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紬ちゃんは驚かせたい  作者: ミズヤ
第一章
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第4話 小さな女の子は部屋の住人!?

「バァー」

「……」

 とりあえず状況を整理しよう。

 まず目を覚ましたら俺の上に小さい(・・・・・・・)女の子が居た(・・・・・・)

 以上!


 いやいや、ちょっと待って!? そんな状況有り得なくね? だが、現実に起こってしまってるこの状況はどう説明する。

 まずこの子は誰だ? 見たところ小学生っぽい。

 髪は黒のロング。カーテンを閉めないで寝てしまったので月明かりに照らされて怪しく輝いている。

 俺は平均より少し背が高いから俺の体の三分の二位までの大きさしか無いようだが、何故か四肢が動かないことは置いといてだな。


「驚かない? もしかして驚きすぎて目を開けたまま気を失っちゃった? 大変だ! 海ちゃんに助けを結花さんでも……あわわわ」

 何故か急に女の子はあわあわし始めた。何か焦っているようだ。


 まぁとりあえず、

「君は誰だ? それにここにどうやって入った?」

 寝る前に鍵をかけたはずだ。


 俺が声を発すると安心したかのような表情をした。

「びっくりした」

 ニコッと眩しい笑顔を見せてきた。可愛すぎる。だが、問題はそこでは無い。


「もう一度問う。お前は誰だ」

 ちょっと強い口調で言うと目をうるうるさせた。怯えさせてしまったようだ。

「ご、ごめんなさい」

 しゅんと肩を落として落ち込む。

「いや、そういうつもりじゃ」

 俺はとりあえず誰なのかを知りたかっただけなのだ。


「わ、私は紬です!!」

「何しに来た?」

「驚かしに」

 その言葉を聞いて俺は「へ?」と言う変な声が出た。


 俺は驚かしにって言葉にそれだけ? と思った。と言うか、驚かすためだけに人様の部屋に入ってくるなと思い、その為に俺は安眠を妨害されたのかと馬鹿馬鹿しい気持ちになった。

 恐らく今の俺はだいぶ怖い顔をしてるのだろう。紬と名乗った女の子が平静を装ってるものの、体が震えてるのが丸分かりだ。

「ねぇ、不法侵入。ダメ、絶対。これ常識……ね?」

 俺はなるべく優しい口調で言ったが、まだ声色から怒りを捨てきれないらしい。少し強い口調になってしまったようだ。


 だが、紬ちゃんは意を決したかのように俺に対してこう言った。

「紬の方が先にこの部屋にいたもん!」

 その事実を告げてきた。

 は? この部屋に先に居た?


 俺が初めて入った時も、夕食中も誰も居なかったじゃないか?

 普通なら俺はその程度の事で動揺しない。だが、紬ちゃんがあまりにも真剣な表情で言うから俺は反論が遅れてしまう。


 その瞬間、急に紬ちゃんの体が浮き始めた。

「う、浮いてる!?」

 さすがにその事には声も出なかった。

 人間が浮くことが出来ない。これは総ての人間の常識だからだ。飛行機も使わずに飛べるわけがない。滑空は出来るかもしれないがせいぜい耐久程度。浮き上がることは決してない。

 だが、彼女は浮いた。ふわりとごく自然に。


「もぅ……。私の部屋なのに……」

 浮きながらもさも当然のように気にせずに文句を述べる紬ちゃん。

 いつもならここで反論していただろう。だが、今の俺はそれが出来る精神状態じゃなかった。


「き、君は……一体?」

 すると紬ちゃんは偉そうにおっほんと咳払いをした後、胸を張ってこう答えた。

「私は紬。苗字は聞かないで欲しいけど、私はここに住んでいる。いや、住んでいたって言って方がいいかなぁ?」

 住んでいる? 住んでいた?

 一度に頭の中に入ってくる情報が多すぎて、俺は頭が爆発しそうな感覚に苛まれる。

 思考が追いつかん。


 そして紬ちゃんはさらにとんでもない事を口に出した。

 こんな話題なんか目でないほどの強烈で思考が停止する一発を放ってきた。


「私はね。幽霊(・・)なんだよ?」

 俺はその一言で完全に脳がクラッシュしてしまい、頭から煙を出しながら目を回して倒れてしまった。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 翌朝。俺はすっかり昨夜のことを忘れて清々しい気分で目が覚めた。

 小うるさい親の目の届かない所で自由な生活。これ程贅沢なことは無い。


 そして俺は起きようと布団をめくると。

「……」

「……」

「「…………」」

 なんか居た。しかも目が合った。


 なんだこの子? と寝ぼけた鈍い脳で考えると漸く昨夜のことを思い出した。

 そういやこんな面倒な子が俺の部屋に居たな。

「おはよう」

「なんで驚かないんですか」

「はぁっ?」

 俺はこの子にあのまま寝てしまった事を怒られるかと思いきや、全くの別方向から怒られた。驚かないことで怒られたのは初めてだよ。


「いやまぁ、驚いてるぞ?」

「あ!? 目を逸らしました! 嘘をつきました!」

 バレた。

 俺の小さい頃からの癖だ。嘘をつく時は目をそらす。


「どうして驚かないんですか!?」

 そんな答えにくい質問をしてくる紬ちゃん。

 幽霊の件に関しては驚いてはいる。表に出さないだけでな。

 だが、驚かしてきた件については……その……。

「可愛かったから?」

「ふぇっ?」

「いやぁ〜一生懸命驚かせようとしてた姿が可愛くてさ」


 この子は幽霊だと主張するが、俺の目には小学生にしか映っていない。大変可愛らしい。ランドセルが絶対似合う。

 それにしても……。

「幽霊って見えるもんなんだな」

 俺はまだその幽霊に関しては半信半疑だった。

 だって足あるし、体はくっきりと見えるし。だけど浮けるし……また頭がショートしそうだ。


「そうですね。今は故意に見せてる感じですね……。こうすると……、ほらっ! 見えなくなりました」

 と言ってその場でクルクル回って踊ってみせる。それを目で追う。

 まぁ何が起きているかと言うと、何も起きていないんだ。


 すると紬ちゃん自身も俺の視線に気がついたのか、その場でぴたっと静止した。

「……見えてます?」

「……ガッツリ」

 すると紬ちゃんはガーンと言う表情が似合いそうなくらいガッカリとした暗い表情になった。

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