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紬ちゃんは驚かせたい  作者: ミズヤ
第一章
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第5話 紬ちゃんは幽霊!?

「見えてます?」

「…………ガッツリ」

 紬ちゃんは今日、いや、会ってから一番のショックを受けた様だ。


 ガッツリ見えてるのに「どう?」と聞かれても、見えてるんだからしょうがない。

「い……」

「い?」

 わなわなと震え出した紬ちゃん。心做しか目が凄くうるうるしてるような気がする。


 そして紬ちゃんは大きな声で、

「いやぁぁぁっ!」

 と叫んだ。耳がおかしくなりそうな程大声だ。


 耳を押さえてその場を凌ぐと、その後すぐに部屋のインターホンが鳴った。

 隣の人が文句を言いに来たのか? そう思いながら重い足取りで玄関に向かうと扉を開ける。

「どーも」

 大家さんだった。


 ニコニコしていて、コインで手遊びをしていた。何しに来たんだろうか?

「ねぇ一日ここに居て、この部屋の事分かったんじゃないかな?」

「ああ、紬ちゃんの事ですか。まぁある程度」

 そう言うと大家さんは驚いた顔になった。

「紬……ちゃん……っ!?」

 すると大家さんは俺の両肩を掴んできた。そして酔うくらいに俺を揺らしてくる。

 酔う! 酔う〜っ! うぇぇぇっ。


 なんとか吐き気をがまんした俺は今、ちゃぶ台を挟んで大家さんと向き合っていた。

 大家さんは真剣な表情。昨日の大家さんからは想像もつかないくらいの真剣っぷりだ。

 まさか、一日で追い出されるとか!? まだ学校に一日も通ってないんです! 追い出さないでください! 見捨てないでください! 家賃滞納してませんから! どうか〜〜っ! と心の中で願う。


「才間優斗君」

「はい! 家賃滞納しません! 迷惑もかけません! 雑用としてこき使っていただいても結構ですので追い出さないでください!」

 俺がそう言うと大家さんは頭にハテナを浮かべて不思議そうにしている。意味が分からないと言った風だ。

「なんであなたを追い出すんですか?」

 その言葉を聞いて俺も驚き、下げていた頭を上げた。


 え? 追い出すんじゃないの? だってそういう雰囲気だったじゃないか。

「あなたに話がある」

 ゴクリと喉を鳴らして唾を飲み込む。

「……。紬ちゃんはね。幽霊なの」

「…………は?」

 俺はあまりの事に開いた口が塞がらない。

「君には言っていなかったけど、この部屋には紬ちゃんって言う幽霊が──」

「知ってます」

「……え?」

 今度は大家さんが驚く番だった。


 大家さんは目を大きく見開いてパチパチと何度も瞬きを繰り返し、目を擦る。

「ゆ、優斗君。君は幽霊が怖くないのか?」

「だって、こんな可愛い子が幽霊とか言われてもね〜」

 と俺の背後で驚かそうと企んでる紬ちゃんの襟を掴んで前に持ってくる。

「さ、触って!?」

 俺が掴んだことに驚く大家さん。

 よくよく考えたらそりゃそうだ。幽霊なんだから。

 自然な流れで俺は紬ちゃんを掴んだが、幽霊ならば普通は触れられるはずが無いんだ。

 なのに何故か俺は触れることが出来た。


「??」

 紬ちゃんも何が起こってるのか分からないと言った様子で首を傾げているが、すぐに何かを思いついたのかニヤリと笑った。

「わーい!」

 と俺にギュッと抱きついてくる紬ちゃん。

 幽霊なのになんかいい匂いがしてふわっとした髪が俺の顔に当たる。

 そして何より、柔らかい! 見た目のせいで犯罪臭がする。


「こ、こら! 離れろ!」

「いーやーでーすーっ!」

 こいつ、なんて馬鹿力を…………っ!


 だが、本来なら幽霊なので力を感じることは疎か、そもそもとして触れることが出来ないはずである。なんで? 俺はそんな霊感とか無いっすよ。こっちに来るまでは一般的な男子中学生だったんだから。

「取りあえず、離れろ!」

「嫌です! 久々の人の温もり、気持ちいいです♪」

 紬ちゃんは完全に俺の体を堪能する事に夢中になってしまって恐らく、暫くは何を言おうとも退いてくれない状況になるだろう。


 もう、大家さんは驚きを通り越して笑顔になってしまってる。

「微笑ましいね〜。親子みたい」

「この子が俺の子だとしたら俺は一体何歳で子作りしてるんですか」

 取りあえずこの状況を大家さんに見られてしまったせいで俺はこのアパート内でのポジションってのは決まってしまったらしい。


「君は幽霊に触れる超絶凄い人」

「全く嬉しくないポジションですね。どうせならモテモテとかが良かったです」

 恐らく、この印象が強すぎて今からキャラ作りしても遅いだろう。はぁ…………全く……。この先が思いやられる。


「モテモテになりたいなら爽やか風イケメンになることだね」

「…………それ、あなたの好みじゃないですか」

「……バレた?」

「だってあんなに部屋にポスターやら写真やらが飾ってあったらね」

 実は昨日、大家さんの部屋に行った時にイケメンのポスターや写真が大量に飾ってあった。俺は洞察力が凄いなと友達によく言われるレベルで色々な事を見つけるのが上手いらしい。

 ちなみに今回のは部屋を見渡したわけじゃない。

 玄関と対角線上に置かれたベッドの周りに大量に貼ってあったら気が付かないのは逆に無理だ。


「はぁ……まぁ、しょうがないですね。甘んじて受けいれますよ」

 そして俺は財布を持って立ち上がり、玄関に向かう。

「ちょっと買い物してきます。必要なものも色々とありますし」

 そう言って俺が部屋の扉を開けた瞬間、隣の部屋の扉も開いた。完全にタイミングが一緒だった。


 しかし、部屋の並び的に正面から見て俺の部屋は右だ。

 そして扉は右に開くから見えない。

 俺がタイミングが同じだった事に驚いてぼーっとしていると隣の部屋の人が扉を閉めた。

 するとその人物が見えたんだが、俺はこの人を知っている。

「ら、らぐ……空!?」

 俺は一瞬ラグ子と言いそうになったのを飲み込んで言い換えた。


 相変わらず返事が帰ってこない。

 そして数秒後、

「あなたは……才間優斗」

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