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召喚士リルナのわりとノンキな冒険譚  作者: 久我拓人
幕間劇

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142/304

幕間劇 ~わりとノンキなお風呂事情~

 できた!

 と、歓声があがったのは冒険者の宿『イフリート・キッス』の裏庭からだった。夕方に差し掛かる時間帯で、一般人はぽつりぽつりと家へと帰る時間。太陽が逃げ出し、月が世界の主役の座を狙っている頃に、サクラとマインは両手を高らかに上げた。

 つまり、バンザイ。


「おぉ~、立派なものじゃのぅ」

「ほんとだねっ」


 そんな二人を称えるかのように、リルナとメロディはパチパチと拍手した。完成したのは、もちろんお風呂だ。巨大な大木を縦に切り、中身をくり抜いた長方形の湯船。グラつかないように端材で作った足で支えられ、火の魔石を投入してお湯を作る鉄箱も横に設置されている。

 リルナに召喚されたウンディーネに初回の水張りを頼み、魔石でじんわりと水を温めてお湯にすることに成功。ぽかぽかと湯気が夜空へと昇っていく様は、少女たちの喜びを増幅させた。


「いやぁ、永遠に終わらないかと思った……」


 マインはプルプルと震えている自分の両手を見る。大木をひたすらくり抜く作業は、地味でキツかったらしく、彼女からすっかりと握力を奪っていた。


「いやいや、いつかは完成するって~」


 サクラはマインを褒め称えるようにバシバシと彼女の背中を叩く。そんなサクラも全身汗だくであり、いつもポニーテールにしている髪は解け、ざんばら状態。一番お風呂が必要に思わせる風体だった。


「はやく入るのじゃ。妾も手伝ったのだからな!」

「わたしもわたしもっ!」


 リルナとメロディはお風呂場の周囲に壁を作った。壁といっても簡易的なもので、木の柱を立ててそこに平たく切った木を打ちつけていくだけ。少々、隙間があいているが、覗きに来る殿方はいないだろう。

 所属しているのは冒険者の女性ばかりだ。つまり、バレたら後が怖い、ということである。


「よし、みんなで入るで!」


 は~い、とサクラの言葉に少女たちは返事をし、服を脱ぎ捨てる。街中で裸になるのはちょっとした抵抗があったものの、温かいお湯につかればそんな考えはどこかへ吹き飛んでしまう。


「ふへあ~」


 という情けない声は、サクラから漏れ出た。お疲れだったマインも似たような声を出している。


「あ、こっちの方はぬるいよっ」

「魔石を一個追加じゃな」


 疲れきっている二人とは違い、リルナとメロディはいろいろと検証していく。お湯につかりながら混ぜたりして、適温や魔石の量を試したりした。


「これでエールがあれば最高なんやけどな~。リルナ、ちょっと頼んできてくれへん?」

「え~、裸なんだけど……」

「では妾が行こう」

「「「お姫様!?」」」


 堂々と裸のまま出て行こうとするメロディを三人は全力で止めた。イフリート・キッスの酒場は現在、大量の冒険者たちが飲み会の真っ最中だ。もちろん、全員が男。そんな空間にお姫様を全裸で行かせる訳にはいかない。


「わ、見てみて! お風呂が完成してるよ!」

「あ! ホントだ!」


 と、どうやら先輩冒険者パーティが帰ってきたらしく、お風呂場までやってきた。


「ねぇねぇ、次は私たちも入っていい?」


 その言葉に、リルナたちはサクラを見る。幸せそうな笑顔を浮かべながらサクラは言った。


「今日は特別やで。明日からは自分で魔石を入れてな」

「は~い」


 と、答える先輩冒険者たち。

 こうして、サクラの夢であり、女性の味方でもあるお風呂が完成した。ちなみに全てサクラの自腹であった為に、しばらくの間、イフリート・キッスでサクラはみんなに崇め奉られるのだった。


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