第1話「帰郷」
「やっと着いた!みんな元気にしてるといいんだけど」
ジークは、少し引き締まった表情でそう言いながら故郷アスカードの街に足を踏み入れた。
「そういえば、エフィスのおばさん家店やめたのかな~。この時間帯ならいつもやってるはずだけど。また久しぶりにおばさんのパン喰いたいな~。...それにしても、少し静かすぎないか。誰も外に人がいないのはおかしい。とりあえず母さんに会わないとな」
閑散と化したこの街に、ジークは少し異変を感じながらも、自分の家に向かった。
「ただいまー!あれ?」
家の中は誰もおらず、家具などが荒らされていた。
「これは一体どういうことなんだ!?」
すると、外から大きな女性の悲鳴が聞こえた。
「きゃーーー!!」
どこか聞き覚えのある声だった。
「この声はおばさんだ!」
すぐさま、ジークは外に出て辺りを見渡したが、どこにも人の姿は見当たらなかった。
「確か北東の方角だったはずだ。おそらく中央広場だろう」
ジークは持ち前の瞬足で目に見えぬ速さで中央広場に向かった。すると、広場には街の大勢の住民が身体を縛られ囚われていた。そして、その周りを鎧を纏ったどこかの傭兵らしき者たちが囲んでいた。
「あいつらは一体...。なんでこんなことを」
ジークの表情が怒りで一変した。
「お前たち一体何者だ!」
ジークは大声でそう言うと、傭兵たちがジークの存在に気付いた。
「おいお前、そこで何をしている!そこでおとなしくしていろ!」
一人の傭兵が鞭を振り回しながら、こっちに寄って来た。
「ふんっ。誰がお前の言いなりになるかよ。そうだな、丁度いい腕試しだ。5年間の修行の成果を今ここで見せてやるか。ザッ」
ジークはどこか自信あり気にそう言い、宝剣ギルガメッシュを地に突き刺した。
「なんだとこらーーー」
傭兵は鞭をジークにめがけてはなった。ジークはその攻撃を余裕の表情でかわし、目に見えぬ速さで傭兵の方へ移動した。
「お前の負けだな」
ジークは傭兵の背後に回り込み、宝剣ギルガメッシュを傭兵の首に近づけた。
「なっ、なに!!いつ俺の後ろに...。グサッ。ぐぁあああ!!」
ジークは剣を横に振り、傭兵の首を斬りつけた。傭兵は倒れ込むと、胸元にある文字が刻んであるのが見えた。
「...天?」
この文字になんの意味があるのか、ジークは知るはずもなかった。
「まあいい。どこのどいつか知らねぇが、なんの罪もない人にこんなことをするなんて絶対ゆるせないぜ。さぁ、残りも片づけるとするか」
ジークは残りの傭兵たちを見てそう呟いた。
「おいっ、あいつがやられてるぞ!」
「なにっ!早くあのガキを捕らえるぞ!」
一人の傭兵がそう言うと、もう一人の傭兵も気づき、こっちに駆け寄って来た。