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召喚士リルナのわりとノンキな冒険譚  作者: 久我拓人
冒険譚その11 ~ライバル・パーティ・アライバル~

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~ライバル・パーティ・アライバル~ 7

 蛮族の少女。

 先頭にいた綺麗な黒髪の少女は、剣を抜く。年齢はリルナたちとそう変わらない。背中まで届く黒髪は傷みなどが一切なく、彼女の動きに合わせてサラサラと流れるように肩から零れた。

 肌は白い。それは、蛮族に味方した人間種の特徴であり、ダークニゲンと呼ばれていた。病的なまでに白い肌。だが、それも相まって少女の美しさを引き立たせるようだった。

 剣を構え、サクラと相対する。出で立ちは剣士そのものであり、軽装備ながら金属鎧であり、胸や腕を防御していた。綺麗なプリーツとスカートは深い色であり、髪の色と相まって彼女のイメージを『黒』としていた。


「ふっ!」


 上段に構えて素直に振り下ろした剣。サクラはそれを受け止める。素早く引き抜いた倭刀の腹で一撃を難なく防いだ。

 だが、その攻撃でサクラは彼女の実力に気づく。思い切り剣を跳ね上げ、牽制するように倭刀をふるった。

 黒の少女は大きく下がる。倭刀を構えるサクラ、そして黒の少女は同時に口を開いた。


「強い。リルナは前に出るな、メロディはリルナを守って」

「強い! 桜花おうかは魔法を! 玲奈れなは桜花を守りつつ隙を突いて!」


 その場に居合わせた少女たちの『了解』という言葉が響く。次いで、二つのパーティの後衛が動いた。

 リルナが召喚術を起動させる。指先を魔法の光で覆い、空中に魔方陣を描いていく。

 対して、桜花と呼ばれた少女は魔法を起動させる。茶色がかったショートヘアーに長い耳。蛮族に味方したエルフ……ダークエルフだった。白いローブのような服とハーフパンツ。手に持った木製の長い杖の先端が魔法の光に彩られる。


「魔法発動はさせないネ」


 リルナの魔法発動を阻止しようと、玲奈と呼ばれた金髪の少女が動く。袖の無い衣服にホットパンツという超軽装備に身を包んだ少女は、ダークドワーフだった。一見すればダークニゲンと判別は難しいが、低身長と幼い顔立ちが唯一の区別とも言えた。また、他の二人と同じく白い肌をしている。

 玲奈の武器はダガーだった。背中から引き抜いた刃をそのままにリルナに迫る。だが、その手前でメロディが大きくバスタードソードを振り下ろした。


「させぬ。悪いがそなたの小さな武器では、妾に近づくことも出来ぬぞ」

「むぅ」


 玲奈は唇を尖らせて後退する。桜花の前まで戻った時、二人の魔法が発動した。


「召喚、ウンディーネ!」

「水の精霊よ!」


 魔方陣が発動し、大精霊ウンディーネが召喚されたのに対し、桜花の魔法が湖から水の精霊を呼び出した。


「え?」「え?」


 それを見て、リルナと桜花は驚く。精霊を呼び出す魔法など聞いたことも見たことも無かった。水の精霊は青い髪で、掌サイズの人形のような姿だった。服は着ておらず裸なのだが、精霊に性別の概念は無い。

