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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪役令嬢と愉快な仲間達(?)

悪役令嬢は気長に愛を請う

作者: 東 志保

発作的に書きたくなった、ン番煎じの悪役令嬢もの。

乙女ゲーの世界で転生ヒロインとモブ転生者が登場しますが、主人公の悪役令嬢は転生ではありません。

あらあら、どうなさったの、そんなに熱心に見つめて。私に何かおかしなところでもあると仰るのかしら?


ええ、そうですわ。殿下の妻となるべく、未来の国母となるべく学び備えている私にそのようなことあるわけありませんわよね。

でしたら、そのように不躾に視線を寄越すのはおやめなさいな。はしたない。


あなたもこのオズウェルト王立魔法学院に通う栄誉を与えられた一人として、尊き貴族の血筋になくとも誰に恥じることもない子女としての礼節ある振る舞いを心掛けることですわ。

それでは、私は失礼するわ。



・・・まだ何かご用でも?

私、これでも急いでおりますの。皆平等を掲げる学院の内であっても、市井の民である貴女が目上にあたる貴族の私を用もなく引き止めるだなんて、あまり褒められたことではありませんのよ。


お分かりになりましたら、それでよろしいのよ。くれぐれも、今後はお気をつけになって。

それではご用件をお伺い致しますわ。


・・・なんですって?

生徒会執務室行くな、だなんて、そんなこと仰られても、私は副会長ですのよ。これからの時間は執務室で仕事が待っておりますもの。無理を仰らないで。


けれど、わざわざ私を引き止めてまで何を企んでおいでなのかしら。生徒会執務室に向かわせないように仕向けようという、その理由くらいは聞いて差し上げてもよくってよ。手短にお願い致しますわ。

企んでいるのはあちらの方って、あちらとはどなたのことでございますの?


・・・殿下が私を陥れようとしている? 何を仰るの、貴女。不敬にも程がありますわよ。私は広い心を持っておりますから、今の戯言は忘れて差し上げますので早くお行きなさい。


何があっても心を強く持て、って、私の心は殿下がいらっしゃる限り何者にも屈することはございません。何を心配されてるのか存じませんけど、不要な心配ですわ。


嫉妬は身を滅ぼすだなんて、何を当たり前のことを仰るのかしら。私は正妃となることを国王陛下と妃殿下からお認めいただいた身ですのよ。そんな私が、ほんの束の間の殿下のお戯れや分を弁えない愚かな令嬢風情を相手にそのようなつまらない感情に囚われて愚を犯すとでもお思いなの?


ええ、もちろん。王太子殿下に相応しいのは私だけ。そんなこと当然ですわ。私の身も心も殿下唯一人のためにあるのよ。勉学も魔法も教養も社交も全て、殿下の隣に並び立つに相応しくあれるよう努力したのですから。


・・・あらまあ、涙をお拭きになって。お返しくださらなくて結構よ。そのままお持ちになって。

当たり前のことではあるけれど、貴女の言葉は嬉しいと思わないこともなかったわ。

何を泣くことがあるのか存じませんけど、その涙に免じて貴女の忠告も少しは覚えておくわ。


さ、これ以上は私も時間が惜しいわ。

今度こそ、お行きなさい。

ええ、また明日。ご機嫌よう。






あら、皆様お揃いでしたのね。遅くなりまして申し訳ございません。

どうなさったの、皆様そんなに私を見つめて。どこにもおかしなところはないはずなのですけれど。


え? そちらのご令嬢が何か?

そういえば、どなたか存じませんけれど、どうしてこちらにいらっしゃるのかしら。生徒会執務室は関係者以外の立ち入りは禁じられておりますわよ。

まあ、殿下がお認めになっていらしたのね。それは失礼致しました。


ですが、私が一番彼女を知っているだろう、だなんて仰られても、申し訳ないのですけれど私、そちらのご令嬢に見覚えがありませんのよ。詳しく教えてくださるかしら。


貴女が噂のご令嬢だったのね。ええ、ええ、存じ上げております。ごめんなさいね、お噂だけは耳にしていたのですが、お姿をそうと知って拝見するのは初めてですの。同じ学院に通っているのですもの、きっとすれ違うくらいのことはしていたでしょうね。

そうとは知らず、失礼なことを言ってしまったわね。許していただけるかしら?


