第12話 結由ちゃんは女子力高い
俺は気がついたら「手伝って」と口走ってしまった。
だが、その前に結由ちゃんが言ったことがスルー出来ない。
「食べるって何??」
「だ、だって才間さんはロリコンだって」
まだその容疑晴れてなかったのかよ。
「俺はロリコンじゃないから安心してね」
俺はそう言いながら結由ちゃんの頭を撫でる。
すると結由ちゃんはいつも通りキャッキャと喜ぶ。
「やっぱりロリコン──」
「あのさ」
俺は紬ちゃんが言い切る前に俺は発言した。
「紬ちゃんは俺の服って掴めたよね?」
なぜ俺を触れるかは兎も角、俺に触れている軽い物なら障れるようだ。
その証拠に、紬ちゃんは俺の服の袖を掴んでみせた。
そして俺は壁に突き刺さった包丁を抜いた。この包丁がかなり軽いのである。
「ねぇ、なら……この包丁に触れるよね?」
その瞬間、ガクガクと震える紬ちゃん。
「う、嘘ですよね? 幽霊だろうと殺すのは犯罪なんですよ!?」
「お前は幽霊だからもう死んでいるぞ」
「え? じゃあ私に刺したらどうなるんでしょうか?」
幽霊になってずっと自分に触れる相手が居ないからそこら辺の事は気になるようだ。
だけど俺の考えは、
「多分痛みだけを感じるんじゃないか?」
「生き地獄じゃないですか!?」
「お前は死んでるじゃないか」
なんか会話がループしているような気がする。
幽霊ってややこしいな。
まぁ、過ぎてしまったことはしょうがない……。ここは結由ちゃんには帰ってもらって、紬ちゃんにはとにかく掃除には関わらないようにしてもらわないと。勿論、今後念力は使わせてたまるか。あんなもん何回も使われたら俺の命が持たないわ!
そしてせっせと再び散らばったものを回収し出すと、結由ちゃんが部屋に入ってきて散乱したものを回収し始めた。
「え? 何してるの?」
俺は意味わからなく聞くと、結由ちゃんの方が意味わからなそうな表情で「手伝ってと言ってきたじゃ無いですか?」と言った。
俺はこの時後悔した。
そんな事軽はずみで言わなけりゃよかったと。
「いや良いよ紬ちゃん。紬ちゃんは大家さんの妹さんだから色々仕事とかあるだろうし」
「大丈夫です。私の仕事はご飯を作って持っていくだけなので、ここが一番最後だったからこの後暇なんです」
思ったんだけどさ、この子。めちゃくちゃ女子力高くない? あの絶品料理をこの子が作ってるんだよ? どこかの幽霊さんと違って。
「私だって頑張ってるんです〜」
何故か俺の心の声が聞こえたようで、そう反論してくる紬ちゃん。
「あー。こんな大惨事を起こす幽霊女の子よりも料理スキルの高い女の子の方が良かったなー」
「それはダメです!」
俺が言った言葉を紬ちゃんは一瞬で否定した。
「生きてる女の子と同棲なんて不純です! やっぱりペドマさんだったんですね!?」
紬ちゃんはまたもや俺の事をロリコンと呼んでくる。俺はただ単に思った事を言っただけなのに酷くね? 別に小さい女の子だから良いとか言うわけじゃないしさ。
とりあえず──
「紬ちゃん程の大惨事を起こす人はこの世に存在しないから紬ちゃん以外なら良いかな?」
するとガーンという効果音が似合いそうな表情になった。
「う、嘘ですよね? もう、びっくりさせないでください」
割と本気なんだがこれを言ったら更に面倒なことになるので、俺は何も言わないことにした。
「悪いね。紬ちゃん」
謝ると紬ちゃんは「いえいえ〜」と満面の笑みを浮かべてきた。
俺はロリコンじゃない。ロリコンじゃないけど、どこか小動物的な可愛さを感じる。愛でたくなる可愛さだ。
一家に一人、結由ちゃんだな。
昔の偉人はこんな言葉を残した。"可愛いは正義"と……いい言葉じゃないか。
愛でる対象が居れば争いは起きない。
「つまり結由ちゃんは正義……」
「なんかペドマさんが変なことを言ってる〜」
「ぺドマちゃうわ!」
無意識のうちに声に出てしまっていたようだ。
と言うかペドマペドマうるせぇっ! 何回ペドマって言えば気が済むんだよ!
「ふふっ」
すると結由ちゃんから笑い声が聞こえてきた。
「どうした?」
聞くと目尻に涙を浮かべて笑顔で「面白いですね」と言った。
俺と紬ちゃんは別にコントも漫才もやってるつもりは無かったんだが、可愛いは正義だ。
つまりは紬ちゃんの笑顔で癒されたため、争うのはバカバカしくなったと言う事だ。
そうこう話しているあいだに床に散乱していたものや、壁に突き刺さったものの回収を終え、床拭きも終わった。
そこで俺は力尽き、仰向けに倒れ込む。
「疲れた〜っ!」
「私もです」
結由ちゃんは俺とは違って座布団に正座してお上品に緑茶を飲んでいる。渋いな。
所で、なんで紬ちゃんは何もしてないのに疲れたーとでも言いたげな体制なんだ。
何故か紬ちゃんは大の字になった俺の腕を枕にして寝転がった。
やはり幽霊だからか重みは一切無い。だから苦痛ではないんだが、なぜお前がそんなに疲労感を出している。
「楽しかったです」
緑茶を飲み終わった結由ちゃんはそう言ってきた。
これで楽しいって言って貰えるとは思わなかったため、少し驚いた。紬ちゃんには申し訳ないが、紬ちゃんよりも今の発言の方が驚いた。
「また来ても良いですか?」
こんな所にまた来たいなんて物好きなやつだな。
「まぁ、こんな所でいいなら良いよ」
結由ちゃんは「やった」と小さく喜びを表現する。
うん。可愛いは正義だなぁ。
「それじゃ、今日はそろそろ帰ります。さようなら」
そう言って俺の部屋から出ていく結由ちゃん。
「……とりあえずお前は念力禁止な」
「……はい」
これでひとまずは平和になりしたとさ。




