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~ヒューゴ国・タキグン地方~

 晴れ渡った空に雲がぽつりと浮く快晴。太陽はまだ真上には到達しておらず、絶好の洗濯日和と言えるだろう。

 列島タイワ。本日はどの国もカラリと晴れ渡った良い一日でしょう。天候予知を兼ねる空賊ならば、そう告げて間違いない程の天気だった。

 列島タイワの丁度真ん中に位置する国、ヒューゴでもそれは同じだった。空の奥まで見通せそうな雰囲気に、ドラゴンも翼を休めて一眠りしているかもしれない。


「うわあああああああああ!」


 しかし、そんな穏やかな空とは裏腹に。

 少女の叫び声がタキグン地方の山々にコダマした。


「来ないで! 来ないでええええええぇぇぇぇ!」

「ぎゃぎゃぎゃぎゃ!」


 太陽の光を浴びてご機嫌だった木の精霊たちも、少女の叫び声にびっくりしたのか木の中へと隠れてしまう。どうやら少女に木の大精霊『ドライアード』の加護は無かった様だ。

 ポニーテールとバックパックを激しく揺らしながら、少女は逃げる。

 追いかけるのは、赤い小鬼だった。

 ゴブリン。

 そう名付けられた亜人族、または蛮族と呼ばれる魔物だ。一体一体では大した強さではなく、普通の大人ならばまず殺される事はない。しかし、ゴブリンの恐ろしさは数だ。

 今、少女を追いかけているゴブリンの数はおよそ15。彼女が足を止めた瞬間、ゴブリン達は自作した石斧で次々に少女へと襲い掛かるだろう。


「ひいいいいぃぃぃぃ!」


 そうなっては少女の短い人生はお終いだ。死体は打ち捨てられ、バックパックの中身(主に食料が)はゴブリン達の戦果となってしまう。


「まだ始まってもいないのにいぃぃ!」

「ぎゃぎゃぎゃ!」


 ゴブリン達の戦果と成らない為に少女は全力で走っていく。


「あぁ、街だ! 助かった!?」


 岩肌の山道をぬけると、次第になだらかになっていく平原へと出た。その先に大きな城壁が見え、かがり火が昼間でもチロチロと揺らめいている。


「た、たすけてぇ!」


 少女は山道を駆け下り、平原に入ったところで叫んだ。どうやらその声は門番である兵士に聞こえたらしい。鎧姿の二人がこちらへ駆けてくるのが見えた。


「助かったぁ」


 そう呟いた瞬間。

 衝撃が背中から伝わり、少女の体が少しだけ浮き上がった。


「ほへ?」


 途端に軽くなる体。つんのめって、転びそうになるが何とか持ち直すと、走りながら背中を確認する。


「バックパックが!」


 どうやらゴブリンに追いつかれ、背中に一撃いれられた様だ。幸いにしてバックパックがクッションとなりダメージはゼロ。

 しかし、バックパック自体が壊れ、肩部の金具が壊れた。バックパックは自然の法則に従って地面へと落ちてしまった。

 思わずブレーキをかける少女。

 そこへ兵士の二人が追いついた。


「嬢ちゃん、早く中へ!」

「で、でも荷物が」


 槍を構える兵士には流石の集団であるゴブリンも躊躇するらしい。ギロリと対峙する様に睨み合いが始まる。

 しかし、ゴブリンの目的はあくまでも少女の荷物であったらしく、落ちていた戦利品を持ち上げると足早に山へと戻っていった。


「よし、戻るぞ」

「はい!」


 兵士の二人は少女の腕をガッシリと掴むと警戒しながらも城壁の入口へと戻っていく。

 ズリズリと引きずられながらも、少女は叫ぶのだった。


「わたしの荷物~ぅ!」


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