よかった。許していただけて嬉しいわ。お優しいのね。

それで、殿下? ランベール男爵家令嬢コレッティア様がどうかなさったの?


虐めですって?!

驚きのあまり、はしたなくも大きな声をあげてしまったわ。私としたことが、申し訳ございません。

それにしても、酷いことをなさる方がいらっしゃるのね。


・・・主犯がルーベルク伯爵家令嬢のメルリーナ様とオルティア伯爵家令嬢のシルヴィア様ですって?


ええ、メルもヴィーも私の友人ですわ。勿論、友人だからといって庇い立てするつもりはございませんけれど、何かの間違いではございませんの?


とんでもないことでございます。

コレッティア様の訴えを嘘だとは思っておりません。

その主犯がメルとヴィーである、というその点に関して、そう断じるのは早計ではないかと申し上げているだけなのです。


各々が伯爵家の一人娘、断罪してから冤罪だなんてことが分かったら、それは大変なことですわ。三つの子供であっても、この国の者ならば簡単に分かることですわ。


殿下もご存知の通り、どちらも王家と深い関わりをお持ちの由緒ある伯爵家。

王家ほどではないとはいえ高貴なる血を引く、ましてや王家とも親交の厚い貴族の家の人間のことであれば、慎重に慎重を重ねて調べてもよろしいかと。


もちろん、個人的に二人と親交のある身としては虐めだなんてそのような恥ずべき行為をするはずがないと信じております。

私は正妃となる人間ですのよ。いずれ国母となる私が、そのような愚かな者を友人とするはずがないではありませんか。

私、人を見る目は長けている方だと自負しておりますの。


コレッティア様が訴えるほどのこと、嘘であるとは思いませんが、卑劣な行為はどなたか別の方からであるものを勘違いされているとか、何かすれ違いがあるとか、そういった可能性を考えなくてはいえないと思いますの。


まさか! 誓ってそのようなことはございません!私が二人を唆すだなんて、何を仰るのですか、殿下!!!


ああ、申し訳ありません。

私ったらまた、はしたない。

けれど、殿下もいけませんのよ。婚約者である私のことをそのようにお疑いになられて。

お恥ずかしながらまだ年若い身でございますから、最愛の殿下からそのように仰られては少々取り乱してしまうこともございますのよ。

まったく、何を根拠にそのようなお戯れを・・・。


殿下がコレッティア様を愛していらっしゃる、ですって? まあ、まあ、まあ、それでは噂は本当でいらしたのね。

なるほど。コレッティア様も殿下を愛していらっしゃるのですか。それは大変、結構なことでございますわ。


殿下ほど素敵な殿方、親しくお話させていただいたら誰もが一度は恋い焦がれるものです。私も女ですから、そのような女心はよくよく理解しておりますのよ。


それで、それがなんで私が二人を唆してコレッティア様を虐めるだなんて、そんな馬鹿なお話に繋がるのですか?


・・・・・・。


申し訳ありません。あまりに馬鹿げたお話につい言葉を失っておりましたわ。

もう私に向ける愛は一欠片も残っていない、殿下の愛は全てコレッティア様のものだ、と。そう仰るわけですのね。

それで私が嫉妬のあまり二人を唆してコレッティア様を虐め憂さを晴らして、あわよくばご退場願おうとした、と。


いやだわ、殿下。

私のことをそんな下賎な女のようにお考えになっていただなんて。


この国の王室のことは殿下もよくご存知でいらっしゃることでしょう?

国王陛下並びに王太子殿下におかれましては、正妃さえいれば側妃や愛妾を娶ることも認められております。

お世継ぎを設けることも殿下の立派な公務の一つですわ。正妃となるはずの私がそれを邪魔するだなんて、そんな馬鹿なお話があるものですか。


ええ、私は確かに殿下を愛しております。

幼き頃に誓われたはずの殿下の愛が今は私にないとして、それは殿下の婚約者である身で情けないことにまだ年若い娘でしかない私にとっては辛く悲しいことでございます。


けれど、この国で正妃が務まるのは私を置いて他にはおりません。

国政に携わる父を持ち、現国王陛下の妹である母を持つ、王家と関わり深い私の尊き血筋。幼少から厳しく教えられてきた教養に礼節、正妃となるべき者の心構え。稀代の魔力を持つ殿下と釣り合うだけのそれを更に磨いてきた私を置いて、他の誰に務まりましょう?

