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小説家人形  作者: 五島タケル
二章
33/80

歪んだ世界

 気が付くと辺り一帯は街の中へと変わっている。

その中で三島と麻里香は二人かがんで身を寄せ合うという、みなしごのような姿を晒していた。


『なっなんですここは?確か僕たちあの洞窟内で・・・・・、そうだ麻里香さんとあの不気味な人型の石像に触れた瞬間に目の前が光に包まれて、気付いたらここに・・・・』

―――――――――――――


 希望通り山奥の神社にある洞窟内にて、二人はこの世との別れを告げるつもりだった。洞窟の奥にはウワサ通り一体の石像があり、そこで願うと人は希望通りの来世が得られるという噂の。

そこで麻里香は自分の病状について、初めて告白をした。


『三島君、全部白状するわ。私は全身脊髄性不随って遺伝性の病気で、全身が急速に衰えていく病気にかかっているの。もう表情一つ自在には動かせないし、次第に全身のいうことが効かなくなっていく。

どんな辛いことも役者として生き方が私を支えとしてきたのだけど、それがかなわなくなった現実では私はもう生きていけなくなった』


『えっ・・・・?でも昨日までも普通だったし、これまでもずっとそんな風には少しも見せてなかったじゃないですか?』

『フッあなただけよ、気付いていなかったのは。アナタは本当に人の外っ面しか見ないから、素の私を見ずにずっと役としての私だけを見てたの。今もきっとそうよね。だからアナタは何も疑わずに私の渡した台本に乗ってくれた』

『そんな、じゃあ僕は役としてのあなたに惹かれているって言うんですか!?こんなにあなたを求めているのも?そんなのウソだ!僕はすべてを、瑠璃を捨ててまでただアナタを、麻里香さんをっ・・・!』


 そこで麻里香は三島にそっと寄り添い口づけをした。

口移しで薬を飲ませて眠らせ、それをきっかけとして未練のある三島は捨てて、自分はそばの崖から落ちて死ぬつもりだった。

だがそこで理性のタガが外れた三島が麻里香を強引に抱き寄せる。


 その拍子に口から錠剤がこぼれ落ち、バランスを崩した麻里香は不気味なヒスイ色をした石像の脚に触れる。

 次の瞬間、二人は現在の日本のどこかと思しき街の中へと転移していた・・・・・。

――――――――――――


『ええ・・・・・、そうね。どうやら本当にあの場所は別世界へ通じていたみたいね。まだ私たちが正常であれば、という条件付きだけれど』


 暗い山奥の神社にある洞窟から気付くと、辺りは一見ありふれた都会の街の中へ変わっている。

三島と麻里香は、まだ自分たちの置かれた状況が飲み込めずにいた。

いたって普通の社会、ふつうの街並みのようだが何かが違う、どこか違和感を感じさせる。


 街の真ん中で抱き合う男女に目もくれずに、人々はそばを行き交いつづける。

若者やお年寄り、スーツ姿の社会人がそれぞれ目的のために行動している。買い物をしている人がいれば、飲食をしている人もいる。仕事をしている人も。

一見するところ何の変哲もない。ただそこに得も言われぬ違和感を感じるのだ。


 誰も止まることがなく、誰も会話やコミュニケーションらしきことをしていない。スマホも持っていない、話しかけても応答もない。反応一切がないのだ。

それぞれ目的を果たすためだけに動いているのが明らかで、それのみに固執しているような。


 買い物は物色する様子もなく、パッと見てパッと手に取りそのままレジも通らず店を出る。

外食店を覗くと、出てきたメニューをむさぼるように食べ、食べ終わると会計もせずにさっと店を後にする。

ある会社の様子を窺おうとビル内へ入ってみると、驚くほどすんなり社内へ入ることが出来る。

ただそこには誰もおらず、デスクとチェアーが一通りそろえられたオフィスで、不気味な数人の人間らしきモノが佇んでいた。

怖くなった三島は麻里香と逃げるようにその場を後にする。


 街から少し離れて、遠くの位置から眺めて新たに気づくことがある。それは街の姿だった。

ビルなどの建築物が、ある建物はとてつもなくまっすぐ高くそびえ立っていて、またある建物は踏まれたような形でひたすら平板。


 またそこかしこにはツルっとした円筒形の建物があり、時折回転を見せながら出現する出入り口から絶えず人が出入りしている。住民の服装や雰囲気からすると住宅建造物のように思えるが、窓やテラスは一切なく中身を窺うことすらできない。

また遠くの方には、地上から三つに分岐した鉾状のビルがそびえ立っていたり、どれをとっても奇妙。


 街中にある一番大きな商業施設は、全てが巨大なドーム内に囲われていて、その上にEPOGAIAモールと巨大なオブジェが掲げられている。

どれもが誇張の極みといった建築物ばかりで、三島と麻里香には酷くグロテスクさを感じさせた。


『なんだ、コレは・・・・?おかしいよ。ホントにここは現実の世界なのか?』

三島は震えが止まらず、母親にすがる子供のように麻里香の手をずっと握っていた。


 そんな麻里香の肩もわずかに震えている。だが表情を見るとうっすら笑みを浮かべ、顔が紅潮していることに気付き三島はそっと手を離した。


 何も考えられず、呆然と景色を見つめていると、三島のスマートデバイスにメッセージが入ったことが知らされる。

こんな世界へ来てまで入る通信に、さらなる恐怖感を感じつつ確認してみると、それは瑠璃からのメッセージだった。


『兄さん、やっぱりそっちに入っちゃったんだね。でもそこB面だよ。兄さんには難易度高いからすぐに引き返した方がいい』

 

 訳の分からない妹からのメッセージに、三島は泣き叫びたくなる心境を押さえるのに必死だった。

―――――――――――― 


 これまで訓練をしてきた施設内にあるレストランにて、男性5名、女性7名の隊員たちがそれぞれ互いにテーブルを挟んで向かい合っていた。


 正直まさかこんな合コンみたいなイベント、いやそれ以上か?国から発注された仕事で、このようなつがいを引き合わせるコウノトリイベントが行われるのは意外だった。


 実際どこまで浮かれていいものかみんな緊張と不安からぎゅっと手を握りしめ、ソワソワとしていた。



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