていただきます。

 

  一か月分の部隊活動における給与  

      210、000 円

      お見舞金          

       50、000 円

     特殊任務手当          

       20、000 円


 今月分の給与にて振り込みをさせていただきますので、ご確認ください。  


 また、五島 様の身体のお加減が良くなった頃に追って任務の再開日、新たな任務活動についてご連絡差し上げます。 


 この度は 五島 様のC3部隊への多大なる貢献、国家への忠誠心に対する感謝の意を込め、この書面にて感謝のご報告をさせていただきました。


 くれぐれもお身体をいたわって雌伏の時をお過ごしください。


 五島 様 が部隊活動を再開なされる日を心待ちにしております。


 地域衛生保全部隊 隊長  磯上 慎之介

          地域衛生 管理課   】



 この手紙を見て私の沈んだ気持ちは多少盛り上がった。なにしろこの先1か月、なんの活動をしなくても給与が少し多めに手に入り、その期間何の気兼ねもなく、小説の執筆活動に専念することが出来るのだ。


 しかし、もう何度こんなことを思って嬉しがっただろう?今更ながら自分が誰かに操られて一喜一憂する大バカ者な気がしてきた。


 同時にこの手当と補償のことを考えると少し思い起こすことがある。それは同僚のシールド隊員たちのことだ。


 隊での活動以外であまり接点はなかったが、特殊任務において一時ながら共に行動し、たわいない話をした彼ら。

 その全員が、あの敵国の工作員との相対し交戦する中で、無念にも命を落としてしまったという。あまりの悲劇に思い至る。


 この度の任務における負傷や心労により、私に見舞金や手当がわずかばかりついているのなら、彼らの死も当然、保険金というカタチで報われているはずだ。


 以前コンパイベントの際、安西さんから聞いていたウワサ。というか事実。


 C3隊員が活動中に死んでしまった場合、

その配偶者や家族には保険金として1億円もの大金が入るという。


 シールド隊員のうち二人のおっさんは嫁と子供がいると言っていた。その奥さんは1億もらえることになってどんな気分だろう?密かにほくそ笑んでいるのかも。


 あと彼女がいると言っていた一番若い彼はどうなるだろう、その彼女は1億のことを知ったなら、事後にでも籍を入れるのではないか?

 

 羽村君はどうなる。彼にもし家族がいないならみすみす1億を逃すことになる。


 彼らが死んだことの意味は、1億もらえるかそうでないかで大きく変わるような気がする。


 彼らが死んで1億もらえた家族はさぞ嬉しかろう。ただ万々歳の気分だろうか?もらえなかったら無駄死になんだろうか?


 この感覚は私にはまだ想像することが出来なさそうだ。



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