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召喚士リルナのわりとノンキな冒険譚  作者: 久我拓人
冒険譚その3 ~パペットマスター~

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~パペットマスター~ 5

 サー・サヤマ城下街から西へ約半日歩いた所にあるダサンの街。隣国のサカ王国との間にある大きな商業都市であり、ヒューゴ国の中ではヒューゴ王の城があるカンドの街に次いで大きな街である。


「おぉ~……」


 遠くからでも見えるその巨大な外壁に、リルナは思わず感嘆の声をあげた。


「ダサンは初めてですか?」

「うん。わたしイフク国から北周りでヒューゴに来たから、こっちの方はぜんぜん」

「なるほど。では、カンドの街も?」


 リルナはブンブンと首を横に振る。


「南は全く知らないです。凄い街っていうのは聞いていますけど」

「冒険者なら一度は訪れてみるといいですよ。武器や防具の独自アレンジが特長でもありますからね」

「そうなんだ~」


 と、気ままな会話をしながらダサンの街へと到着した。

 サヤマからは街道が出来ており、危険なモンスターも出ないという話の通り、平和なものだった。途中に何度か小休止とお昼休憩を入れながらも、夕方までには街へと辿り付く。

 街道には歩く人々や乗合馬車、荷車を引く人など大勢いたので、例え初めてでも迷うことなくダサンの街まで来ることが出来るだろう。ただし、幾ら安全とは言え油断は禁物である。時折、ゴブリンなどの蛮族が住み着くこともあり、被害があったという報告もある。運が悪かったと嘆くか、お金を払って冒険者を雇うか。それは商人の判断次第だった。


「おや……?」


 ダサンの街に近づくにつれ、スペルクが疑問の声をあげた。


「どうしたんです?」

「入口に行列が出来ています。普段はそんなことが無いのですが……」


 リルナもおでこに手をかざして見てみる。

 外壁の一部……大きく門になっている所に、街へ入る為と思われる行列が出来ていた。


「入口が閉まってるの?」

「いえ、あの大きな門は大規模な商隊が訪れた際に開かれるものです。普段は、門の脇にある通常の入口から入るのですが……なんでしょうね?」

「とりあえず、行ってみよう」


 二人は少しだけ歩くスピードをあげる。ほどなくして、行列の最後尾に辿り付くと、その手前に並んでいた人に声をかけた。


「何の行列ですか?」


 どうやら前の人も商人らしく、背中のバックパックには色々な商品が詰め込まれてパンパンに膨れ上がっていた。


「ん? あぁ、なんでも冒険者をチェックしてるらしい。俺ら商人には関係ないので良く知らんのだが……お嬢ちゃんは冒険者かい?」

「うん、サヤマ城下街のイフリートキッス所属の冒険者です。冒険者をチェックって、いったいなんだろ?」

「悪いようにはされないと思うがなぁ。何か分かったら情報を回してくれ」

「は~い」


 ひとまず返事をしてからスペルクの顔を見た。彼も初耳だったようで、リルナと同じく肩をすくめる。とりあえず、そのチェックというのを受けてみるしかないようで、二人は大人しく行列が進むのを待った。

 幸いなことに冒険者の数は少ないらしく、スムーズに列はダサンの街に吸い込まれていく。十分ほどでリルナたちの番となった。


「こんにちはっ」

「こんにちは、っと。お嬢ちゃんは冒険者かい?」


 チェックしているのは若い自警団らしき青年だった。軽装ではあるが革鎧とショートソードを装備している。モンスターが現れた時には、いかにも活躍しそうな顔をしていた。つまり、かっこいい。


「はい、そうです」


 少しばかりイケメン顔に感心しながらリルナは応える。だからといって、陶酔している訳ではない。


「少々時間を取らせて申し訳ないが、こっちに来てくれるかい?」

「え~っと……?」


 リルナは後ろに並ぶスペルクの顔を見た。


「この辺りで待っているよ」

「分かりました。えっと、はい、何なんですか?」

「詳しい話は中で」


 イケメンに背中を押され、リルナは自警団の詰め所みたいな場所に通される。ダサンの街の警備にあたる自警団の寝泊りも兼ねているらしく、壁の一部として設けられた、それなりに広い場所だった。


「ようこそダサンの街へ」


 そんな詰め所で待っていたのは、一人の好々爺。白い髭をたっぷりと蓄えたお爺さんだった。


「こんにちは。えっと……冒険者なんですけど……」

「ほっほ、これは可愛らしい冒険者様だ。ふむ、カーラさんの所の新人かのぅ?」

「あれ、お爺ちゃんカーラさんを知ってるの?」

「カーラさんがまだ現役の時に、お世話になってねぇ。色々と薬品の材料を取りに行って貰ったものだ」

「薬品? ってことはお医者さん?」

「その通り。さすがは冒険者様は勘が鋭い」


 お爺ちゃんの言葉に、リルナはえへへと笑顔を零した。


「さて、では少しだけ診せてもらえるかの?」

「うん?」


 疑問に思いながらも、リルナはお爺ちゃんの前に置かれた椅子に座る。まずは、とばかりにお爺ちゃんはリルナの顔色をチェック。そして、目や鼻、口と診ていく。


「少し、胸の音を聞かせてもらってもいいじゃろうか?」

「あ、は~い」


 左胸をガードしているポイントアーマーを外す。まだまだ未発達の胸にお爺ちゃんは手を当てた。


「ふむ……問題はないようじゃのぅ」


 何度かリルナの胸の音を手で確かめたお爺ちゃんは笑顔を浮かべた。


「これって何の為?」


 ポイントアーマーを装備し直しながら、リルナは聞く。


「実は最近、冒険者が決まってオカしくなること件が続発していてのぅ」

「おかしく?」

「真夜中に奇声を発したり、ありえない力で暴れたり。本人は覚えていない、寝ていただけ、というヤツもおる始末じゃ。それに加えて人形が動き出したなどと宿を飛び出してくる冒険者もいての。ワシら医者は冒険者が患った新しい病気じゃないかと疑っておるのじゃ」

「そうなんだ」

「うむ。しかも、決まって外からの冒険者ばかりでな。ダサンの街の冒険者の宿に登録しておるものは大丈夫という、不思議なものでのぅ。ほとほと困っとる」

「大変だねぇ、お爺ちゃん」

「なぁに、これも仕事じゃ。時折、お嬢ちゃんみたいな若い娘のおっぱいを触れる役得でもあるしの。かっかっか!」

「お爺ちゃん名前は?」

「ワシの名はイースダン・ウッドじゃ」

「帰ったらカーラさんに報告しとくねっ!」


 とってもいい笑顔で、お爺ちゃんに宣戦布告を行ったリルナは、ビビるお爺ちゃんの「嘘じゃ冗談じゃ!」という言葉に耳を貸さず、そのままダサンの街へと入るのだった。



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