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召喚士リルナのわりとノンキな冒険譚  作者: 久我拓人
冒険譚その21 ~あぁ新米女神さまの冒険みたいな~

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~あぁ新米女神さまの冒険みたいな~ 17

 トトリ城まで戻ってきたリルナたちは、謁見の間にてトトリ女王に報告を済ませた。公式の場、ということで相変わらず露出の激しい女王の褐色の肌に見とれつつ、神様に出会ったことを報告する。


「それは……どう捉えたらいいものなんじゃろうな」


 トトリ女王の渋い顔に、確かに、とリルナは思った。なにせ、状況を鑑みるに小神フランの独断先行だ。最後に別の神様がやってこなければ問題ない話だったのだが、神様の世界での重大ななにかに触れたのか、気絶させてまで行動を止めている。


「しかし、神殿を建ててしまったからのぅ。今さらアレを壊すというのも、なんというか問題な気がせぬか?」


 その言葉にもリルナは、確かに、と思った。


「いわゆる『罰当たり』ってやつやな」


 サクラが肩をすくめる。いわゆる神罰は、不敬に対して実行されるものだ。神殿に盗みに入った盗賊が不慮の事故死を遂げるのを目撃している者は多い。彼の魂がどうなってしまうのかは、誰も知らない。知らないほうが良いのかもしれない。


「建ててしまったのは仕方がない、と受け入れるか。しかし、どうして蛮族の神が妾たちの国を司る小神の上司なんじゃろうな」

「そこは妾も疑問じゃ。天界と現界では違うのかのぅ」


 メロディの疑問に答えてくれる人はいない。それは当たり前の話で、誰も天界のことを知らないからだ。神様は、あくまで神の世界で生きている。彼らは人間を助けてくれる存在ではあるが、助けてくれないことのほうが多い。それこそ神様を頼って生きていくのは不可能だ。

 そして今回の事件を通して分かったことは、神様の力はこちらの世界の影響を受けるということ。たとえ小さな神であっても、信仰と神殿、そして実績を得られれば『格』が上がるという事実。

 冒険者がレベルを設定されているように、神様にもレベルのようなものがあるのかもしれない。もっとも、それを不当に上げる行為を行えば、今回のように上司がやってくる。


「神様の世界も大変だ」


 リルナの言葉に、その場の全員が自ずとうなづいてしまうのだった。


「あとは、謎の組織じゃのぅ」


 黒いローブで全身を覆った組織。今回も、彼らが関わっていた。その姿を直接見た訳ではないが、どう考えても彼らが召喚した魔神だった。


「全国の王に通達しておく。恐らく、もうすぐそれぞれの使者が集まり会議が開かれるじゃろう。中には村ひとつが無くなったケースもあると聞いておる」

「村がひとつ!?」


 驚く冒険者たちに、女王はうなづいた。


「森の奥にひっそりと平和に暮らしている村は、あまり外部と連絡をとらんからのぅ。たまたま冒険者がいなかった。偶然にも商人がしばらく訪れなかった。そういう時期が重なれば、手遅れになることも珍しくないのじゃ。気づいた時には、村そのものが無くなっていたそうじゃ」


 冒険者は、呼ばれなくては駆けつけない。知らなければ助けることもできない。全国の全村をカバーしているわけではないが、それでもなにかやるせない気持ちにはなる。


「勘違いするなよ、冒険者。お主らは正義の味方じゃない。お金で雇われる野蛮な戦士と変わらぬぞ」

「うっ……」

「トトリ女王よ、妾は違うぞ」


 言いよどんでしまったリルナの代わりにメロディが声をあげた。


「妾の知ってる冒険者は、英雄なのじゃ。人々の笑顔のために冒険をして、伝説を作り上げた。妾はそういうものを目指しておる。野蛮で愚かでお金で動くかもしれぬが、それでも正義の味方に近い者に、妾は成りたいと思っておるぞ」

「メローディア姫よ。その道は苦行ぞ」

「知っておる」

「ならば、何も言わん。妾は女王であり、冒険者でもなんでもないからな。そんな英雄がいたのなら、妾の国も安泰なのじゃがの」


 基本的には荒れくれ者の冒険者。彼らの集う店は活気があふれるけれど、治安の低下は免れない。もしも、冒険者という存在そのものが正義の味方であるとするならば、世の中はもっと平和に満ち溢れているに違いない。


「ともあれ、依頼は達成じゃ。五万ギルを受け取るが良い」

「おぉ~」


 少年メイドが持ってきた麻袋をサクラがさっそく受け取る。その場で数えださない勢いだったが、そこは我慢したらしい。大事そうに懐に抱えた。


「それではの、冒険者。また用件があったら呼ぶので、ぜひともトトリ国に移住してくれたまえ」

「か、考えておきます」


 その国のトップから最大限の言葉に感謝しつつ、苦笑することしかできない困った言葉にリルナは答えた。移住するとなると、冒険者の宿を変更しないといけない。初めて付けたイフリート・キッスのピンパッチにちょっぴり触れつつ、リルナはやんわりと断る。


「うむ!」


 そんな答えは先刻承知の上なのか、トトリ女王は満足そうにうなづくのだった。

 なにはともあれ。

 こうして、サクラのお金を稼ごう大遠征は無事に目的を達し、三人は太陽のまぶしい常夏のトトリ国を後にするのだった。


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