入部初日は絵の具で歓迎
翌日のHR終了後、見覚えのある女子が僕に話しかけてきた。
「じゃ、部室に行こッ!」
───…名前、何だっけ?
少し金髪気味の茶髪というか、光のあたり具合では完全に金髪に見える髪に、少し色素の薄い目─。
───駄目だ。思い出せない…。
「一二三四」で「ひふみよ」だっけ?
……違うな。
また嫌な顔をされるだろうが、しかたない。
これで何度目だろう?そう思いながらも、僕は四ノ三八に名前を───四ノ三八?そうだ、四ノ三八だ…!
何故だろう、名前がわかると途端に気分が良くなった。
少しニヤケ顔になりながら歩いていたら、四ノ三八に「気持ち悪い」と言われたがそんな事もどうでもよくなるほど、珍しく上機嫌だった。
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「ここが部室だから」
「ここ…が?」
そこは、校舎から少し離れた所にある、何年か前まで使われていた体育館だった。
確かに、うちの美術部はいろんな意味で凄いらしい。いろんなってところが少しひっかかるけど…。
でもだからって、こんなに大きい体育館が部室って──。
「さあ入って!手続きはできてるから」
うちの高校には「文化系の部活動をする生徒は美術科に通わなければいけない」という校則がある。四ノ三八が言っている“手続き”とは、僕が普通科から美術科へ移動するための手続きのことだ。
そしてここで矛盾点が表れる。
どうして四ノ三八は普通科に通っているのか。と、ここへ来るまでに聞いてみたが、後でわかるの一点張り。
問いただすつもりは無かったから、それ以上は聞かなかったけど……やっぱり気になる。
───ガチャ。
そうこう考えているうちに、四ノ三八が扉を開けた。
────ベチャッ!
その瞬間、僕の顔に大量の絵の具が飛んできた───。
「入部おめでとう!」
「…はぁ?」
“おめでとう”なんてふざけてる。
何なんだ、ここの美術部は…。
───ああ、身体中ベトベトで気持ち悪い。