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小説家人形  作者: 五島タケル
三章
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敵と味方

「・・・・・・おいっごとうさん!」

その時後ろの方から、日本語で聞き覚えのある声が呼びかけてくるのを感じる。

「ちょっとコッチだよ五島さん!何してんのこっち来て、早く」

振り向くと、後ろの鉄骨の陰に身をひそめる仁村くんの姿があった。


「えっ?なんで、どうして。・・・・ってか危ないって今は!」

私は半ば逃げるような姿勢で仁村くんに近寄っていく。彼を心配するフリをして、実際は自分が泣きつきたい心境だった。


 そんな私を見かねたのか、彼も温かく迎え入れてくれる。

「安心して五島さん。もう少し様子を見て、チャンスを見て狙い撃ちましょう」

「えっ、何でそれを・・・・!?」

 シールド隊員向けの極秘任務を、何故仁村くんが知っていて、ここに潜んでいるのか不可解だったが、緊急事態の今はそれをいったん無視して、彼の言う通りプランを実行すべきだと思った。


 依然、怪しげな集団のうち二人が私の方へと迫ってきている。どこで撃つタイミングがあるのか全く予測もできなかったが、仁村くんの合図を待った。


 すると突然、向こうの羽村と外国人集団がいる辺りで一瞬ピカッと光りが走る。明らかにレーザーガンによる光だった。


 私は一瞬羽村がやったのか!?と思ったが、

見ると倒れているのはどうやらその羽村だった。


 おそらく他のシールド隊員の誰かがやったのだとその時は思ったが、それを外して味方に当ててしまったことに私は呆れていた。憤りの感情が湧いてくる。

 

 私に近付いていた外国人たちも異常に気づき、何事かと仲間の所へ戻っていこうとする。


「今だ!撃って五島さん」

突然仁村くんが私の背に手を当てて、引き返す隊員を指さし狙えと命令をする。


「えっ!うそ!マジで、どっどっちを!?」

「その近くにいる方、まだ一人、今ならいける!」


 彼の後押しに乗せられて、私も即座にレーザーガンを構えて近くの相手に狙いを定める。


「ちっ・・・・、くそぉ、しゃーないなあ!」

土壇場で躊躇いと葛藤、後悔するんじゃないかと、色んな感情が頭を巡っていたが、結局この土壇場では自分がやるべき行動は一つなのだと腹をくくる。 


 震えていた照準を相手の背中に合わせて、ゆっくり息を吐きながら、10メートルほどの距離にいた離れていく外国の隊員へ向け、勢いよく引き金を引いた。


 バシィン!という衝撃音と共に、目の前に電撃によるレーザーパルスが一直線に走り、その光は狙い通り、敵国の隊員の首根っこ辺りに見事命中した。

 

 「ウナァァ!」

叫び声を漏らして男はその場に卒倒する。


「ああっなんで、やってしまった・・・・・」

 私は当たった喜びより、よく分からない相手を傷つけてしまったショックが大きく、呆然とその場に立ちつくしていた。


「ダメだっ何やってんの五島さん!前見て、早く!」

その時再び後ろから仁村くんの声が聞こえたかと思うと、すぐに向こう側から乾いた音が聞こえてくる。

 パパパパンッ!


 音に気付くとほぼ同時に自分の周りの石が弾け飛び、すぐそばをとてつもないスピードで、何か物体が通り過ぎていく。


 向こう側にいる外国人隊員たちがあわただしく動いている。

相手はやはり敵国の工作員だったのだろう。しゃがんだ姿勢で2人ほどの隊員が自動小銃を構えて、私に向けて発射の姿勢を示していた。


 この場に立っていることへの純粋な恐怖を感じた。


 その姿を確認してようやく私は、全ての状況が予測された最悪な結果へ導かれているのだと悟った。足がすくみ立っているのがやっとの状態だった。


 そしてまたすぐに、乾いた音が全身に恐怖を伴って伝わってくる。


 パパパパパンッ!


 私は慌てふためいて、つんのめりながら逃げる。

仁村くんが呼びかける声のほうへ。


 バシュンッ!

「うあんっ!」 

すぐ近くを弾がかすめたかと思うと、私の身体の中へ衝撃が走った。


 左足の感覚が一瞬無くなったかと思うと、次の瞬間猛烈な痛みに襲われる。間違いなく左太もも辺りに弾が当たったのだと分かった。


「さあっ早くコッチ来い!ガンバレ!」

異変に気付いた仁村くんが駆け寄ってきてくれ、私は彼に抱き着くような姿勢になりながら、あとのことは全て彼に委ねてしまおうと、そのまま足を引きずって歩いた。


 しばらくすると銃撃の音が止み、そのスキに仁村くんに付き添われながら私はよろよろと進んでいく。


 進んだ先の道路わきには、彼が用意していたと思われるワゴン車が止めてあり、そこへ押し込まれる形で乗り込む。


「離れた場所へ逃げましょう!五島さんの治療もしなきゃだし、今ここにいるのは危ない。しばらくここら一帯は戦闘地域になってしまうでしょうから」


 なにやら不穏な彼の言葉を聞きながら、私は車の後部座席へと滑り込んだ。横になると、だんだん意識が朦朧としてくる。


 ブロロロロロッ!ゴロゴロという音が聞こえて少しビクっとしたが、車のエンジン音と発進した音だと分かると、私は安心して眠りについた。




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