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召喚士リルナのわりとノンキな冒険譚  作者: 久我拓人
冒険譚その6 ~シューキュ遠征と炎の契約~

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53/304

~シューキュ遠征と炎の契約~  1


●リルナ・ファーレンス(12歳)♀

 召喚士:レベル2

 心:普通 技:多い 体:少ない

 装備・旅人の服 ポイントアーマー アクセルの腕輪 倭刀(非装備)

 召喚獣:4体


●サクラ(212歳)♀(♂)

 旅人:レベル90 剣士:レベル2

 心:凄く多い 技:凄く多い 体:多い

 装備:倭刀 サムライの鎧 サムライの篭手


●メローディア・サヤマ(10歳)♀

 剣士:レベル2

 心:多い 技:少ない 体:少ない

 装備:ヴァルキュリアシリーズ・リメイク ロングソード

 夜明け前。

 この時間に活動しているのは夜行性のモンスターが寝床へ帰る途中ぐらい。獲物をたっぷりと胃袋の中に納めて、ご機嫌な眠りをむさぼる頃だろう。

 あとは仕事の遅れた盗賊が大慌てで移動している最中か。

 まともな人間ならば夢の中。ちょっぴり気の早い老人はもう目覚めようとしているかもしれない。

 そんな老人から程遠い、わずか12年しか生きていない少女であるリルナ・ファーレンスはちょっぴり固いベッドの上でスヤスヤと寝息をたてていた。

 彼女のベッドは一人用。

 しかし、リルナの他にもう一人。

 本来ならキングサイズのベッドでフカフカな布団で眠っているはずのお姫様が眠っていた。メロディだ。本名をメローディア、正式な場ではメローディア・サヤマと名乗っている。

 サヤマ女王の養子である彼女は正式なお姫様でもあるのだがわずか10歳にして冒険者デビューを果たす事となった。本来は冒険者学校を出なければならないのだが、女王の特権によるワガママ+放任主義の結果だ。

 だが、放任主義だからといってメロディを見捨てた訳ではない。

 ベッドの横には、かつて女王を冒険者時代に使用していた伝説級の防具であるヴァリキュリアシリーズをメロディ用に仕立て直した鎧が適当に転がっていた。売れば何百万ギルになるかもしれない装備だが、ありがたさはゼロ%。

 メロディにとっては少しだけありがた迷惑な鎧でもあった。


「ん~……」


 そんなメロディが寝返りをうつ。狭いベッドながら、小さな体である為に落ちる事はない。リルナも年齢の割に小柄な方なので、二人はお互いを抱き枕のイメージでベッドに潜り込むのだった。

 そんな微笑ましいベッドに人影が近づく。

 いったいどこから侵入したのだろうか。足音を全くたてず、ましてや息遣いすらゼロに近いため、真昼間でも人の気配を感じるのは難しかったかもしれない。

 ましてや、今は夜明け前。

 太陽も月も出ていない時間において、侵入者に気づくのは冒険者として経験の浅いリルナにはムリだった。

 それはメロディも同じだ。

 王室育ちでぬるま湯につかっていた様な睡眠時間を過ごしていたメロディには、まだまだ侵入者に気づける能力は備わっていない。

 隣の部屋で眠っているサクラならば気づけたかもしれない。

 だが、それはあくまで経験豊富なサクラの場合、だ。侵入者はリルナの部屋に侵入した事実は、今となっては運命変転の奇跡を使っても覆らない。

 侵入者はゆっくりと二人が眠るベッドに近づいた。その際も足音は鳴らない。壁はレンガ造りだが、床は木製だ。ギシリ、ギシリと鳴ってもおかしくはない状況で、侵入者の足は音を全くといって良い程に鳴らなかった。


「……」


 侵入者が見下ろす。

 その視線の先にはもちろん、リルナとメロディだ。手前にリルナがいて、奥にメロディがいる。ここまで接近されても、二人は目を覚ます様子は無かった。

 ゆっくりと布団を持ち上げる。その際も、まるで石化の呪文を受けたかの様に固定された動きだった。

 段々と布団がめくられ、二人のリルナの体が見えてくる。どうやら下着だけで寝ている様で、無防備の姿を晒す事となった。もちろん、自分の所属している宿で、どんな姿で寝ようと冒険者の勝手なのだが。

 恐らくメロディもそうなのだろう。捲られた布団の影から、彼女の白い下着も見えた。


「……」


 声には出さない。

 しかし、侵入者はニヤリと笑った。

 それは圧倒的優位に立った者が浮かべる『それ』である。対象者を虫ケラとしか見ていない侮蔑の視線にも似た、又は対象者を玩具として見ているものだ。

 時に権力者が浮かべ、時に奴隷商の男が浮かべる、その特有の笑みを侵入者は浮かべた。

 そして、凶行へと踏み出す。

 ゆっくりゆっくりと侵入者はベッドに、布団の中へと潜り込んでいった。

 侵入者が更に侵入したのだ。


「ん、ん~……」 


 もちろん、布団が揺れ、ベッドが軋み、体が密着する。一人用ベッドに三人は厳しすぎた。狭くなった自分の領地の不満を漏らす様にリルナの身じろぐ寝言がする。

 それでも侵入者は布団に潜り込むという蛮行を完遂させた。

 だが、それでは終わらない。

 窓の外で、太陽が登ってくる。朝陽が徐々に世界の一日の始まりを告げつつあった。窓からの光が二人の顔に当たれば目覚めは近いだろう。

 しかし、その前に侵入者が動いた。


「ん、ん……ん、んあっ」


 リルナの口から少しばかり苦しげな声が漏れた。


「ん~、メロディ……ちょっと……ふあ」


 寝ぼけながらリルナは手を自分の胸へと当てる。成長著しくない彼女の胸は自己主張は苦手な様で、まだまだ発展途上。それでも多少の膨らみはある。

 そんな胸に自分のでは無い手が、微妙に刺激を繰り返しているのだ。下から掬い上げるかと思えば中心にそってゆっくりと撫でる様に。あくまでそれは優しくあるのだが、ときおり動きが激しくなる事もある。

 その絶妙な動きに、未発達のリルナでさえ、少しばかり艶の混じった息を漏らしてしまった。


「ん、待って……メロディ、ちょっと」

「ん~……どうしたの、リルナ……?」

「どうしたもこうしたも……?」


 寝ぼけていた状態からの覚醒。ゆっくりと目を開けると、メロディがあくびを噛み殺す様に口に手を当てていた。


「ん?」


 メロディの手は口元にあって、自分の胸は両方とも現在進行系で揉まれ続けている。


「え?」


 慌てて跳ね起きると、胸から手は離れた。


「あん、もう終わり? 残念ね」


 リルナでもメロディでもない、第三者の声。二人は驚いてベッドから飛び降りて、部屋の隅に避難した。


「なになになに、だれだれだれ?」


 多少の混乱気味なメロディは慌てて自分のロングソードを持ち上げる。

 そんなメロディとは違って、リルナはベッドの上の人物を指差して、なんでどうして、と声を荒げた。


「ど、どどど、どうして――」

「ん? どうしたのさリルナっち」

「どうしてサッチュがここにいるのよ!」


 侵入者の名前はサッチュ。

 かつて、冒険者学校でリルナと共にパーティを組んだ盗賊の少女がそこに居たのだった。


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