表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紬ちゃんは驚かせたい  作者: ミズヤ
第一章
10/16

第10話 自己紹介は事故紹介

 少し歩いたら直ぐに学校にたどり着いた。本当に近いのだ。


 しかし計算をミスった。

 これだけ早くつけるのならもう少し寝ていればよかった。後悔した。

 だが、これをやったら多分遅刻するだろうな〜。と心の中でハッハッハと笑う。


 まぁ、そんな感じで中学の頃は遅刻常習犯だったんだ。今日は違うけどな! 間に合ってるからな!

 祝! 脱遅刻常習犯!

 今日は朝飯にちょっといい物でも買ってこうかな? ちょっとした贅沢だ。


 あのアパートは晩は出るけど朝昼は出ないから自分で調達しなければならない。

 この間、茅良木さんと初めて会った時はゲームに熱中してて何も食べなかったけど。


 そして学校の正面には掲示板が有り、クラス分けが書いてあった。


「俺のクラスは──」

 少し見渡すとそこには俺の名前が書いてあった。

 1-Aか。

 1-Aの中でも、俺の名前はさ行だから比較的早く見つかった方だと思う。


「さて、他のクラスメイトは──」

 そう言ってもう1回見ようとしたその時、

「やほー」

 聞き覚えのある声が背後から聞こえてきた。


 間違いない。

 この明るい声は、

「茅良木さん」

「そうだよー。にしし」

 なんかいつも以上に楽しそうな気がする。


 あの日以降、茅良木さんは結構な頻度で俺の部屋に来て一緒にゲームをやったりしていた。

 その時もかなり楽しそうだったが、今日はいつになく楽しそうな気がする。


「ねぇねぇ、クラス分け見た?」

「ああ、見たぞ。1-A(いちえー)だった」

「へぇっ! 同じクラスだ〜」

 ……え?

 茅良木さんって同い年だったのか?


 なんだかずっとあのアパートに居る雰囲気があったから勝手に俺は彼女を年上だと思っていた。

 いや、まぁ勝手に思っていただけだけれども……凄い驚いた。そして同時に嬉しくもあった。

 まさか入学初日から知り合いと同じクラスだなんて運か良い!


 実はクラスで孤立しないか不安だったんだ。

 だけど茅良木さんが居たら問題無いな。


「いやー良かったよ。実は優斗君と同じクラスになれたらいいな〜って思ってたから」

 そう思ってくれてたのか!?

 いや、めっちゃ嬉しい。これで高校生活勝ったも同然だ!


「んじゃ、教室に行くか」

「だねー」

 思ったけどこの人、コミュ力高くね?


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 入学式後、オリエンテーションがあるって言うから教室に集められて、今は休み時間。なのだが、俺は一人寂しくスマホを弄ってた。


 この展開は予想していた。

 だって茅良木さんはコミュ力高すぎるんだもんな。そりゃ初日から友達作るのなんて余裕ですよね……。

 だから今は俺ではなく、その新しく出来た友達の所に茅良木さんは居る。


 まぁ、そんな訳で、独りライフを満喫している。のだが、

「なぁなぁ、お前も一人なのか?」

 なんか失礼な事をいきなり口走ってきた奴がいた。

「ちちち、ちげーしっ!? 俺は自分から好んで一人になってるんだし!?」

「いや、そんなに動揺しながら言われても説得力が無いんだが……」

 かかかと笑いながら俺の隣の席の男子生徒はそう言った。


 まだ自己紹介もしていないのになんなんだこのずかずか来る奴は……っ!


 その時、教室のドアが勢い良く開かれた。

「みなさーん! 席に着いてくだひゃっ」

 噛んだ。


 しかも幼い声だ。

 その声に驚いてそちらを見ると、明らかに幼い女の子が居た。

「みなさーん! 席に着いて下さいぃぃっ!」

 言い直した。


 だけど、なんでこんな所に子供が居るんだ?

「あっははは。そうですよねそうですよね私なんて先生に相応しくないですよねそうですよねだからみんなは私の言うことを聞いてくれないんですよね? この容姿がいけないんですか? もうどうしようもありません……かくなる上は──」

 そこで黙ってしまう。

 かくなる上は何するの? 俺はこの続きに恐怖を覚えた。


 先生の闇が垣間見えた。

 クラス中がそう感じたらしく、今度は大人しくそれぞれ席に着いた。

 すると先生らしき女の子はさっきまでの闇が嘘みたいにぱぁぁっと笑顔になった。これで一件落着だ。


 この先生に逆らったらある意味やばいとクラスの皆が勘づいただろう。

「なんかあの先生、やばくね?」

 かとさだ。間の人はあまりいなかったのか、隣同士になった茅良木さんは俺にぼそっと呟いた。

 それに俺は肯定の意味を込めて首を縦に振る。


「それではまず、みなさんは初めて会った人も居るでしょうし、自己紹介しましょう!」

 元気よくそう宣言した先生は木箱を持ってきてその上に立った。健気だっ!


「えー。私の名前は冬咲(ふゆさき)由絵乃(ゆえの)です!」

 元気よく自分の名前を名乗った先生は自分の名前を黒板にえっせえっせと背伸びをしながら書いていく。健気だっ!

 それどころか惨めになるからっ!

「これからみなさんの担任を務めます! どうぞよろしくお願いします」

 そう言って先生が勢い良くお辞儀すると、勢い良く教卓に額をぶつけてしまった。

 そして痛みからか、フラフラよろめいて木箱から落ちてしまった。


 うん。これは自己紹介じゃないな。これは事故紹介(・・・・)だな。


 そして心配した何人かの生徒が駆け寄って行って先生を起き上がらせている。

「冬ちゃん先生っ! 大丈夫ですか!?」

「冬ちゃん先生!」

「先生って付ければ言い訳じゃありません!」

 冬ちゃん先生って……。

 俺は笑いを堪えるのに必死だった。


 だが、左右の二人は

「あははは。ふ、冬ちゃん先生だって!」

「なんだよその名前っ! くははは」

 わ、笑ってやるな。冬ちゃん先生が可哀想だろ? ふふふ。

 

「それじゃあ、出席番号1番から順に名乗ってください!」

 何とか元の位置に戻った先生は額に絆創膏をつけながらそう言った。

 そして出席番号1番は立ち上がった。


 俺は別に自己紹介には興味はない。

 とりあえず知っている人と、この隣の失礼な奴のだけ聞いてれば良いかなと言う考えだ。


 そして茅良木さん。

「私は茅良木咲楽でーす。よろしくねー」

 明るい口調で言う茅良木さん。コミュ力の高さを体現しているのだろう。さすがだ。


 そして遂に俺の番、

「えー。俺の名前は才間優斗です。どうぞよろしくおねがいしまっす」

 噛んだが、最後まで言い切った。

 お陰で気がついている人も居ないようだ。良かった〜事故紹介にならずに済んだ。


 そして問題は隣の奴だ。

「俺の名前は名乗るほどのものでは無い」

 事故紹介再び!

 やーだーこの人。この歳になってまだ厨二病こじらせてるの!?

「あえて名乗るとするならば(そら)潤司(じゅんじ)。そう名乗らせてもらおう」

 その瞬間、シーンとクラス中が静まり返ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