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召喚士リルナのわりとノンキな冒険譚  作者: 久我拓人
冒険譚その8 ~にんげんになりたかったモノ~

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~にんげんになりたかったモノ~ 1

●リルナ・ファーレンス(12歳)♀

 召喚士:レベル3 剣士:レベル0(見習い以下)

 心:普通 技:多い 体:少ない

 装備・旅人の服 ポイントアーマー アクセルの腕輪 倭刀『キオウマル』

 召喚獣:5体


●サクラ(212歳)♀(♂)

 旅人:レベル90 剣士:レベル3

 心:凄く多い 技:凄く多い 体:多い

 装備:倭刀『クジカネサダ』 サムライの鎧 サムライの篭手


●メローディア・サヤマ(10歳)♀

 剣士:レベル3

 心:多い 技:少ない 体:少ない

 装備:ヴァルキュリアシリーズ・リメイク ロングソード バックラー


●リリアーナ・レモンフィールド(22歳)♀ 《有翼種:天使》

 娼婦:レベル30 神官:レベル2

 心:多い 技:少ない 体:少ない

 装備:オイランのキモノ クレリック・フード

 冒険者。

 人々の依頼を受け、護衛や採取、蛮族の退治などを請け負い金銭を稼ぐ存在。

 では何故『冒険』者なのか?

 答えは簡単だ。

 冒険しているから、だ。

 護衛任務や採取の依頼、はたまた蛮族やモンスターが暴れていることなど、数える程しか存在しない。そんな事件や仕事に対して、冒険者の数は釣り合っておらず、日がな一日、酒場でエールを飲んでいる訳にもいかない。

 冒険者が冒険者と呼ばれる所以は、冒険をするから。

 仕事の無い冒険者はパーティを組み、未発見の遺跡を探す。それは旧神代時代の物であれば大発見だ。例え神代時代でも充分なお宝に巡り合える。そんな遺跡を探したり探索したりするのが冒険者の始まりだった。

 冒険をするには力が無くてはならない。そんな風に彼らが力を付けていき、やがては人々に頼られるようになった。単純な構図ではあるが、それが冒険者という職業の始まりだ。

 そこから冒険者の死亡確率を減らす為の訓練学校ができたり、粗暴な人格が多い冒険者をまとめる宿ができたりと今日に至る。

 そんな冒険者の一員であるパーティ『方角の先鋭』は今、旧神代遺跡の奥底に来ていた。

 サヤマ城下街から二日ほどの距離を歩いた場所。深い森のようになった山の中腹にぽっかりと空いた穴はただの洞窟のようにも思えた。

 しかし、モンスターや蛮族が巣食うその穴の先には、地下へと入り口があり、その階段には豪奢な彫刻がびっしりと彩られていた。

 その発見は『方角の先鋭』メンバーの顔をほころばせた。彼らの平均レベルは19。いわゆる繰上げの壁にぶち当たった彼らの中には胸を撫で下ろす者もいた。

 これでレベルが上がる、と。

 早速とばかりに旧神代遺跡へと侵入する。盗賊が先行し、罠やモンスターの足音に注意しながら探索する。もしも自分たちの手に負えない場合は逃げ出しても構わない。旧神代遺跡の情報は破格の値段で売れるからだ。その金額があればジックリと腰を据えて冒険者を続けることが出来るだろう。

 幸いにも『方角の先鋭』たちの実力は遺跡を上回っていた。罠の類はきっちりと盗賊が解除し、襲い掛かってくるゴースト系モンスターは全員一丸となって対処した。アンチゴースト系の呪文を使える神官の魔法が役に立っていた。彼は今日ほど神様に感謝した日は無い。

 そんな神様の幸運も味方につけてか、彼らは最奥へとたどり着く。彼らの持つバックパックはすでに満杯に近かった。鑑定が済んでいないのでどんな効果を発揮するか分からないが、マジックアイテムの類を大量に発見済み。すでに一攫千金を成した後。

 それでも最奥に辿り着いた彼らを『欲張り』だとはとても言えない。チャンスがあるのならば、それこそ手を伸ばしてみるべきだ。


「ここは……」


 リーダーが呟く。ランタンの光りに照らされたその部屋はこじんまりとしていた。だが、壁には美しい彫刻が施されており、特別な部屋だというのが分かる。

 とは言っても、不思議だった。

 部屋の中には机があり、ベッドがあり、クローゼットらしき物があった。まるで人間の生活する部屋のようなイメージを抱かせる。


「誰かが暮らしていた部屋だったのかな」


 盗賊が呟き、部屋に罠がないか調べていく。遺跡は大抵、なんらかの儀式に使用される物であり、誰かが生きていく為の住家とは考えにくい。尤も、貴族や王族の墓と考えると、マジックアイテムなどが眠っている理由にも思い至るのだが。

 盗賊が一通りチェックを行い、罠が無いことが分かると探索となる。机の中にはペン型のマジックアイテムがあり、クローゼットの中には旧神代時代の装飾品と防具があった。

 そんな発見にメンバーが沸いている中、リーダーはベッドを調べる。盗賊が罠は無いと言うが、くたびれたベッドの布団が少し盛り上がっている様は、少々どころかかなり不気味だ。

 リーダーはおっかなびっくりと布団をはがす。


「ひっ」


 思わず、彼はベッドから飛び退いてしまった。

 ベッドに眠いっていたのは、人間のミイラ……ではなく、人間の皮だった。すっかりと乾いてしまっているが、その独特の形は確実に人間であり、生前の姿をかろうじて残していた。


「な、なんだこれ……」


 驚くリーダーの声に全員が集まる。一体これはなんだと相談しあっている時、ふと足が何かに掴まれた。


「えっ」


 と、言葉を漏らしたのはリーダーと盗賊だった。二人の足を掴む手はベッドの下から生えていた。

 いや、生えているのではない。

 ベッドの下に潜んでいた何者かが二人の足を掴んだのだ。

 その手は、不気味にも二種類。リーダーの足を掴むのはまるで穢れのない宝石のような腕。傷ひとつ無く、まるで芸術作品のような腕はランタンの光を反射し、炎色に煌いていた。

 対して盗賊の足を掴む腕は不気味だった。革手袋をしているかのようにも思えたが、よく見れば違う。ちぐはぐな皮を繋ぎ合わせて表面に貼り付けているだけの手だった。

「」

 悲鳴をあげる暇はなかった。言葉をあげる暇もなかった。ましてや逃げ出す暇なんて有る訳がない。

 ベッドが弾けるように飛び、その下から現れた一体のゴーレム。リーダーと盗賊の体を持ち上げると近くの壁に二人を叩きつけた。

 その一撃で二人の意識は断絶する。今までの冒険が走馬灯することもなく、二人の冒険者はそこで終わった。

 そしてゴーレムは見る。

 のっぺりとした、顔の無い顔で逃げ出す冒険者たちを見る。

 それが冒険者パーティ『方角の先鋭』の最後の冒険だった。

 そして、生き残った一人がもたらしたこの報告に、ヒューゴ国は動くこととなる。その第一報に口を歪めた一人の領主。


「ふふ、ふふふはははははは」


 サヤマ女王は早速とばかりに飛び出すのだった。



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