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時狩の死神 ‐タイム・リーパー‐  作者: いざなぎみこと
第一章 幽霊少女と時狩の死神
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#16 死神さんの『権能』

「なんで……なんでだ……!?」

「何故私の動きが〈遅延(ディレイ)〉されなかったか、か?」


 穴が開いた軽鎧の隙間にマントをねじ込み、間に合わせの止血をするが、貫通寸前まで突き刺し強く引き抜いた刃は確実に仁大の体にダメージを残していた。

 吐血しながらも理由を問いただす仁大に、死神さんは心を乱すことなく答える。


「言葉遊びみたいなものでな。要は「攻撃の意思を見せなかった」に過ぎない」

「――はぁ!?」


 口から血をまき散らしながら、死神さんに食って掛かるが、負傷が想像以上に重度だったのか、軽くあしらわれる。


「私の『権能』〈時間跳躍(タイムリープ)〉の効力は過去への跳躍――私だけが過去に遡ることができる。お前の『権能』、お前自身は一度しか私に見せていないと思っているだろうが、私は既に三回ほど〈時間跳躍(タイムリープ)〉してお前の『権能』は、しかと見せてもらった」

「か、過去に……遡ったぁ!?」

「お前は明言してただろう? 「攻撃」が「遅れて届く」と。それは二回目の〈時間跳躍(タイムリープ)〉で立証できた。だから、私はあの時に「お前を攻撃しない」ようにした」


 唖然とした……というか、欠陥ありすぎではないか、『権能』とやらは。仁大自身、無敵と思ってた自分の能力の思わぬ欠陥にわなわなと震えていた。

 言い方や視点を変えれば回避できるなんて、能力系の制約に該当するとはいえ、実際に見てしまうと屁理屈感が濃厚すぎる。


 死神さんは過去に遡り、仁大が必ず「死神さんの攻撃に合わせて〈遅延(ディレイ)〉を発動する」事を確認した。入念に、三回も時をかけた。恐らくだが三回の間、『権能』に言葉の綾が通用するのも確認したのだろう。

 私の想像の域に過ぎないが、どうやら私の彼への評価は間違ってなかったようだ。

 死神さんらしく生真面目に、時間を無駄にせず、効率的に『権能』を使用した。


「行動に制約を掛けたいのなら、『燃費』が悪くなろうとも「敵の行動を〈遅延(ディレイ)〉する」と言ってしまえばよかったのだろうがな。ケチったお前が悪い」

「ふ……ふざけんな! ガス欠なのはお前も同じだろう!?」


 うーん、置いてけぼり感が凄まじい。

 私の拙い理解力で強引に解説するなら、能力は『権能』と称されている。

 『権能』の発動には『燃料』らしき何かがいる。

 仁大が持つ『権能』〈遅延(ディレイ)〉は、行動や具象の発生を遅れさせることができる。

 時間に関連する項目にほぼ干渉出来る強力な『権能』だが、代償として『燃費』が悪い。


 行動の一切を遅れさせ一方的に反撃できる能力だが、問題なのは保有者の頭がお粗末というか、自分が持つ能力以上の能力を持たされている点だが。

 ゲームでもバランスを崩壊させないために、強い能力には制約やら欠点を付加されるが、所有者の性能まで加味されるみたいだ。


 そこで槍玉に上がるのは、死神さんの『権能』だ。

 〈時間跳躍(タイムリープ)〉――過去への跳躍、字面からも察せるが過去に遡れる『権能』。


「残念ながら、私の『権能』は極々低燃費でな。まだまだ発動可能だ」


 自分だけが過去に遡れる力を持っておきながら、死神さんの『権能』は低燃費らしい。……基準はわからないが。しかし仁大を例にして考えると、強力な能力が低燃費とはこれ如何に、となってしまう。

 過去を遡ってその後の結果を改変が可能なのだ。それも何度も使用可能であれば、回避不能な初見の攻撃すらも余裕で避けることができるだろう。


「幽香、すまないな。突飛な状況下で置いてけぼりをくらってるだろうが、今しばらく待ってくれ」


 涼やかな語気から余裕が見て取れる。

 私が首を縦に振ると、仁大に首を向きなおした。再び大鎌を構えて。


「悪いな、仁大丹治。その首、貰うぞ」

「チクショウ……チクショウチクショウチクショウ!」


 チートだろうがふざけんな、言外にそんな感情が見て取れる。

 実際私もこんな状況だったらその言葉しか出ないだろう。


「テメェなんぞに……狩られてたまるかぁっ!」


 往生際が悪いというべきか、往生しているので形容に困るが、ツヴァイヘンダーをやたら目ったら振り回して近寄らせない。腰を地につけている状態でも、腕力任せで振り回す剣戟の威力は衰えていない。

 死にかけの者程危険とはあながち間違ってはいないようだ。


「もう一度、往生しろ!」


 一歩踏み込み剣の持ち手を大鎌の側面で叩いて剣を落とし、湾曲した刃を後頭部側に回して首に当てる。

 そのまま引き切れば、一切合切を終わらせることができたかもしれない。

 が、死神さんは動かなかった。物理的に顔が見えないから、何を考えているかも分からなかった。


「つっ……何がしてぇんだよ、テメェは?」


 然しもの仁大も一言。情け容赦をかけているのか、このまま逃げればもう追わないとでもいうのか。

 

「舐めやがって……!」


 感付いた仁大は、当然業腹ものだろう。

 傍らに落ちたツヴァイヘンダーの柄に埋まった時計を取り出し、再び蒼い炎が時計に収束されていく――〈遅延(ディレイ)〉が発動したのだ。

 先ほどまで痛みで動けてなかった体を素早く起こして飛び退いた。


「傷の痛みの感覚と悪化を〈遅延(ディレイ)〉……クソがッ! 治ったら覚悟してやがれ! お前の所にそれを取りに戻ってやらぁ!」


 捨て台詞を吐き、フードで顔を隠すと、姿が消えていく。

 死神さん同様、空間から削除される消え方をしていた。


「あ……居なくなった」

「……去ったか」


 深い、深いため息。

 ぐらりとよろめく。

 大鎌を杖代わりについて、死神さんは崩れかけた体を持ち直す。


「久々に……ハッスルし過ぎたか」

「ともあれ、お疲れ様ね。死神さん」


 死神さんはピースサインで私の言葉に応えた。

 ご拝読ありがとうございました。


 『権能』は基本的にほとんどが時間操作系ですが、今後いろんなのが出てくると思います。

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