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召喚士リルナのわりとノンキな冒険譚  作者: 久我拓人
冒険譚その16 ~かんたんなおしごと~

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~かんたんなおしごと~ 3

 依頼書に記載されていた遺跡の名前は、正式には無い。というのも、サヤマ城下街近辺には数多くの遺跡があり、今も尚、新しく発見されている。冒険者が多く集まる理由のひとつではあるのだが、そんな遺跡ひとつひとつに正式に名前を付けていたのではキリが無い。

 という訳で、俗称『石の遺跡』または『神代の岩だらけの遺跡』と呼ばれる遺跡に出発することとなった。場所は歩いて半日ほど。日帰りでの冒険は無理そうなので、大目に保存食を買って準備完了となる。


「そういえば、メロディ」

「なんじゃ?」

「鎧はどうしたの?」


 本日、朝からメロディはいつものヴァルキリー・シリーズの装備をしておらず、代わりの革鎧を装備しているだけだった。あとは白と青を基調としたロングスカートの服にバスタードソードのホルダーとブーツ、革グローブというルーキーらしい装備だった。


「うむ。妾はこれでも十歳か。つまり、成長に合わせて鎧も新調せねばならぬ。というわけで、今回は母上の力を借りず、妾のみの実力で挑戦じゃ」


 当たり前なのじゃがなぁ、とお姫様は苦笑してみせた。

 そんなメロディに対してリルナは少しだけ逡巡する。メロディの身長は変わっておらず、横幅も変化は無い。胸の大きさもぺったんこのままだ。


「もしかして、わたしのせい?」

「ち、ちがうぞ。リルナは何も関係ない。妾の都合、じゃ。う、うむ」


 どうやらメロディは前回の冒険を相当に気にしているらしい。結果が最悪だったのに加えて、戦闘においても彼女にとっては精神的な不安を残す結果だった。受け止めようとしたリルナ自身を、ヴァルキリーの鎧は攻撃とみなしてオートガードを展開させた。青い障壁に体を打ちつけたリルナの体には、しばらく青痣になるほどのダメージが残ってしまった。発動しなければ、メロディともども薙ぎ倒されていたのには違いはない。それでも、メロディは仲間の体を受け止めたかった。

 その想いが、彼女の今の装備に現れているのだろう。


「今ごろメイド長が仕立て直しているに違いない。うむ、そうに違いない」

「……あれ、メイド長が作ってたんだ」


 戦闘だけでなく神代や旧神代級の防具をリメイクできるメイドとはいったい何なんだろうか、とリルナは考えたが、あのサヤマ女王のメイドをやっていて、メロディを育て上げたくらいだ。逆にそれぐらいできて当たり前なんだろう。と、思うことにした。


「メイド長だったら倭刀ぐらい作れそう」

「……かもしれんなぁ」


 否定できないところが恐ろしい。少女ふたりは、頭の中でキリッとこちらを見てくるメイド長を思い出して、なぜか身震いをするのだった。

 東門から外へ出ると、一同は南に向かって歩き始めた。残念ながら乗り合い馬車は見当たらず、タイミングが悪かったので歩きで出発する。見晴らしの良い平原を道に沿って歩いていき、途中で商人の馬車に乗せてもらったりしながら、午後には目的の遺跡に到着した。

 蛮族が住み着いた、という情報から警戒していたのだが、周囲に蛮族やモンスターの姿は無く、平和そのもの。草原の中に静かに石柱が建ち並んでいた。

 石の神殿、と俗称されているだけにその遺跡は石で出来ていた。神代の物と思われる遺跡で、そりゃ遺跡が石造りなのは当たり前なんじゃないか、とリルナは思っていたのだが、実際に目にしてみると納得がいった。

 石といっても岩に近い、巨大な岩石が立てかけるような門が入り口にあった。長方形に近い形の岩石がお互いを支えあっており、バランスを保っている状態だ。その先には古い遺跡の例にならうかのように草やツタに覆われた建物があるが、一部屋分くらいの大きさしかない。恐らく、地下に続いているのだろう。

 手入れや管理はまったくされていないので、荒れ放題なのだが少なくとも人か蛮族が通ったと思われる後はあった。

 イザーラに先頭を頼み、その後ろをリルナとメロディが少し離れて歩く。殿しんがりはサクラに任せて警戒しながら遺跡へと近づいていく。大昔には綺麗に並んでいた石柱と、支えていたであろう屋根の形はすでに無い。石柱はかなりの数が倒れており、丸い残骸と化していた。足元も四角い石が敷き詰められているのだが、その間から雑草が伸びており荘厳さよりも大自然をアピールしていた。


「あら?」


 先頭を歩いていたイザーラが足を止める。つぶやいた言葉から敵ではないと判断して、リルナとメロディが追いつくと、彼の後ろから前方を確認した。

 そこには、倒れた石柱に座る一人の少女。

 黒い服と帽子に身を包んだ、白い肌の少女がノンキにこちらに向かって手を振っていた。


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