この世とバイバイ
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シャァァァァァァァァァ…
夜の街中に車輪の回る音が響く。
細身の足がリズミカルにペダルを回す。
「ハッックションッッ!!!」
年頃の女性なのであろう、少し高い声が響いた。
「さっっっぶ……
上着きてきたらよかったなぁ…」
声にはでているが、それは風にかき消され本人にしか聞こえない。
その声の正体は結城霊花、女子高生である。
その黒髪は長すぎず短すぎず。
所謂セミロングと呼ばれる髪型で、自分ではこのくらいの長さがちょうどいいと思っている。
彼氏はいない。
地元の私立高校に通っている。
2ヶ月前に初めてアルバイトを始めた。
始める前は余裕だと思っていた。
しかし、覚えの悪さに店長からは怒られ、自分自身にも失望していた。
もう辞めてしまおうか…
いや、ここで辞めたら根性なしだと思われるぞ…
と、葛藤してたので気づかなかったのだろう。
歩道の縁石間のチェーンに自転車の前輪が引っ掛かった。
「えっ?」
突然、体が前に放り出され、自分でも何が起こったかがわからなかった。
恐らく頭を打ったのだろう、意識が朦朧としていた。
とりあえず起き上がろうと、手で地面を押すと同時に自身の右側から光が迫っていることに気がついた。
運送用の大型トラックだった。
運転手は……見当たらなかった。
「うそ……でしょ……」
この言葉が、この世界での彼女の最後の一言となった。
トラックは彼女の倒れていた場所を突っ切って、どこかへ消えてしまった。