名前も知らない個性派部員
顔が絵の具で黄色になりながらも、僕は部室に入って四ノ三八に聞いた。
「で、何で普通科にいるの」
すると、四ノ三八は「ちょっと待って」と言う。 1分弱の間待っていると、ジャアアーという水音が聞こえてきた。おそらく、ホースからの噴射音だろう。
その水は四ノ三八にかけられたのか、彼女の髪は濡れ始めた。
すると、目の前の四ノ三八が、頭からゆっくりと、徐々に溶け始めたのだ───。
────ダンッ!
という大きな音をたてて、僕は思わず尻餅をついた。その様子をおもしろがるように笑っている奴もいた。
──その中の数人が口を開いた。
「防水加工しすぎたんじゃねーの?」
「えぇー…僕様のせいなのぉ~?」
この会話を聞く限り、美術部には個性的な変人が多いらしい。
何故なら、最初に話した人物の声は女の声だったのだ。しかも年齢に相応しくないほどのロリ声なのだ。……ボーイッシュと表現して良いものかどうか…。
そして、次に話した人物は男だ。だが、声は男らしいにも関わらず、話し方は軟弱で震えまくっていたのだ。
そして、そのクセに一人称が僕様という。変な奴だ。
少し顔を見ることができたけど───イケメンと呼ばれていそうな顔立ちだった。残念だ、“残念なイケメン”。そう呼ぶほか無いだろう。
……それにしても、まだ溶けきらないのか。
数分前まで四ノ三八だった物は、今やっと頭が溶けたところだ。
ずっと驚いた姿のまま座っていてやる気も無い僕は、壁にもたれかかって欠伸をしていた。
その時だ。
どこかで聞き覚えのある“誰か”の声が聞こえたのは……。
「ふぅ~……。部長を前に欠伸をするなんて、礼儀がなってないのね…」
誰だ?コイツは……?
黒色のストレートで、赤・青・紫のメッシュが入っている髪に、四ノ三八のような瞳───。
……見覚えはない。
でも、声は知っている。
この女は僕の何なんだ?
「……まあ良いわ。とりあえず、“戦闘用の一”と一戦まじえてもらおうかしら」
僕の思考を閉ざすかの様に、女は訳のわからない事を言った。