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召喚士リルナのわりとノンキな冒険譚  作者: 久我拓人
冒険譚その14 ~チャーム・チャーマー・チャーメスト~

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187/304

~チャーム・チャーマー・チャーメスト~ 1


●リルナ・ファーレンス(12歳)♀

 召喚士:レベル6 剣士:レベル0(見習い以下)

 心:普通 技:多い 体:少ない

 装備・旅人の服 ポイントアーマー アクセルの腕輪 倭刀『キオウマル』

 召喚獣:9体


●ルル・リーフワークス(12歳)♀

 学士見習い:レベル4 

 心:多い 技:少ない 体:少ない

 装備・学士の帽子 学士の服 森羅万象図鑑


●メローディア・サヤマ(10歳)♀

 剣士:レベル6

 心:多い 技:少ない 体:少ない

 装備:ヴァルキュリアシリーズ・リメイク バスタードソード バックラー


○リリアーナ・レモンフィールド(22歳)♀ 《有翼種:天使》

 娼婦:レベル46 神官:レベル5

 心:多い 技:少ない 体:少ない

 装備:オイランのキモノ クレリック・フード

 大きな大きな浴槽の中で、天井へと立ち昇っていく湯気をリルナは眺めていた。長年の湿気を帯びてか、天井の木はすっかりとくたびれているので今にも腐ってしまいそうなのだが、不思議と原型を留めていた。

 恐らく腐敗防止の魔法でもかかっているのだろう。お陰で、良い具合に湿り、一種の趣となっていた。朱色に塗られた木材とも相まって赤と黒のコントラストを表現している。


「ふは~」


 浴槽は広く、リルナが足を延ばす――どころか、大の字に広がって浮かんだとしてもまだまだ余裕があった。お湯は温かく、心どころか体まで溶けてしまいそうだ。実質、ぷかぷかと浮かぶリルナの表情はとろけてしまっており、裸で身を投げ出しているとは思えないほどの油断しきっていた。


「ヒール・ミディ」


 そんなリルナの頭には、大きな肌色の物体。枕にしては歪な形をしているかもしれないが、お湯の中ではぷかりと浮いている。男性にとっては憧れの存在であり、女性にとっては肩こりの象徴ともいえる二つの丘。

 巨乳。

 白い肌に傷ひとつ無く、まだまだお湯をはじく若い艶肌。出るところはトコトン出てて、出なくていいところは奥ゆかしいお姫様以上に出てこない。女性の理想像であり、男性の理想像でもある肉体が、お湯の中でリルナに回復魔法をかけていた。

 有翼種たる彼女の背中には白い翼。それも相まってか、その姿は神様にも等しい。慈愛に満ちた表情で、夜と静寂を司る神『ディアーナ・フリデッシュ』の力を行使していた。神様の力を使わせてもらうが故に、傷を治すという奇跡の魔法を使うことができる。神様の声を聞くことが出来る神官にのみ許された魔法だった。


「ありがと~、リリナーナ」

「いえいえ~、どうしたしましてぇ」


 現在、リルナは娼館『女神の微笑亭』に来ていた。もちろん、午前中の男性客が居ない時間帯。もしも夜という時間帯ならば、この大浴場にも大勢の男性客と娼婦が色々なことをしているだろう。

 そんな、ある意味での戦場に入るのはリルナとしては非常に緊張したのだが、大きな湯船とリリアーナの胸の気持ちよさにすっかりと溶かされてしまったようだ。巨乳を枕にして、お湯に浮かぶ、なんていう男にとっては理想郷を早くも経験してしまったリルナなのだが、残念ながら彼女は気づいていない。サヤマ城下街ナンバー1の巨乳枕の為ならば、その日の稼ぎを全て注ぎこんでもいい、と言う男性冒険者が後を絶たないというのに。


「はふぅ」


 すっかりと癒されたリルナは浮かべていた体を沈める。きっちりと座って左肩の傷を見た。女の子的には結構深刻な傷が残っていたのだが、それが完全に無くなっていた。加えて、スリ傷やら怪我の痕があった他の部分、特に膝なんかも綺麗になっており、回復魔法というより美容魔法なんじゃないか、とも思えた。


「神様の力って凄いねっ。っていうか、リリアーナの魔法ってレベルアップしてない?」

「え~っと、初期の回復魔法のヒール・ライトより強い、ヒール・ミディというのが使えるようになりましたよ~。これもディアーナ様のお力ですぅ」


 聞いてみれば、レベル5の魔法らしい。信仰心と信仰期間によって使える魔法が増えるそうなので、ディアーナみたいなタイプの神官はそれなりに居るそうだ。現役の娼婦という神官は珍しい……というか、唯一かもしれないが。


「そうなんだ~。う~ん、それにしても」


 リルナは反転して、リリアーナの体を見る。どうせ傷を治すのに裸になるんだったらお風呂に入りましょう、と彼女に連れてこられたリルナだったが、その歴然とした差に、改めて驚く。


「大きい……」


 目の前に浮かぶ巨大な胸。

 対して、自分の胸は浮かぶどころか少しだけ膨らんでいる程度。腰のくびれもイマイチなので、どうにも女としての差が開いている気がした。


「あら~、女は外側ではない、中身やで~、とサクラさんがおっしゃってますよ~?」

「サクラの言葉は全然信用できないっ」


 ともすれば、女の子だったら誰でもいい、的な雰囲気をかもしだすお爺さんなので、そのセリフにはひとつも納得できなかった。


「そうですか~? メロディさんも、妾もいつか、と息巻いてらっしゃいますね~」

「いつの間に娼館に来ているのよ、お姫様」


 サヤマ城のお姫様だから良かったものの、普通の皇族や王族だったら大問題だ。


「はぁ~」


 リルナはため息混じりに自分の胸をふにふにと触る。一応は柔らかいので、良しとしよう、と満足した。


「あら、ひとりえっちですか?」

「こんなところでしませんっ!」

「あ、リルナちゃんもするんですねぇ~。わたしも好きです~」

「したことないっ! まだしたことないですよっ!」


 ルルと同じような、ゆったりとした喋り方のリリアーナだが……その方向性はまるで違っているらしく、リルナは全力で否定する声をあげるのだった。


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