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 彼女が何部にも入らないので、僕も何部にも入らない。帰宅部。彼女は帰宅したくない。


「今日は猫」

「を?」

「見に行く」

「ペットショップか」


 僕は彼女に逆らう事ができない。

 彼女が帰りたくなければ、僕は帰宅することすらできないのだ。

 だから放課後は、彼女が疲れて帰りたくなるまで、いろんなところに行ったりする。


「さようなら」


 まるで空気であるかのように、ごく自然に他人を無視してずんずん歩いていく彼女のかわりに先生に挨拶をし、それが当然であるかのように押し付けられた通学鞄を抱えて、僕達は校門を潜った。

 彼女の鞄には何も入っていない。筆箱すら。

 みんなが持ってきているからなんとなく鞄を持っては来るが、彼女には筆箱や教科書の類を持ち歩こうという意思はないのである。

 要領が良いのか元が良いのか、彼女は予習復習などしなくとも勉強ができるようで、すべての教科書、ノートの類と筆箱は学校のロッカーに放り込んだままだ。

 多すぎて、その教科書類の半分は僕のロッカーにしまわれている。

 残念なことに僕は予習復習をしないと勉強についていけないので、いわゆる「置き勉」というものをしない。だから特に問題は無かった。


「あっ。猫」


 彼女は気まぐれであり、また、適当である。

 猫を見に行くと言ったが、それは猫と戯れたいとか愛でたいとか、そういう意味ではなく、言葉通り、「猫を見に行く」なのであって、こうして道路の隅で寝ている野良猫を「見られた」から、もう、それだけで満足する。適当なのだ。

 行動原理はよくわからない。でも僕は、この適当さ加減が嫌いじゃない。


「ペットショップは?」

「いい。猫、見たし」


 僕は彼女に振り回されるのが嫌いじゃない。

 結局この後、ペットショップには行った。見たのはウーパールーパーだった。彼女は「美味しそう」とだけ言った。

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