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小説家人形  作者: 五島タケル
二章
32/80

イニシエーション

 初めて地域衛生保全部隊へ招集された翌日から、任務をやり遂げるための体力トレーニング、C3隊員となるための基礎的な知識をみにつけるための講習がおよそ一か月にわたって続いた。

 

 ほぼ週4のペースで、日に5時間ずつのトレーニングだったが、その間心身の疲れから小説を書く手は緩めざるを得なかった。

 

 最初の週は 同じく電力会社の所有する運動施設内でもっぱら持久力をつけるためグラウンドを走り回る。

その後筋力や体幹を強くするため重りをつけたウエイト器具を何度もカチャカチャ動かし、さらにはプールで長距離泳ぐ水泳トレーニングなどもあった。

 

 私はどのトレーニングメニューも参加している男性メンバーの中で5番目ぐらいには位置できていたので、小説が書けないモヤモヤを除けばわりかし充実感を得られていた。

 

 たださすがに40代の人や元から貧弱で体力に自信がなかった人、もしくはもう少し技術的な仕事を志望してきた人たちにとってはこの任務は想定外だったようで、トレーニングが始まって早めにこの部隊の除隊を決め運動施設を後にしていた。

私は室内での講習時などに汗臭い男どもの体臭が若干薄れるので、その点においては気分的にスッとした。


 2週目を過ぎたあたりからは、土木工事に伴う重機の操作方法やコンクリの配合方法、道路整備の方法手順、畑の耕し方、森林の植樹、野菜の栽培方法など、どこで使うのかは分からないがとりあえず今後任務として必要と思われる知識を無理やりな感じで詰め込まれる。


 その後全ての講習が終了し、修了者には個体識別タグが渡され、肌身離さずプライベートでもそれを首からぶら下げ無くさないようにと忠告される。


 結局正式任命前に辞退や不適格などの烙印を押され、除隊扱いとなったのは12、3名だったと思う。

今は残りの30人足らずの男性メンバーが、それぞれ5グループに分かれ、実際の任務へ向けての詰めの集団トレーニングに取り組んでいる段階だった。


 その中の一つのBグループにて、私はリーダーである班長に任じられていた。

任務に向かう体力と実直さ、知識の習熟度などから判定されて任命されたようだ。



「えー班長に任命された5人には後日、これまで分かれて講習を受けてきた女性隊員との親睦・交流会が予定されているので準備しとくように。って親睦の準備って何かいるのか?オホン、まあその女性との久々の接触だあ。あまり浮かれないようにということだ。隊員として己を律する心構えを持つこと。以上、今日は解散!」


 部隊長と呼ばれる元自衛官のおっさんからの訓示を受けて、私たちは事前準備の講習やトレーニングとしては最後の日を終えた。

 同時に給与明細も渡され、ただ一か月トレーニングと授業受ける学生みたいな日々を過ごし、18万もの収入が得られたことに私は感激を禁じえなかった。


 浮かれたついでに、その日は帰りに仁村くんと二人で飲みに行くことにした。


「へえ女子との交流会かあ、楽しみですね五島さん。何するのかなあ?僕も行ってみたいなあ」

 

 仁村くんのお勧めに従って、まだ午後3時過ぎの人が少ない中華料理屋に入る。

事あるごとに私に話しかけてくれる仁村くんは、同じくB班(正式にはヌーB班という)へ任じられていた。


 一人でも会話が出来る味方、相手がいたことは私にとっても心強かった。

なにしろほかの三人のメンバーが根暗な二十歳半ばのアイドル好きオタクと、中年丸出しで文句しか言わない40手前のおっさん。

あとはギャンブル中毒で目がイッてる40がらみのおっさんメンバーしかいなかったからだ。


「ぷは~っうまい!ボクね久々ですよこうやって仲間と飲むの。一昨年ぐらいからずっとウイルス騒ぎがあったでしょ?そんで僕はその後仕事でつまずいちゃってね・・・・・。いや~ホント無理にでもお国の招集に応じて隊員になって、五島さんみたいな人に出会えたから良かったー」

「はははっでも飲みすぎないで」


 仁村くんがガブガブ飲むもので私も付き合い上、慣れないお酒を無理して中ジョッキビールで3杯分ほど飲んでしまった。

おかげで帰るころには頭がフラフラして気分が少しハイになり、講習も終わったしこれからまた小説の執筆する時間が出来るぞー!とべつに叫びはしないが、胸の内では解放感があふれていた。


「あっそうだ五島さん。今度の女子隊員との親睦会―、こないだの説明会で会った安西さんも参加するらしいんでー仲良くしてあげてくださーい。別に僕は仲良くないですよ、ただこないだ偶然彼女に五島さんのこと聞かれたんですごい良い人ですとだけ言っておきましたー。ぐふふふっ」

「ああそうなのーじゃあまあ挨拶ぐらいしとくわー。でもそれ以上はない絶対!」


 なんで気分のいい今そんなこと言うかなー?と、若干酔いが冷めたのはいいが、仁村くんは女性がらみでは俺に何を求めているのか不可解だった。


 一度しか会ってはいなかったが、あの登録会の時の安西さんという女性の顔は、悪い意味で忘れられない。

スタイルはそう悪くなかったと思うが、腫れぼったい一重まぶたが幸が薄そうのなんのって、全てのパワーを吸い取る顔だ、下げマンに違いない。


 そういう関係になることはないと思っていながらも、彼女のことを陰でディスってる自分は何様だよ!と冷静になっていることで、帰った頃にはすっかり酔いが醒めていることに気付かされた。



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