そんな私の他に、国を纏め、民を導く国王といずれなられる殿下を真に支えることができる者などいるはずがないのですよ。


失礼ながら、ランベール男爵家の令嬢ごとき・・・こほん、失礼致しました。いえ、なんでもございませんのよ。

コレッティア様のような貴族とはいえ末端のご令嬢では、ほんの束の間の愛を語らう羽休めにしかなりません。

殿下の背負う重圧を真に理解し支えることなど私にしかできないのです。


ですから殿下は私の元に参ります。

ええ、必ず参ります。

愛など苦楽を共にし、支え、支えられ、子を、世継ぎを産み育て、その果てに得るのであっても一向に構わないのです。


幸いにも私には殿下に確かに愛を囁いていただいたことがあるのです。それを糧にいつまでもお待ち致しましょう。

殿下さえ健やかにお過ごしでいらっしゃれば、私はいくらでも殿下を待ち続けることができるのです。


私は殿下を心より、お慕いしているのですから。貴方様が私を今この時には愛してくださらなくても、それで良いのです。

私の想いがあれば。

婚約者という肩書きが、いずれは夫婦であるという、国王と正妃であるという誓約が、それさえあれば焦ることなど何一つないのですから。

愛しております、殿下。



どうされたの、コレッティア様。

そのように顔を歪めて。

殿下の羽休めという大役を賜るおつもりでいらっしゃるなら、そのように暗いお顔をしていてはいけないわ。

殿下が一時羽を休める添木となって、どうぞ明るい笑顔で安らぎをお与えになって。


殿下ほどの大きなお方の羽休めは貴女には荷が重いかもしれませんけれど、殿下を愛していらっしゃるならきっと耐え抜くことができるでしょう。


そうそう、何かお困りごとがありましたら、いつでも私を頼ってくださって構わないのよ。殿下を愛する気持ちに貴賤はありませんし、殿下のお子を宿す可能性のあるご令嬢でしたら私の全霊でお助け致しますわ。


私と貴女では担える役割は違うのです。

それは恥ずべきことではなく、むしろ誇るべきことなのですよ。

ほんの一時の羽休めだなんて側妃のような役割は私には出来ないことですから、それを出来る貴女は自信を持って殿下のために頑張っていただきたいの。


期待しておりますわね。



さあ、今日のところは解散と致しましょう。

コレッティア様の訴えの証拠も、私の友人が断罪されるべき罪を犯した証拠も、私が二人を唆すだなんてあり得ない事実も、何一つないのですから。

まずは詳しく調べて、話はそれからですわ。








もう皆様お帰りになったわね。


まったく、コレッティア様にも困ったものね。分を弁えない振る舞いは身を滅ぼしますのに、お分かりになったご様子がまるでなかったわ。

私の友人まで貶めようだなんて、未来の国母、殿下の婚約者たる私に向かって、なんて恥知らずなのかしら。

せいぜい羽休めの添木にしかならない分際で生意気にも程があるわ。


殿下も殿下ですわ。

殿下の優しさは美点でもありますけれど、優しさも過ぎれば毒に変わるというのに。


もちろん私は殿下のお与えになるものならば毒さえも喜んで飲み下し、殿下に与えるものが毒になり得るのならば全霊を持って薬に変えてみせましょう。


そんな私をお疑いになってまで、あの女の戯言に騙されておしまいになられるとは、本当に私がいないと心配な方ね。

そんな殿下を愛しているのですけれど。



ああ、そういえば。

あの時、私に忠告された方はなんてお名前だったかしら?

市井の生まれとはいえ、あの方のおかげで助かったわね。余裕を持って対応できたもの。

先見の明でもお持ちなのかしらね。


今度お会いしたら是非、お礼をしなくては。



さて、これから忙しくなりそうだわ。

なろう様では初めての投稿です。

お付き合いくださり、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 王妃となる者はこうでなくてはいけません。 ぽっと出の小娘なんかに務まるわけはないのです。
2016/02/26 23:53 退会済み
管理
[一言] 主人公だけ視点が違うので子供と先生のような会話になっているww
[一言] ざまぁにすらなれなかった転生ヒロイン乙。 長い年月を国母となるべく教育されてきた令嬢に、一般人の転生主人公が普通に考えても太刀打ち出来るわけないですよねー。 市位転生者からの視点も気になりま…
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