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小説家人形  作者: 五島タケル
二章
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接近

「いや~あはははは、五島さんち来ちゃいました・・・・・・」

「えっと、え~っと何だ安西さん、前に僕の家教えたことあったっけ?」

 いつもと雰囲気の違う彼女に私も戸惑って、せっかく訪問してくれた相手についそっけない言葉をぶつけてしまう。


「えっ?いや、その~まえに誰か、そう仁村さん?に聞いたような」

「えっ仁村くん?いや、彼にも家の住所教えたことないと思うけどなあ・・・・・」

 野暮だと分かっていながら、不器用な私は一度動き出した会話の流れをすぐには止めることが出来ず、どうでもいい過程のことを聞いてしまう。

小説を書いている影響か、人物を分析しすぎるクセがあるのかもしれない。


「すんません、やっぱお邪魔でしたね。私帰るっす」

 案の定、彼女は気分を害したのだろう。

今まで見せたことのない悲しげな表情をして、その場を立ち去ろうとする。

手に持っていた袋をその場において。


「あっちょっと待ってよ安西さん!別にその、来てほしくないとかじゃないんだ」

「・・・・・えっ!?」

「えっとなにその袋?・・・・僕に何か持ってきてくれたの?」


 ここで彼女を帰せばとんでもない過ちを犯す気がした。もう彼女と会えなくなるような。

そんなギリギリの感情から、どうでもいいことに気を取られたフリをして彼女の手をつかんで押しとどめる。

彼女の冷えた体に触れた瞬間、そういえば女性の体に触れるのはいつ以来だろう?という感覚が頭をよぎり、彼女を意識していることを知る。


「えっと、じゃあいいんすか。中に入っても・・・・・?」

 

 何も特別ではない。

普段の二人の関係性に戻ろうと、自然さを装い、

笑顔を見せて彼女を部屋に招き入れる。


「あっうんどうぞ。女性に見せるには、恥ずかしいぐらい散らかってるけどね」


 「おじゃましま~っす・・・・・」

 周りをキョロキョロ伺いながら、

狭い2Kの間取りのアパートに入ってくる安西さん。

持っている袋から明らかな食べ物の香り、弁当臭さが漂ってくる。


「あのっコレ、差し入れっす。本当は何か作ってあげても良かったっすけど、五島さんちの状況が分かんないし、これなら邪魔になんないかなって、お店で買ったお弁当持ってきたんす、

って私ホントは料理できないんすけどね、すんません」

「いやうん。あっありがとうめっちゃ助かるよ。まあそこらに座って」


 ガチャ。

「あっ・・・・!」


 ドアを閉めた音に、彼女が妙な声で反応を漏らす。

それによって否応なく私も意識してしまう。

「いやっ初めてだな~五島さんち。たっ、楽しみだな~」

いつもの様に明るく振舞おうとする安西さんだが、やはりどこか表情が固い。


「あっ!そうだ。前にそこの県道のところで五島さんがコンビニから出てくるところを見たことがあって、その時少し気になって後をついていったら偶然ここにいると知っちゃったんす・・・・。すいません」

「ああそうなんだ、いいよ全然。なんとなく聞いちゃっただけだから気にしてないし」

会話のきっかけをつかもうとしているのだろう、

彼女はいきなり言い訳の言葉から漏らしていた。


小さな机を置いてその上に紅茶を差し出すが、彼女はそれに手をつけず、依然私や辺りをチラチラ窺ってはモジモジしている。


「・・・・・あっああ、う~んいい香りっす・・・・」

「まあリラックスしてよ。うん、そうだな~・・・・・」

やはり状況が状況だけに、お互いの関係性を意識してしまうのだろう。

まだ互いに、すんなり言葉が出てこない。


普段は同じ隊員の友人同士として屈託なく交流し合っているはずだが、逃れようのない二人だけの部屋の中では、互いが男女であることを意識せざるを得なかった。


 安西さんを女性として意識したことはないはずだが、彼女の方は分からないし、私としても初めてこの部屋に女性を上げたものだから、好意どうこうではなくそのこと自体にドキドキしている自分がいる。


 先ほどまで書いていた小説の影響をモロに受けて、昂っているのだろうか。


「あっ、と五島さんマジすいません。こんな女が家にお邪魔しちゃって」

「ええっ今更!もう中に入っちゃってるし。アハハ、ははは」


 彼女はさっきから過剰なほどモジモジして、男の部屋にいる自分を明らかにアピールしているようにも感じる。


「あのっ、彼女さんに悪いっすよね・・・・。お弁当食べたらすぐ帰りますから」

「えっひょっとして夕飯食べに来ただけ?ってか彼女なんかいるって僕言ったっけ?いるわけないじゃん、そんなの・・・・・全然いないよ」


「ええっ!彼女いないっすか五島さん?あ~良かった~。・・・・って良くないし。いや良いのか?んっ?・・・・・・、でも、もちろんいたことはあるっすよね?いやいいんす。すんませんなんか一人で勝手に興奮しちゃって」


「まあまあいいじゃんそんなことは。せっかくコレ持ってきてくれたんだし、一緒にお弁当食べよっか?なんかいつもの任務のときみたいだけど」

「ははっそうっすよね。・・・・そう考えると、五島さんの部屋にいても落ち着けそうっす」



 そうしてお弁当を食べ始めると、冗談交じりの会話が戻り、すっかりいつもの安西さんとの和やかな雰囲気が戻っていった。


「でね、私は言ったっすよ!あのG班のおっさんに。佐伯さんのこと今度睨んだらレーザーガン撃ってやるって。そんで私も隊を辞めてやるって!アハハ」

「アハハハハッ!それボクも一度は思ったし、みんな一度は考えたと思うよ!でも実際口にして言ったのは安西さんだけじゃない?」


 依然として男女としての関係を深めようなどと意識はしていなかったが、よりこの場の雰囲気を楽しく演出しようと安西さんに提案されたこともあり、お弁当を食べ終わった後には私がチューハイやビールなどを用意して、二人で酌み交わした。


 これまで二人が隊で経験したアレコレや趣味の話など、たわいない話を酒の肴としていると、ドンドン酒の缶は空いて会話は弾み、二人きりの心地いい時間を過ごした。


 そんな楽しい時間を過ごしているうち、気付くと時計の針はもう深夜12時を過ぎようとしていた。




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