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召喚士リルナのわりとノンキな冒険譚  作者: 久我拓人
冒険譚その21 ~あぁ新米女神さまの冒険みたいな~

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~あぁ新米女神さまの冒険みたいな~ 2

「それでは、私はここまでですわ。また一緒に過ごせる日を心待ちにしています。うふふ」


 と、クリアが不気味な笑顔をメロディに送ったところでお別れになった。どうやらしばらくオアシスに滞在するらしい。ブレイク・マッシュといっしょに日傘をぶんぶんと振り回して別れを惜しんでくれる様は、なんとも高圧的であり、メロディはそれに応えていいものかどうか、曖昧に手をあげた状態になってしまった。


「しかし、女王の頼みってなんやろな」


 あくびを噛み殺しながらサクラ。それに対して少年メイドは首をかしげて、さぁ、と曖昧にこたえる。内容を知らされていない分、どうにも対応できないのだろう。

 とにもかくにも、オアシスからトトリ城へは再び砂漠を越えなければならない。夜通し砂漠を爆走してきた少年メイドには申し訳ないが、急かせる彼の言い分に従って砂漠を突き進む。


「砂漠を移動する馬とかいないのかなぁ。いたら便利なんだけど」


 リルナの嘆きに対して、少年メイドは応える。


「いますよ」

「おるのか。どんな動物なのじゃ?」


 知りたい知りたい、とリルナとメロディ。


「ランバードっていう大きな走る鳥です。草原や森に生息する大きな馬みたいな鳥なんですけど、砂漠でも平気で走るんですよ」

「ほへ~。じゃ、どうして使ってないの?」

「走るには走るんですが……やっぱり森の生き物ですから、往復は無理なんですよね」


 その意味するところは『使い捨て』という意味だ。


「とびっきりの緊急にしか使いません。それこそ、大昔にあった戦争でも使われなかったって言われてるくらいです」

「確かにのぅ。言ってしまえば兵士よりも貴重な存在じゃの」

「そやな。なまじ便利なだけに逆に使いにくくなっとる。ゴブリンみたいにポコポコ生まれたら使いやすいんやけどな」

「それはそれで残酷なような……」


 果たしてゴブリンの命とランバードの命の価値にどれほど差があるのか。という難しい話に華を咲かせつつ、トトリ城下街まで強攻的に移動した一同は、ぜぇぜぇはぁはぁ、と汗を流しつつ街の中へと到着した。


「つ、ついた……もうだめっ。やすも、やすも、メイドさんっ」

「賛成じゃ。ちと無理をしすぎではないか。足の裏の使ってなかった筋肉がピクピクしとる、つりそうじゃ」


 リルナとメロディは、ひぃ、と言って街に入った先の建物の壁にもたれかかる。ちなみに少年は息も耐え絶え。気絶しそうな勢いで呼吸をくりかえし、ひんやりとした石畳に体を投げ出した。


「さすがに疲れたからな。ちと、休むべきか」


 そんな中で唯一、サクラだけは多少の息を乱した程度。さすがは旅人レベル90。悪路の強行軍には慣れているのかもしれない。

 とりあえず近くの雑多な食事処でぐったりと休んでからお城へと向かった。


「トトリ城は、石の城っていうイメージだね」


 城下街の外壁は存在しないが、さすがにお城の周囲に壁はある。といっても、それほど高い壁ではないので一般人でもよじ登れるほど。メロディやサクラだけでなくリルナであっても飛び越えるのは容易なほどだ。

 まさかそんな侵入をするわけにもいかず、お城の門へと移動する。少年メイドの姿を見た衛視が快く迎え入れてくれた。


「お疲れさまです! どうぞ!」


 衛視よりも少年メイドのほうが立場が上なのか、ビッシリと挨拶をされて通された。


「あ、すごい」


 門の中は緑で溢れていた。すぐ先は砂漠だというのに、川から水が引かれており、水が絶えず流れ続けている。その周囲には草花が大地を覆っており、緑の絨毯ができあがっていた。

 遠くから見れば白い石でできたお城。でも、近づくとそれなりに汚れているのが分かる。さすがに風に乗って流れてくる砂漠の砂までの対処はできない。それでも、緑があるだけマシなのだが。


「どうぞ、こちらです」


 少年メイドの案内で城内へと入る。中はふしぎとヒヤリとしており、涼しかった。


「どうなっとるんじゃ?」

「お城の壁や床の中に冷たい水を流しています。それが空気を冷やしているおかげで、過ごしやすくなっていますよ」

「おー、すごいっ」


 年中を通して熱い国ならではの工夫に感心しつつ、案内に任せて城の中を進んでいく。その際に城内で働くメイドさんの全てが少年なのに、若干の疑問を感じつつもリルナたちは謁見の間に通された。

 うわ、すごい!

 という言葉をリルナは飲み込む。さすがに王族が面会のためにと作った空間は絢爛豪華だ。石造りとは感じさせないくらいに装飾がほどこされ、きらびやかに彩られている。また、この部屋では流れる水が見えており、水の流れる音がさやかに響く。

 ただ、そんな部屋をノンキに見て回るわけにはいかない。


「リルナ」

「あ、わかった」


 メロディにうながされて、リルナは膝をつく。国によって王族や貴族への応対は違うのだが、基本的には頭を下げる文化が群島列島タイワの常識だ。

 片膝をつき、頭を下げる。しかし、やわらかい絨毯のお陰で冷たさは痛さは感じられない。客人に対しても配慮が行き届いていた。

 リルナ、サクラ、メロディは横に並んで頭を下げる。少年メイドは後方の壁に控えて立っていた。

 と、最奥の右側の扉が開く。まず現れたのはまたしてもミニスカートの少年メイド。ずいぶんと日焼けした彼だが、太ももも腕も華奢だった。なんにしても、リルナよりも可愛さ美しさが上な少年たちがゴロゴロといることに召喚士はなんとなく、ぐぬぬ、と心の中でうめき声をあげる。


「トトリ女王がいらっしゃいます」


 そう少年が静かに宣言する。

 しかし、まさか堂々と見るわけにもいかない。リルナはちらりと顔をあげて、女王の姿を確認した。


「よくぞ来てくれた。感謝するぞ」


 そこには、絵に書いたような砂漠の女王がいた。

 まるで露出を楽しむような、局部のみを隠した黄金の布にジャラジャラと付随する装飾品。日焼けした浅黒い身体を見せ付けるような姿で、トトリ女王はニヤリと笑うのだった。


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