幕間劇 ~女王陛下の夢~
石造りの豪奢な部屋には、天蓋付きの大きなベッドがあった。太陽神を信仰する者が多く、年中気温が高い国にしてはヒヤリとした空気が漂っていた。
それもそのはず、部屋には特別に冷たい水が絶えず流れ続け、いつでも空気を冷やし続けている。チョロチョロと水の流れる音は、それだけでヒーリング効果もあり、ふかふかのベッドと相まって、眠りに誘うにはもってこいの部屋だった。
「……ん」
トトリ国。
国土のほとんどが砂に覆われている大地において、一番豪奢な部屋で眠るのはもちろん女王であるトトリ女王。褐色の肌を大胆に露出させた姿で、サラサラと流れるような絹を押しのけて起き上がった。
「ん~、どうしました女王?」
「すまぬ。起こしてしまったか」
隣に寝ていた少年が目をこする。まだまだ育ちざかりの少年は、女王が起きたことよりも自分の眠気のほうが勝ってしまい、むにゃむにゃと現実と夢を行ったり来たりの状態だ。恐らく、明日の朝には忘れてしまっているだろう。
そんな少年の愛らしさにトトリ女王は微笑む。そして、額にキスをしてから、先ほどの夢を思い返した。
「ふむ、ここまでハッキリと覚えているとなると……無碍にもできんかのぅ」
しかして、面倒じゃ。
そうつぶやき、対処法を練る。といっても、女王自身にも眠気が襲ってきた。窓から見える風景は、まだまだ夜の暗闇ばかり。太陽神を信仰していても、残念ながら朝が早くやってくるわけではない。時間とは平等に流れるものだ。
「ふあ~ぁ。仕方ない。明日のことは、明日の妾に任せよう。頼んだぞ、妾よ」
トトリ女王は問題を投げ出し、今は愛しい少年を愛でるように、眠っている少年の顔を自分の胸へと抱きしめる。ちょっぴり苦しそうな声が響くが、そんなのは関係ないとばかりに、女王もまた夢の中へと再び旅に出る。
「あ~、そうじゃ。ヒューゴ国のなんとかが来ているそうじゃな。それに任せるかのぅ」
良いアイデアじゃ~、とつぶやいたのはすでに夢の中での話。
果たして女王は明日の朝でも内容を覚えているのか。
心配そうに窓の外から見守る神様の姿があった。




