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召喚士リルナのわりとノンキな冒険譚  作者: 久我拓人
冒険譚その16 ~かんたんなおしごと~

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~かんたんなおしごと~ 7

 地図によると大部屋からは三方向に通路が分かれている。前方と左右にそれぞれ通路があり、一同は左側へ進んだ。

 理由は簡単。


「こっちは部屋がひとつで行き止まりだよっ」


 先に行き止まりの部屋を調査しておけば後戻りの面倒が無くて良い。加えて、背後から挟撃される心配を無くす為でもあった。

 サクラが先頭を進み、イザーラが聞き耳を立てる。リルナとクリアは地図をながめて、メロディは背後を警戒しながら進んでいくと、通路の先にある部屋が見えてきた。部屋内には明かりが無く、やはり真っ暗だった。加えて、蛮族やモンスターの気配も無い。それでも警戒しながら部屋へと入ると、すぐに床に置かれている物に気づいた。


「これは……寝床か?」


 オンボロの布が敷かれており、蛮族の荷物と思われるズタ袋などが床に置きっぱなしになっていた。

 そこまで大きくない部屋で、岩壁はゴツゴツと迫り出している。そこにたいまつがいくつか立てかけてあったので、リルナはランタンから火を移して部屋の四隅に置いた。明るくなった部屋内を改めて観察すると、やはり寝床として使用されていたらしく布が多く敷かれていた。


「冷たいな。ついさっき逃げたってことは無いみたいや」


 サクラが布をさわって温度を確かめている。リルナもマネしてみようと思って布を手に取ってみたが、悪臭に思わず放り投げてしまった。


「あははは、なにしてるのリルナちゃん」

「だって~……はい、クリア」


 クリアに笑われたリルナは鼻をつまみながらクリアに布を渡すが……彼女は受け取らずに部屋の隅まで逃げた。


「……ちくせう」


 リルナは手をぶんぶんと振ってから、床でゴシゴシと手をこすった。多少はにおいが落ちたかもしれない。


「お、保存食じゃ。干し肉があるぞ」


 メロディは放置されていたズタ袋をあさり、中から干し肉を見つけた。何の肉かはサッパリと分からないが、一応とばかりにもらっていく。食べられないことは無いだろう。


「ん? これは……?」


 まだ何かあるかな、と袋をひっくり返していると、指輪がひとつ転がり出てきた。装飾がなく、ただの金属製の輪に見えるが、内側に文字が刻んである。共通語ではない文字列で、メロディには読めなかった。


「イザーラ、これは読めるかの?」

「どれどれ?」


 イザーラは受け取りランタンの明かりで見てみるが、首を横に振る。


「エルフ文字ではないわね。神代文字じゃないかしら?」


 ということで、リルナに指輪が渡された。同じくランタンの明かりに指輪をかざして、内側の文字を読み取る。


「これ……旧神代文字だ」

「読めぬのか?」

「神代文字と似てるから、なんとか読めそうだけど……え~っと、たぶんだけど……こんすとらくとあならいず……みたいな意味かな……そうだとすると、構造解析の指輪?」

「構造解析? マジックアイテムなのか?」

「たぶんだけど……」

「そこに商人がいるじゃない。鑑定してもらえばいいんじゃないかしらん」


 イザーラの言葉に、なるほど、とリルナとメロディはクリアを見た。うけたまわりました、とクリアは指輪を受け取る。


「……ふむ。ふむふむ」


 クリアはじ~っと指輪を見たり、内側の文字を読み取ったりとして、最後に大きくうなづいた。


「何か分かったの?」

「何にも分かんないです」


 自信満々に笑顔でクリアは言った。


「お主、それでも商人か!」

「私はマッパーですって。地図専門です! ていうか、そんな未知のアイテムが鑑定できるんだったら鑑定士になってますよ!」

「確かに」


 クリアの言い分に納得して、メロディはうなづいた。もっともな意見じゃ、と肩をすくめる。


「メロディちゃんが使ってみればいいんじゃない?」

「それもそうじゃの。名前的に呪われることは無いじゃろう」


 メロディは革グローブを外して指輪をはめてみる。しかし、ブカブカではまりそうにないので、革グローブの上から指輪をはめた。もちろん、何も起こらない。試しにバスタードソードを引き抜いてみるが、何も起こらなかった。


「呪文がいるとか?」

「う~む、なんじゃったっけ? えーと、こんすとらくとあならいず~」


 バスタードソードを掲げながら刻まれた文字列を言ってみるが、何も起こらなかった。


「仕方がない。持ち帰って鑑定士行きじゃな」

「ただのリングっていうことで、私が買い取ってもいいですよ」

「い~や~じゃ」


 メロディがクリアに舌をべ~っと出して、小部屋の探索は終了となった。


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