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時狩の死神 ‐タイム・リーパー‐  作者: いざなぎみこと
第一章 幽霊少女と時狩の死神
11/29

#10 死神さんの諜報活動

 私は死神さんこと『時狩の死神(タイム・リーパー)』――世間を騒がしている『老衰殺人事件』を引き起こしている幽霊だ。現在は北海道のとある街、私の生家にて情報収集中だ。


 まあ、情報収集といっても、ニュースサイトやネットの民が好む掲示板のパトロールをするぐらいだ。

 本命は私がこそこそと会っている情報屋や手駒が持ってくるネタだけ。三度程警察にタレこまれたこともあったが、『霊体化』で手駒を警察の前に押し出してやった。そんなことができる程度に捕まらない自信はある。


 最近は『時狩』を模倣した事件が増えている。それに伴い、『時狩の死神(タイム・リーパー)』に対する民衆の興味が高まってきているのが手に取るようにわかる。


 それが最も顕著に表れているのが、このネットの海だ。

 狂言染みた『時狩』予告がそこはかとなく見られるし、何件か殺人予告をしたと逮捕される事例もあった。

 私を神格化し、信者を名乗ったり私に会ったとか言う奴もいるし(私は情報屋や手駒に自分の存在を明かしてはいない)、ファンクラブ感覚で教団を勝手に作ってる馬鹿もいる。


 伴ってブラック企業や犯罪者の情報がちょこちょこ見られるようになった。

 多少の期待を込めてか、叶わない願いをストレスで吐き出しているのか、それを吐き出す場面としてネットは非常に便利なようで、いい具合に情報集めにははかどっている。


 ただ困ったことに、私を暗殺者か何かと勘違いした人が、『時狩お願いサイト』なるものを立ち上げている。私が好きなゲームと似た状況になってて、どうにも苦い気持ちになる。なんせ最終的には大々的に支持されていた大衆に裏切られるのだからな。



 それはさておき、熟慮と吟味を経て、どうにかターゲットを定めた。

 二回目の『時狩』のターゲット、王林赤蔵が今際の際に捲し立てた汚職政治家「鳩原(はとはら)三人(みつひと)」だ。


 私の『時狩』のポリシー――大層に修飾するには汚れているが――として「不当に人の時を奪った者」という前提条件がある。

 今回のターゲットは賄賂で新規の政治家の未来を潰しているとのこと。前回のターゲットと似たようなものだが、きっとこれからもこの手の奴の時を狩ることになるのだろう。


 しょうがない、しょうがない事なのだ。

 私が手を汚さない限りは、私よりも凄惨な末路を遂げる者が出る。


「今更……怖れるものはない、だろ……?」


 立てかけている大鎌を見て、私は独白する。

 正道とは到底言えない非道――誰のためと言えば、生きとし生ける人の為。

 幽香にはああ言ったものの、弱者を救い強者を挫く、自分こそ義賊だと酔わなければ、今の私はまともな精神を保ててはいなかっただろう。

 狂った死神が生者を恨んで『時間(じゅみょう)』を奪い続けるだろう。蘇ったところで、到底人並な生活ができるとは思えない。


 仮面を思いっきり叩く。馬鹿みたいに硬く、どんな手段を用いても壊せない呪物は、私の苦悩をせせら笑っている気がした。

 きっと三人で蘇れたところで、私は後ろめたさで逃げてしまうのだろう。

 國光さんに顔を見られたら……いや、きっと怒った顔を見るのが怖くて、顔を背けてしまうのだろう。


 ――いや、まだまだ先の話だ。

 蘇りに必要な『時間』がどれくらいか、『時間』をどうすれば蘇れるのか。そんなことすらも知らないのだ。意図的にあの三眼は言わなかったような気もするが、ともかく生者になるのはきっと何年後とかそんなくらいの事だ。

 その時までに心を作って、拒絶されようが、赦されようが、笑って胸を張って幽香と國光さんを送り出せるようになろう。


 私は大鎌を持って屋上に向かった。

 生家といっても今や廃ビルになってしまった。肝試しで学生が入った時は冷や冷やしたもんだ。


「さあ、今日も始めようか」


 突風が私の身体を撫でて通り抜ける。

 映画のワンシーンさながらに、ビルの屋上から走って飛び降りた。

 筆が進んだのでもう一話投稿しておきます。


 良ければブックマーク・感想等よろしくお願いします。

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