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召喚士リルナのわりとノンキな冒険譚  作者: 久我拓人
冒険譚その13 ~エルフ王国と木の大精霊・ノルミリーム~

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~エルフ王国と木の大精霊・ノルミリーム~ 4

 船の上、という状況は船乗り意外には存外に退屈なものである。

 しかし、その一般人の枠内に当てはまらないのが少女であり、お年頃であり、好奇心旺盛なリルナたちであった。冒険者としては少しばかりはしゃぎ過ぎかもしれないが。

 サクラは召喚によって喚び出された薫風真奈の訓練を行っていた。


「全身の中心を意識するんや」

「は、はい」


 二人が立っているのは帆柱から横に突き出た帆桁の上。風を受ける帆を繋ぐそれはしっかりとした木ではあるが、波で揺れることに加えて高さもあり、船乗りでも立って歩くのが難しい場所であった。


「しっかりせーよ。ほれ、ジャンプやジャンプ」


 そんな不安定で足場の悪い場所でサクラはぴょんぴょんと飛んでみせる。凄い、を通り越して気持ち悪いバランス能力だった。


「ひ、ひぃ……」


 真奈も頑張って跳んでみるが、ほんの少し体を浮かせただけで悲鳴をあげた。当たり前といえば当たり前。船乗りでもないのに自由に動けるサクラが異常ではあった。


「いやぁ、良い眺めだな」

「うむ。絶景だ」


 そんな帆柱の下では、屈強な海の男たちがニヤニヤと笑っている。視線の先は水平線ではなく真上。太陽の下にチラチラみえる素敵な光景は、彼らが船乗りになってからは初めての見栄えあるスカートがヒラヒラと風になびいていた。


「う~む、妾も修行に混ぜてもらおうか……いや、しかし」


 船の最後尾である少し高くなった転落防止の柵の上にメロディは座っていた。その手には港町で買った一本の竿。足元の大きなバケツには幾匹かの魚が釣り上げられていた。


「これも集中力持続の修行じゃ」


 我慢がまん、とメロディはつぶやき、波に飲まれて不確かな浮きを見つめる。

 退屈しのぎに、と買った釣竿。島国で生きながら釣り経験がゼロ、というのも頂けないと思ったらしく、それなりに楽しんでいた。

 なにより夕飯が豪華になる為、頑張り甲斐もある。しかし、昨日はサハギンという平たい魚に手足を付けただけのモンスターを釣り上げてしまい、強制的に戦闘になってしまった。


「あれは大物じゃった……」


 手応えは抜群であり、苦労の末引き上げたらモンスター。手伝ってくれた海の男達に申し訳なかったのぅ、と呟きながら海を眺める。


「あぁ、しかし~……たのしいな」


 歩いて草原や平原、山などを行く冒険も楽しいが、こうして船で移動している最中も楽しい。遠くに見える島や補給に立ち寄る港町。船の上での少し窮屈な生活に、こうしてその日の夕飯を釣り上げるのんびりとした時間。


「くひひひ……」


 楽しくて楽しくて仕方なく、お姫様はこっそりと下品な笑い方をするのだった。


「はい、こっち向いてください。え~っと、ハンソさん? ですね」

「ういっす。ハンソです。間違いなくバイカラの街の船乗りッス」


 サクラが修行、メロディが魚釣りをする中、リルナは船乗りたちを一人ひとりチェックしていた。

 というのも、


「パペットマスターじゃないよね?」

「ういっす。自分はそんなんじゃないッス」


 船乗りたちの体をじ~っと見て廻る。件の人形遣い、パペットマスターならばその体に魔力の糸が見える。それは身体制御呪文マキナの発展型か改良型である『デウス・エクス』。もちろんそれは変態パペマスが勝手に名付けたものだが。


「うん、だいじょぶ。ご協力、ありがとうございます」

「ういっす」


 ハンスはそう返事をすると仕事に戻っていった。


「はぁ~」


 そんな様子を見てから、リルナは重いため息を吐く。

 パペットマスターに気に入られてから、付きまとわれる記憶がある前回の遠征。シューキュ島まで人形遣いは付いて来ていた。となれば、今回のカーホイド島への遠征でも付いてきている可能性がある。

 人形遣い《パペットマスター》の異名通り、彼は人形を使う。どの程度の遠隔が可能なのかは分からないが、さすがに島を越えての遠隔操作は不可能だろう。それが出来るのならば、神の領域だ。次元をひとつ上に移して、信仰の対象になっている。碌な魔法を授けそうにないが。嫌がらせを司る神か、呪いの類だろう。蛮族に人気かもしれない。

 そんな妄想を頭から跳ね除け、リルナは船員たちをチェックしていく。名前と実在する人物かを確認し、魔力の流れを探知する。

 三者三様。退屈とは無縁の船旅を送るのだった。


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