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01「狂いはじめた歯車」

――あれは、五年前の冬のこと。平穏な日常は、一つの報せから崩れ始めた。

「キャハハ」

「お待ちください、マーガレットお嬢さま」

 毛足の長い絨毯が敷かれた廊下を、オーバーサイズのワイシャツを着たマーガレットが走り、その後ろを中年のメイドが追いかけていく。そこへ、角から吊り紐(サスペンダー)の付いた短パンを穿いたギルバートが現れる。マーガレットは、咄嗟に方向転換することが出来ず、そのままギルバートの胸元に顔をうずめるかたちでぶつかる。

「わふっ」

「オッと。おやおや? これは、お父さまのワイシャツじゃないか」

 ギルバートは、自身の胸に飛び込んできたマーガレットを受け止めると、彼女が羽織っている服の端をつまみながら言った。そこへ、メイドが息を切らしながらやってくる。

「ハァ~。ようやく、追いつきました。さぁ、お嬢さま。すぐにドレスにお召し替えくださいまし」

「いやぁ。私、あんな窮屈な服、何があっても着ないんだから」

 ジタバタと手足を動かして抵抗するマーガレットを、メイドは米俵のように小脇に抱え上げて連行していった。

――そう。ここまでは、いつもと変わらなかったんだ。けど。

「ギルバートお坊ちゃま。ちょっと、お話が」

「何だ? 言ってみろ」

 廊下の先へ消えていくマーガレットの姿を目に焼き付けていたギルバートが振り返り、そこに立っている老獪そうな執事に発言を促すと、執事は声のボリュームを下げ、周囲を憚るように言う。

「いえ、このような往来がある場でお話するには、いささか似つかわしくない話でして」

「わかった。書庫へ移動しよう」

「恐れ入ります」

 二人は、やや早足で廊下を進んだ。

――思えば、このときから既に、執事の様子がおかしかったんだ。

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