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小説家人形  作者: 五島タケル
二章
25/80

行動計画

 『・・・・島への領空侵犯を繰り返す○○軍は、

“我ら一つの民族一つの国家、不可分の領土だ”という主張の元、××海峡へ向けミサイル発射を繰り返し、××への圧力をさらに強めています。

それに対し〇×国は沖縄の基地から××海峡へと空母を展開させ、付近の海域では一触即発のにらみ合いの状態が続きますます緊張感が高まっています。

それに呼応して我が国では、自衛隊を南海洋上に展開させると共に――――』


 ラジオからの音声をBGMのように聞きながら、私は次回作の執筆に取り掛かっていた。


 現在の日本を取り巻く情勢は緊迫の度合いを増し、身の回りの社会の仕組みなど周囲の環境にもうっすら変化が感じられつつあるが、職を失って社会からはみ出している今の私にはあまり実感がなかった。


 それよりも社会の構成員としてなんとか小説家として身を立てなくては、その一心で己に向き合う日々を過ごしていた。



 既に次回作の設定としては、病気や事故により離れ離れになる男女の悲恋を取り入れることは決めていたが、さらにそこから構想をふくらましていくうちぼんやりとだが作品の輪郭は出来上がりつつあった。


 主役はより多くの人々の共感を得るために、

男女の二人体制にすることに決めた。

男性は売れない劇団員の青年として、女性はその劇団の看板女優とする。

まずその格差により恋愛を盛り上げる。


 売れないながらも稽古を繰り返すむなしい日々のなか、やがて鬱屈していく青年に対しある日もう一人の主役である女優から声をかけられる。


『ねえ、私とどこか遠くの世界にいかない?』と


 何故こんな売れている人が自分なんかに?

そしてこのような不穏な言葉を?


 どこか心中を思わせる怪しげな誘いに青年の心境は揺れ動くが、うらぶれる日々に耐えかねた青年はその誘いに乗ることにする。


 その女優には実は人に言えない悲劇的な過去や余命数年の難病を抱えていて、そのような突飛な行動を取ったという設定を持たせることにする。


 まずここまでを作品の導入部として、

メインとしてはその二人の逃避行を描くことになる。


 ただそれだけでは物足りない。

私はさらに売れそうな要素を盛り込むことにした。

まず悲恋を描くなら、それは事故や病気だけでなく叶わぬ恋、禁断の愛というのもまたその素材となろう。


 なので主役の青年には、親同士の再婚などで血のつながりのない義理の妹がいる設定にする。そのキャラをいわば、第3の主役として立ち回らせようと思う。


 その妹とは互いに淡い恋心を抱き合っているが、互いに関係性を気にして一歩踏み出せずにいる。そこに青年が女優と失踪してしまうという事件が起こり、義理の妹は好きな人が奪われたという憤慨から彼らの追跡を開始する。

やがて兄である青年に対して恋心を通り越したショッキングな行動を取らせることにして、展開を盛り上げてみよう。


 またさらには余計かもしれないが、異世界要素をも持ち込もうと考えている。


この作品は再度、文芸誌向けの新人賞に送ろうと考えているので、ラノベ的なファンタジー世界への転生などにはしないが、

女優と青年はどこか死に場所を求める気持ちで怪しい噂のある山陰地方の神社へ向かうと、そこが不気味な異空間に繋がっていたという設定をつくる。


 その迷い込んでしまった世界で生きる人々の暮らしを、現代社会への風刺と捉えられるような造形にすることで、文学的には高尚な表現力をもった作品と捉えられるんじゃないかと、淡い期待もしている。



 ≪えーでは定刻となりましたので、ただ今より

総理大臣から国民の皆様へと向けた緊急記者会見を始めさせていただきますー≫


 だいたいの構想が出来上がり、いざ次回作の執筆に取り掛かろうとした時、ラジオもテレビも一斉に同じ画面に切り替わり、総理大臣からの重要な発信があるということで会見が始まった。


 私は執筆をしながらその情報に耳を澄ます。



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