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召喚士リルナのわりとノンキな冒険譚  作者: 久我拓人
冒険譚その11 ~ライバル・パーティ・アライバル~

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~ライバル・パーティ・アライバル~ 2

 一週間ほどの携帯食料を買い込んだリルナたちは警備兵のお兄さんとお爺さんに手を振ってヤサマ城下街の城壁を抜ける。

 広がる平原と北に見えるハオガ山を見渡してから、さて、と三人は呟いた。


「どっちに行く?」

「普通は街から出る前に決めるものと思うのじゃが……?」

「まぁ、行動してからでも遅ぉあらへんやろ」


 と、サクラが倭刀を鞘ごと引き抜く。そして、地面にまっすぐに立てた。


「ウチはこうやって旅してきた」


 サクラは自信満々に倭刀から手を離すと、もちろん地面に向かって倒れる。その方角は、西。リルナ、メロディがその方角を向くと、見えるのは断崖絶壁の海と水平線だった。


「お主が二百年も呪いを解けなかった理由が分かった気がするのぅ」

「うんうん。良く生きてるよね」

「……」


 パーティメンバーから熱い視線を受けつつ、サクラは荷物から地図を取り出す。懲りずに現在地から西側へ指を滑らせて行くと、隣の島であるユゴチーク島に辿り着いた。


「よし、目標はユゴチーク島や!」


 というサクラは放っておいて、リルナとメロディは倭刀をもう一度立てて、離した。今度は南東側へと倒れたので、やったね、と二人はハイタッチする。


「なぁ、爺も仲間やろ。無視せんといてーな」

「お爺ちゃん、こっちですよ~」

「大丈夫か? 歩けるか? なんなら妾が背負ってやろうか?」

「ありがたや~ありがたや~」


 と、サクラは二人のお尻をなでまわす。怖気立った二人は遠慮なくサクラを殴ろうとするが、残念ながら当たらない。むきー、と暴れまわる少女が三人。いつまでも城壁の近くでわちゃわちゃしているので、警備兵のお兄さんはあくびしながらも和やかに笑うのだった。

 一通りはしゃいでから、リルナたちは南東へと歩き始める。もちろん都合よく街道は無いので、平原をひたすら歩いていった。


「何にもないね~」

「そうじゃのぅ」


 運が良いのか悪いのか、平原を歩き続けること半日。見かけるのは動物ばかりで、蛮族はおろかモンスターも見かけることなく一日が終わる。大精霊にお世話になりつつ、冒険者セットの簡易テントで一晩を明かすと、朝から再び歩き始めた。


「そういえばメロディって足は大丈夫なの?」

「足? どういう意味じゃ?」

「わたし、訓練学校に行くときに初めて村の外に出てイフク国を目指したんだけど、その時に足の裏の皮がボロボロになってさ。二日目は泣きそうになってたから」


 それまでの村の暮らしでは長時間歩くことは無かった。一日目を終えて足の裏を見たリルナはびっくりした話をメロディにする。


「妾も経験があるぞ。母上に命じられた訓練で、冒険者セットを担いで半日歩き続ける訓練じゃ。お城をダンジョンに見立ててな、時折襲ってくるメイド長から逃げながら永遠に城の中を動き回る訓練をした時には、足の裏が悲惨なことになったのぅ」


 足の裏云々より、女王の命じた訓練が恐ろし過ぎてあまりメロディの話が頭に入ってこなかったリルナは、とりあえず大変だったね~、とお茶を濁した。


「なぁなぁ、それウチには聞いてくれへんの?」

「サクラはお爺ちゃんだったんでしょ? さすがに大丈夫じゃなかったの?」

「実は若返りの呪いを受けた時に、日に日に体調が良くなっていくねん。だから、めっちゃ嬉しかった時期があったんやけどな。その時に調子にのって歩き回っとったら足の皮がズタズタになってな。いやぁ、街も村もないところで動けんようになった時はどうなるかと思ったで」

「それはどうやって助かったのじゃ?」

「通りすがりの冒険者に、助けて~って。ポーションを分けてもらったねん。あれほど感謝したポーションはなかったなぁ~」


 そんな冒険者あるあるな話をしながら、三人の少女はノンキに大平原を歩いていくのだった。


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