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召喚士リルナのわりとノンキな冒険譚  作者: 久我拓人
冒険譚その19 ~マジカルだいせんそー~

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248/304

~マジカルだいせんそー~ 1

●リルナ・ファーレンス(12歳)♀

 召喚士:レベル7 剣士:レベル0(見習い以下)

 心:普通 技:多い 体:少ない

 装備・旅人の服 ポイントアーマー アクセルの腕輪 倭刀『キオウマル』

 召喚獣:10体


●サクラ(212歳)♀(♂)

 旅人:レベル91 剣士:レベル7

 心:凄く多い 技:凄く多い 体:多い

 装備:倭刀『クジカネサダ』 サムライの鎧 サムライの篭手


●メローディア・サヤマ(10歳)♀

 剣士:レベル7

 心:多い 技:少ない 体:少ない

 装備:ヴァルキュリアシリーズ・リメイク バスタードソード バックラー


●ルル・リーフワークス(12歳)♀

 学士見習い:レベル6 

 心:多い 技:少ない 体:少ない

 装備・学士の帽子 学士の服 森羅万象図鑑


○リリアーナ・レモンフィールド(22歳)♀ 《有翼種:天使》

 娼婦:レベル57 神官:レベル7

 心:多い 技:少ない 体:少ない

 装備:オイランのキモノ クレリック・フード

 その日は朝から雨が降っていた。

 シトシトというよりも、ザーザーと豪快に降る雨は神様からの恵みそのもの。水は生きていく上で重要な物であり、雨の少ない年は川が干上がり、ピンチになってしまう。

 もちろん、水不足には国をはじめ神殿も動いてくれる。魔法使いや神官をそれぞれの街や村に配置して、必要な分を魔法で生成してくれるのだ。

 命に別状はない、といって水不足は軽視できない。なにせ、人を救うので精一杯になってしまうので、農作物までは行き渡らない。水不足の次に襲ってくるのは食糧難だ。飢餓ほど恐ろしいものはなく、戦争の原因にもなってしまうので注意が必要である。

 もっとも、雨を司る神様は、そこまで人間に厳しくないので、適度に降らせてくれる。しかし、油断はよろしくない。


「今日もお仕事なしか~」


 冒険者の宿『イフリート・キッス』の二階にて、所属冒険者のルーキー、リルナ・ファーレンスは窓から外をながめていた。

 昨晩から降り続く雨で本日の気温は控えめ。夏の暑い時期には雨は喜ばしいもので、過ごしやすい一日になる。途中で晴れれば、ムッとした湿気に襲われるのだが、それは考えないことにした。

 冒険者にとって過ごしやすいのだが、商人にとってはあまり歓迎したくないのが雨だ。どうしても客足は遠のいてしまう。現に、いつもはワイワイガヤガヤと騒がしい一階の酒場スペースも、今日はどこか静かだ。午前中から漂ってくるアルコールのにおいも、雨にまぎれてリルナの鼻までは届いてこなかった。

 二階の憩いの場で、あくびを噛み締めているとトントントンと階段を登ってくる音がする。リルナが視線をやると、まず見えたのは金色の髪。それがちょっとぺったんこになってしまっているのは、雨にぬれているからだろうか。

 普段は艶やかな金髪も、雨にぬれては少しばかりくすんでしまう。ヒューゴ国、サー・サヤマ領のお姫様、メローディア・サヤマだった。


「おはよう、メロディ」

「おはようじゃな、リルナ。その様子じゃと、今日も仕事は無しかのぅ?」


 メロディの言葉に、リルナは肩をすくめるしかなかった。怪我から無事に復帰し、リハビリを兼ねて遠征まで行った上に、パペットマスターの情報提供で報奨金までもらってきた。さぁ、どんどん経験をつむぞー、と声をあげたところで仕事がなければ意味はない。


「せっかくレベルもあがったのにのぅ」

「そうだよね~。はぁ~……」


 リルナはテーブルに突っ伏す。というのも、意気揚々と雨の中を出かける先輩冒険者パーティ『スカイスクレイパーズ』を今朝、見送った。彼女たちのレベルは9。リルナたちは7。この差はどうしても埋まりそうにない。というか、開きそうな勢いだった。


「はっはっは! じゃぁなリルナ、お留守番は任せたぞーぅ!」


 と、ケラケラ笑って出て行くスカイ先輩ことカリーナ・リーフスラッシュにあっかんべーをお見舞いしたところで、気分は空模様と同じく晴れそうにない。


「ぐぬぬ……神官の仲間が欲しい」


 相変わらず冒険者が中心となっているサヤマ城下街では神官との仲がよろしくない。一度ついてしまったイメージはそう簡単に払拭できず、ましてや冒険者側の反省もないのが現状だ。なにより回復魔法は喉から全身が出るくらいに欲しい。高価なポーションを持ち歩くのは、水を持ち歩くのの加えて重量が増えるので、それがゼロになるのは相当な強みだ。


「神官がおらずとも良いではないか。妾はもう二度と怪我をしないぞ」

「メロディが無事でも、わたしが無事じゃなーいっ」


 ふたりはお互いの顔を見合わせて肩をすくめる。怪我をしない、とは言うもののメロディは両耳の鼓膜を損傷したし、リルナは足の骨を折っている。神官がいたところで、その怪我は防げなかっただろうし、冒険者に傷は絶えないものだ。


「ところでサクラは?」


 お爺ちゃん少女、サクラも女性専用の冒険者の宿ながらイフリート・キッスに所属している。魂ではなく肉体の性別を重視するようだ。そんなサクラは隙あらば娼館に通っている。経済をまわすのは良いが、無駄遣いをされてお金を貸すなんて事態は望んでいないので、パーティメンバーとしてはちょっと心配だった。


「昨日の夜はいたんだけど……レナンシュのところじゃないかな」

「そうか。時間があるし、また楽しい修行でも教えてもらおうと思ったんじゃけどなぁ」


 レナンシュとは魔女であり、サクラは魔女に呪いを受けている。同じ魔女であるレナンシュに、その呪いを解いてもらう契約になっていた。そのためにはレナンシュが成長しなければならず、成長途中だった。


「あ、そうだ」

「なんじゃ?」


 突っ伏していた体を起こして、リルナはメロディを見る。


「メロディって、魔法関連はぜんぜんじゃない?」

「うむ。偉そうに言うわけではないが、剣と冒険者になるための修練で、魔法についてはまったく触れてこんかったな。母上が生粋の剣士だったしのぅ。妾も前衛職に、というか剣士に憧れて冒険者になりたかったので、魔法はさっぱりじゃ」


 えっへん、とメロディは小さな胸をはる。

 それに苦笑しつつ、リルナは人差し指を立てた。


「剣士に魔法は不必要……って言い切るのはもったないよ?」

「ん? そうなのか?」


 うん、とリルナはうなづく。そして、人差し指の先に魔力の光を宿した。召喚士の必須魔法『ペイント』だ。空中やあらゆる場所に文字や絵を描く魔法で、魔力を空中に固定させる魔法である。


「魔力視は、できたほうが色々と有利だし」

「あぁ、なるほどのぅ」


 メロディはうなづき、リルナの横に座った。つまり、どうぞ教えてください、という合図。


「よろしい、教えてあげましょう、メローディア姫」

「うむ、よろしく頼むぞ、リルナ先生」


 召喚士とお姫様はふたりでくすくすと微笑む。

 ちょっとした学校ごっこで、雨の鬱屈さを吹き飛ばすことになった。


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