 桜花の近くにふよふよと浮かんでいる水の精霊は、無邪気そうな表情を浮かべたあと、びっくりしたような表情になった。


「大精霊さま!?」

「あらあら、精霊を操る魔法なんて珍しいですね」


 精霊同士も驚いているらしい。しかし、そんな一同を戦闘中だと戒めるように剣戟の音が森に響く。

 黒の少女とサクラが打ち合っていた。少女は必死に連撃を繰り出すが、サクラはそれを余裕でさばいていく。反撃する暇がない、というよりは、様子を伺っているように思えた。


「大変。妖精さん、真奈ちゃんに水の加護を!」

「はいは~い」


 どうやら黒の少女の名前は真奈らしい。そんな事実をリルナは脳内の片隅に納めながら、ウンディーネにメロディの武器に水属性付与を命じた。


「ありがとう、桜花!」

「ありがとうなのじゃ、リルナ!」


 同じような魔法で同じような効果。真奈の剣はその細い刀身に青の光が宿る。マジックアイテム化だった。水属性を帯びた剣は青の軌跡を残しサクラへ襲い掛かる。

 だが、倭刀はそれを物ともしない。加えて、実力は遥かに高いサクラは動じることなく真奈の攻撃を受けさばいていく。


「ど、どうしよう玲奈ちゃん。強いよ、あの人!」

「こっちはそうでもないから、チビのほうをやっつけるネ!」

「誰がチビじゃ誰がぁ!」


 蛮族の会話をバッチリ聞いていたメロディは青い軌跡を残しながらバスタードソードを振るう。わひゃう、と桜花は下がるが玲奈はその一撃を受け止めた。


「む?」


 短いダガーで受け止められた驚きに加え、玲奈の体がパチリと紫電が疾る。それは光属性と金属性が相まって生まれた『雷』の力だった。


「しびびび!?」


 刀身から伝わってきた属性エネルギーがパチパチとメロディの体で弾ける。ビリビリとした感触にメロディは思わず後退した。


「どうだチビ!」

「お主もチビじゃろうが!」


 メロディと玲奈が交戦する。大剣を振るうメロディに対して短剣の玲奈。どうやら実力は拮抗しているらしく、お互いの攻撃は当たらず、サクラと真奈のような剣戟は響かない。


「え、え~っと、次は!」


 桜花は再び魔法を発動させる。杖を媒体として魔法の光が走り、森の木から精霊を呼び出した。

 対して、リルナはレナンシュを召喚する。精霊の力で玲奈の防御力をアップさせたのに対して、レナンシュは拘束魔法を発動させた。


「リビー・バインド」


 ぽつりとフードの下から魔法を呟く。森の中では木属性の魔女であるレナンシュの魔法は効率的に発動する。桜花の足元から生えたツタは、桜花の足に絡まり、そのまま体を縛り上げた。


「い、いやぁ、なんかエロい!」

「いやいや、そんなつもりないよ?」


 体を這うツタに背中をゾワゾワさせながら悲鳴をあげる桜花に対して、レナンシュは否定する。契約を結んだサクラがエロいので、そっち方面に敏感になっているのかもしれない。


「いいぞ、レナちゃん!」

「え、私?」


 レナちゃん、という言葉に玲奈が反応した。


「あ、違う違う。魔女のレナンシュちゃん。レナちゃん」

「なるほどネ~。うわっ! 会話中の攻撃は禁止ネ! マナー違反!」

「戦闘にマナーなどあってたまるか!」


 わちゃわちゃと剣を振り合っているメロディと玲奈に対して、リルナと桜花の対峙は決着を見せる。にゅるにゅると絡まるツタに桜花は悲鳴をあげながら地面に縫い付けられるように拘束された。

 なにやら相当に苦手らしく、レベル1の魔法で単純に捕まってしまった桜花に、リルナはほっと息をこぼす。

 そして、トドメとばかりに召喚陣を描いた。中央に書かれた神代文字は『龍』。光を宿した手で召喚陣を叩き、発動させる。


「召喚! リーン・シーロイド・スカイワーカー!」


 光り輝く魔方陣。それが収束すると同時に光の粒子はホワイトドラゴンの形を取り、霧散した。現れたのはホワイトドラゴン。キョロキョロと周囲を見渡し、状況を理解したリーンは、こちらを見てあんぐりと口を開けている玲奈を見て、くわぁ! と牙を剥き出しにしてみた。


「も、もうダメ、ネ……」


 ダークドワーフは戦闘放棄するようにバンザイした。お手上げ、ではなく降伏を意味する行動だろう。


「ありがと、リーン君っ! ホワイトドラゴンも空気読めるんだねっ」

「それ嫌味? 皮肉?」

「両方っ」


 リーンは召喚主に炎のブレスをお見舞いしたい衝動に駆られるが、我慢したようだ。


「どうや、ここまでにせえへんか?」

「……そのようです」


 召喚されたリーンを見て戦意を喪失したのは玲奈だけでなく真奈もだった。驚く様子で、剣を構えたままサクラではなくリーンを見ていた。もし、サクラにその気があったのならば、その時点で胴体と頭が決別していた。

 真奈は剣を収めるとガクガクと震えている玲奈と悶えている桜花の元まで移動した。


「命だけは……助けてもらえないか?」


 その言葉に、リルナはようやくと気づく。


「あれ? 共通語だ」

「うむ……そういえば、言葉が通じておったのぅ」


 蛮族は、蛮族の言葉を使う。ゴブリンなどが使用している発音しにくい言語だ。ダークニゲンやダークエルフ、ダークドワーフも蛮族語を使っている。そんな思い込みもあってか、リルナとメロディは会話をしていながら、気づいていなかった。


「話し合いが通じると思ったし、何かあると思ってな」


 サクラはそう言って、リルナとメロディの元まで移動した。防戦一方だった理由は、初めから共通語を使っていたと気づいていたからだった。


「さて、蛮族がこんな所で何をしとったんか、話してもらおか」

「あわわわわわ……」

「うひゃぅ、ん、あ、ひゃん、ん、ん~」


 震える玲奈と悶える桜花の声。


「リルナ~」

「あ、は~い」


 良く分からない空気になったので、リーンとレナンシュに帰ってもらってから蛮族の少女に話を聞くことにした。


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