茉莉の悪ふざけ*1
「まあ、いいわ。ちゃんとした説明をして、今日は終わりにしましょう」
「説明?」
「ええ。才能の事や何故私たちが才能を使って戦争なんかをしているのか。この二点についてね」
才能……。
そういえば、僕はあの時───
「まずは才能の事……なんだけど、あなた覚えてる?自分が何をしたのか」
何をしたんだっけ?
ついさっきの出来事すらも忘れる程、僕の記憶力は衰えているのか。毎日毎日、記憶力を上げる為に日記を書いているというのに、ちっとも上がらないじゃないか。というより、むしろ下がっているように感じる。
「……きっと覚えていないでしょうね。そういうものよ、1回目!は」
四条ヶ原は嫌みったらしく“1回目”を強調して言う。
1回目の何が悪いんだ。まったく。
きっと今の僕は不機嫌極まりない顔で四条ヶ原を睨んでいるだろう。
「アラ、コワイコワイオソロシイワ」
「本当にむかつくからやめて」
「ふふ、そうね。私まで消されたりしたら大変だもの」
わざとらしく返答する四条ヶ原に、思わず僕も感情を露にして怒りだしそうになる。
本当にわざとらしくて、嫌みな奴だ。
きっと、いや、絶対こいつは記憶の中の茉莉ではないだろう。茉莉の性格は覚えていないが…。そうだと願いたい。
「じゃあ、そろそろ本題に入りましょうか。覚えていないのなら、私が説明してあげる。私の視点でね」