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召喚士リルナのわりとノンキな冒険譚  作者: 久我拓人
冒険譚その10 ~シティアドベンチャー・王子様騒動譚~

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~シティアドベンチャー・王子様騒動譚~ SIDEお姫様 6

 拘束された男性がようやく意識を取り戻したのは、すっかりと日が落ちたあとだった。どうやら頭を殴られたらしく、加えて口に布を押し込められた上で猿ぐつわをされていたとあって、かなり呼吸に無理があったらしく、男性はかなり消耗していた。


「家に帰ったところまでは覚えているのですが……」


 男性はキーユ少年の父親であり、母親と三人暮らしだと語った。そして、今その二人がいないのに気づき、父親は不安を募らせていく。頭部へのダメージも相まってフラフラと倒れる男性をメイド長は抱き起した。


「恐らく誘拐事件かと。しかし、大人と子供を同時に運ぶなんて相当に目立つでしょう」

「聞き込みが一番じゃな。とりあえず、え~っと、お父さん……を城へと運ぼう。動くのはそれからじゃな」


 メロディの記憶に父親の姿はない。よって『父』という言葉にはどうにも気恥ずかしさが伴ってしまった。照れている場合ではないと頬をぺちぺちと叩いてから、メイド長と共に家を出て城へと目指す。


「ん? いや、妾は残って先に情報収集したほうがいいかの?」

「いえ、危険です。犯人は少なくとも大人を一人昏倒させる力があります。加えて、キーユ少年と母、二人をさらっているところから、複数犯の可能性があります。単独行動は控えたほうが賢明でしょう」

「なるほど」


 メロディは素直にメイド長の言葉を受け入れて、城へと急ぐ。背中に背負った目立つ旗はすでに外しており、緊急事態とばかりに父親を背負うメイド長を先導した。


「メロディ様、誘拐はくれぐれも内密に」

「どうしてじゃ?」


 日が落ちる中、住民区を移動する者は少ない。それでも中央通りにさしかかると、冒険者の姿が多くなってきた。さすがに馬車の姿はないので、二人は堂々と中央の道を進んでいく。


「誘拐には目的があります」

「目的?」

「はい。お金が欲しい物取りであれば、人間をさらう必要はありません。誘拐している時点では、拉致された人が生きている場合が多いはず」

「たしかに、すぐ殺したのでは意味が人間を移動させた意味が分からんのぅ。ということは、騒げば騒ぐほど、さらわれた人間の命が危ない、というわけじゃな」


 はい、とメイド長はうなづく。


「速やかに犯人の位置を特定し、犯人に気づかれる前に拿捕、もしくは殲滅させなければなりません。よって、大勢で動くわけにもいかず、目立つので女王の力も借りられません。以上、かなり難易度の高いクエストです。可能ですか、メローディア姫?」

「もちろんじゃ。我が領民を傷つける者は赦さん。母上に代わり、このメローディア・サヤマが一網打尽にしてくれようぞ」


 目の前を速足で歩いている少女から、期待通りに言葉が返ってきたこともあり、メイド長はその口元を緩ませる。わずか十年ほどしか生きていない彼女は、サヤマ女王と共にメイド長が育ててきた。

 その成果は十分に出ている。

 否、十二分には発揮されていた。

 理想のお姫様に育ってくれた、と歓喜に打ち震えた表情は、一瞬にして消し去った。今は成長の喜びよりも事件を追うほうが重要だ。


「しかし、分からん」

「何がですか、姫?」

「どうして二人さらって、ひとりは置いてきたのだ? 父親が残されたら犯行がバレるではないか……そこにメリットがないぞ?」

「……身代金の要求、ではないですね。私たちが偶然にも訪ねなければ、この方は死んでいたかもしれません」

「不可解じゃが……考えても仕方がないか。よし、城が見えてきたぞ」

「はい、姫様」


 二人は足早に衛兵のもとへたどり着くと、気を失った男性を任せ再び夜の城下街へと移動するのだった。


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