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召喚士リルナのわりとノンキな冒険譚  作者: 久我拓人
冒険譚その13 ~エルフ王国と木の大精霊・ノルミリーム~

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~エルフ王国と木の大精霊・ノルミリーム~ 18

「わたしも行くっ! 絶対に許さないんだからっ!」


 二人して出発しようとする剣士と狩人にリルナは宣言する。左手は動かないので、右手で握りこぶしを作ってみせ、大丈夫だとばかりに突き上げた。


「行くって……その怪我でか? いやいや、ほんまに休んどいた方がええで、お嬢ちゃん」

「そうよ。あたしの薬だって万能じゃないんだし、ほら、あぶら汗が。我慢してるんでしょ」


 落ち着け、とばかりにサクラが言い、イザーラはリルナがやせ我慢していることを見抜く。つい先ほどまで青い顔で傷みに歯を食い縛っていたのだ。魔法でもない限り、そう簡単に痛みは引かない。

 その証拠とばかりに、イザーラが指摘した嫌な汗は、リルナの背中も濡らしている。平気な顔して立っていられるダメージではない。

 だが、それでも――


「行く。召喚士の恐ろしさを、思い知らせてやるんだから」


 ふぅ、と息を吐き、呼吸を整える。そして身体制御呪文マキナと空中描画魔法ペイントを同時起動させる。二重魔法によって召喚陣が次々と描かれ、リルナは片っ端から召喚を始めた。ウンディーネの魔方陣と合わせて八つの輝く魔法の三重真円。それぞれには各々の神話時代の文字が刻まれ、そして対応する召喚獣が喚び出された。

 大精霊であるウンディーネ、サラディーナ、ノルミリーム。

 魔女であるレナンシュ・ファイ・ウッドフィールド。

 コボルトであるハーベルク・フォン・リキッドリア13世。

 そして、人族と袂を分かち、蛮族へと付いた種族たちである三人、薫風真奈、天月玲奈、神導桜花。

 最後に白き龍、ホワイトドラゴンであるリーン・シーロイド・スカイワーカーが召喚された。


「よしっ! みんな、わたしの為に頑張って!」


 とリルナが言ったところで、ホワイトドラゴンに叩かれ、地面に倒れたところでグニュっと踏まれた。


「ぎゃーっ! 痛い痛い痛いっ!」

「説明不足。みんな理解できてないじゃないか……って、怪我してるの?」


 尋常じゃないリルナの暴れっぷりにリーンは気づいたらしく、素直に足をどけた。それだけでリルナはぐったりとしている。謝ろうとしたリーンに、サクラはええでええで、と伝えた。


「突然に元の場所に送還されたと思ったら、これは?」


 メロディの元に残ったはずの真奈は、どうやら先ほどのダメージで元の場所に戻っていたらしい。その辺りのことを踏まえて、サクラとイザーラは一同に説明をした。


「うぅ、ハーくん。ウンディーネとサラディーナと協力して、みんなに美味しいお茶でも振舞ってあげて」

「まぁ、出来るのはそれくらいだから……」


 コボルトのハーベルクに一度戻ってもらい、再び召喚。紅茶の葉っぱとティカップセットを詰め込んだバックパックと共に喚び出されたハーベルクは、ウンディーネに水を、サラディーナに火を熾してもらい、紅茶をつくる。


「大精霊様に協力してもらえるなんて。なんて贅沢な紅茶なんだワン……」


 と、恐れ多いながらも皆に紅茶を配る。それぞれ座ったり木にもたれながらの状況説明と現状把握であり、わりと自由なのが魔女のレナンシュ。なぜかサクラの膝の上に座っており、気分良く話を聞いていた。


「――という訳や。魔神に一撃やられたリルナは自暴自棄になってお前さんたちを召喚した。理解できたか? 分からんかったら質問どうぞ」


 説明を終えサクラはレナンシュの頭をナデナデしながら質問者に挙手を促した。ハイハイ、と元気良く手をあげたのはダークドワーフの天月玲奈。


「サクラさんとその魔女っこの関係が知りたいネ!」

「呪いで雁字搦め。レナンシュが死ぬ時はウチの死ぬ時。逆はその限りやない。ウチが一方的に守り、愛を注ぐ。そんな関係や。嘘やけどな」


 嘘と付け加えたものの、全員はおぉ~、と感動したような声をあげた。もっとも瞳を輝かせているのは隣に座る自称エルフ一のブ女。イザーラは浮かんできた涙をグシグシと拭うのだった。


「お、おっけー……召喚主さんが復活したよっ」


 ようやくリーンに踏まれたダメージと痛みが引き、リルナはみんなの注目を集める。痛みにもがきながらも作戦を練っていたらしい。


「サクラとイザーラは後方で待機。これは、わたしの戦い。いいよねっ」

「いいわけあるか。お前さんがそんなに頑固やとは思わへんだわ。なんやねん、そのこだわり」

「……あれって、魔神召喚じゃない? 召喚術で悪いことしようとしてるの、許せないだけよ……」


 リルナは唇を尖らせた。

 召喚術が一般的ではなくなってしまった現在において、あの謎の集団が行う魔神召喚のイメージは、召喚士にとって致命的だ。一度付いてしまった悪いイメージは、そう簡単には払拭できない。下手をすれば迫害の対象となってしまう。

 そうならない為にも、召喚士という立場でもって率先して魔神を倒す必要がある。例え見ているのが身内だけでも。例え、怪我を負っていようとも。

 召喚士という存在を守る為に、リルナが倒さなければならない敵なのだ。


「分かったわよ、リルナちゃん。その代わり、後方待機じゃなくてリルナちゃんを守る役をやらせてもらえないかしら?」

「イザーラ……ありがとっ。さすが爺じゃなくって若いだけあるよね!」

「爺で悪かったな。まったく……ウチも防御役やったるから、無茶するなよ」


 サクラの言葉に、リルナはにっこりと笑う。

 そして、召喚された皆を見渡し、作戦という名の吶喊とっかんアイデアを伝えるのだった。


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