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召喚士リルナのわりとノンキな冒険譚  作者: 久我拓人
冒険譚その11 ~ライバル・パーティ・アライバル~

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~ライバル・パーティ・アライバル~ 11

 かくかくしかじか、と集落の人に説明したところ、心良く真奈たちを集落に迎え入れてくれた。今まで狩人たちが襲われなかった事と、リルナたちの説明もあったからだろう。初めから彼女たちだけで集落を訪れても同じ結果にはならなかったとリルナは思う。

 集落の長であるヤットさんの家に六人は集まり、お世話になる。


「さすがに六人も娘ができると、お嫁にやるのも大変だ」


 なんて冗談を言ってヤット夫妻は笑っていた。


「動けな~い~」


 和気藹々《わきあいあい》とした団欒の中で、リルナだけはベッドの上だった。森の恵みと久しぶりの屋内という環境に真奈と玲奈はスッカリと骨抜きになってしまっており、リルナのお世話は桜花がしてくれた。


「本当にダメになっちゃうんだね」

「実戦では使えないよね……はぁ~」

「あはは。はい、あ~ん」

「あ~ん……ん~、ヤットさんの料理は美味しいよね」


 夕飯はトロトロに煮込まれたシチューだった。寝転びながらアツアツのシチューを食べるのは少し難しいけれど、そこは冒険者。動かない体に鞭打って、見事にあ~んしてもらうリルナだった。


「ふむ……お主ら、妙に仲が良いのぅ」


 夕飯も終え、すっかりとくつろぎムードになった中、リルナと桜花に対してメロディが話しかけてきた。


「仲いいかな?」

「かな?」


 ふたりは顔を見合わせる。そんなリルナたちに対してメロディは、うむ、と頷いた。


「マイナー魔法職だけに気が合うのかのぅ。普及には協力するぞ」


 なんだか言動が怪しい。と、リルナはメロディを観察すると……ちょっぴり頬が赤く染まっていた。どうやらアルコールが入っているらしい。メロディはそのままご機嫌な様子で真奈と玲奈に絡んでいった。

 ちなみにサクラはお風呂の準備中。滅多に使用しないが、集落にはそこそこ大きなお風呂があり、六人くらいなら余裕で入れるそうだ。

 その後、サクラと真奈の訓練という名の真剣勝負を集落のみんなで見学してから、ボロボロになった真奈と、もとより動けないリルナを伴ってみんなはお風呂に入る。

 宴会と化した集落では、みんながご機嫌でお酒や料理を持ち寄っており、お風呂あがりだというのに、冒険者たちも混ざる事となった。

 翌日はぐったり。

 もちろん、集落のみんなもぐったり。ちょっとした休日となった。

 そんな休日を経た翌日に、リルナも動けるようになったのでお別れとなった。


「はい、これ持っておいき」

「またいつでも来なさい。歓迎するよ」


 ヤット婦人から保存食である肉の燻製をもらい、ヤットさんと握手する。その手は大きく、ギュッと力強くて、リルナはちょっぴり泣きそうになった。


「いつでも力になるわ。もっとも、食事中やお風呂の際には断りますけど」


 真奈の言葉にリルナは苦笑する。


「だいじょぶ。召喚獣には断る権利があるから」


 それを聞いて安心しました、と真奈は笑った。


「盗賊の仕事があったら、いつでも呼んでネ」

「ダンジョンでは真っ先に玲奈ちゃんを呼ぶからねっ」


 任せてネ、と玲奈はリルナとハグをした。


「マイナー魔法職、普及しようの会!」

「結成っ!」


 すっかりと仲良くなった桜花とリルナは、がっちりと腕を組み、両手をパンパンと合わせて、最後にジャンプしてハイタッチした。

 メロディもサクラもそれぞれの別れの挨拶を済ませ、集落のみんなに手を振った。真奈たちはもうしばらく集落に残るそうで、集落の人たちと共にリルナやサクラ、メロディを見送るのだった。


「また来るからね~!」

「まっておるのだぞ~!」


 リルナとメロディは大声で叫び、そして振り返った。そんなふたりの姿を見てから、サクラは前を向く。冒険者の宿に帰るまでが冒険だ。油断なく大平原を見渡すのだった。

 行きがそうだったように、帰りも何事もなく、ちょっと拍子抜けするかのような雰囲気でサヤマ城下街へと帰った一同は、さっそくと今回の冒険をカーラへと伝える。


「ふ~ん……まぁ、初めての冒険にしては大団円じゃないか」

「でしょっ! 召喚できる数が一気に三人も増えたんだし、いいでしょ! ねっ!」


 隻腕ながらイフリート・キッスの女主人は肩をすくめた。


「分かったわよ。ほら、お姫様とサクラも出しな」


 その言葉にリルナとメロディはバンザイをする。各々、オキュペイションカードをカーラへと預けると、彼女はすぐに内容を更新してくれた。


「お、帰ってきたな、リルナ!」


 丁度そこで、先輩冒険者であるカリーナ・リーフスラッシュはリルナたちの声に気づいたらしく、二階から降りてきた。本日は休みだったのか、それとも冒険を終えたのかは分からないが、いつもの紺色のローブではなくラフなシャツに下着姿という姿。呑みに着ていた冒険者の男たちから、ひゅぅ、と歓声が上がる。


「ふっふっふ! 追いつきましたよ、スカイ先輩! 見てください、レベル5です!」


 そんなカリーナに更新されたばかりのカードを見せ付けるリルナ。だが、それに物怖じせず、カリーナはニヤリと笑った。


「ふはははは! 遅いわルーキー! あんたがノンビリと歩いている間に私はとっくにレベル6なのさー!」

「なにーっ!?」

「あっはっはっはー! いつまで経ってもルーキーちゃんはルーキーちゃんだねぇ。お姉さんが大人の魅力を教えてあげようか、子猫ちゃん」

「むかっ! わたしとそんなに変わんないくせに!」


 リルナはカリーナのシャツに掴みかかる。どうやら下着は付けていないらしく、ちょっぴり見えたら恥ずかしい部分が見えちゃったりして、酒場は大盛り上がりとなった。


「いいぞ、龍喚士! そこだ!」

「負けんな、スカイスクレイパーズ! めくれめくれ!」

「ひゅー! 見えたっ! 見えたぞ! これだからイフリート・キッスは止められねぇ!」


 やんややんや、と盛り上がり、調子に乗った男冒険者がガメルコインを飛ばしあう。いわゆる、おひねり、だ。それをウェイトレスであるルルは学士の帽子を反対向けて受け止めていった。


「いやぁ、儲かるわぁ~」


 ウットリとするカーラさん。冒険者といっしょに盛り上がるサクラ。


「ふむ……妾も脱ごうか?」


 スカートを持ち上げるメロディだが……


「いえいえいえいえいえいえいえいえ!」

「女王に殺されちまいますよ!」


 と、全力で否定する近くの冒険者。

 ともかくとして、冒険者の店イフリート・キッスはいつでも賑やかで、喧騒の溢れる楽しい酒場なのだった。

 そのお陰で、所属する女性冒険者が格安で泊まれるので、世の中は持ちつ持たれつ。社会の縮図のようなものを学ぶお姫様だった。


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