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召喚士リルナのわりとノンキな冒険譚  作者: 久我拓人
冒険譚その10 ~シティアドベンチャー・王子様騒動譚~

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~シティアドベンチャー・王子様騒動譚~ SIDE召喚士 1

●リルナ・ファーレンス(12歳)♀

 召喚士:レベル4 剣士:レベル0(見習い以下)

 心:普通 技:多い 体:少ない

 装備・旅人の服 ポイントアーマー アクセルの腕輪 倭刀『キオウマル』

 召喚獣:5体


●ルル・リーフワークス(12歳)♀

 学士見習い:レベル3 

 心:多い 技:少ない 体:少ない

 装備・学士の帽子 学士の服 森羅万象図鑑

 サヤマ城冒険者闘技大会。

 月に一度開催される冒険者たちの試合であり、優勝者には漏れなくサヤマ女王と一戦することができる、サヤマ城下街の一大イベントだ。

 腕試しはもちろん、各冒険者の実力を知るには良いイベントでもあり、参加者は多い。それはもちろん観客においても同様である。

 見取り稽古、と呼ばれるものでレベルの高い者同士の闘いは見学するだけでも参考になり、勉強になる。とりわけ、ルーキーたちが観客席に多い理由でもある。

 人が集まれば、もちろん商人も集まる。闘技場の周囲には屋台が立ち並び、イベント当日ともなればお祭にも似た雰囲気となる。冒険者から一般人、はたまた貴族や旅人など、ありとあらゆる人々が集まり、サヤマ城下街の主な収入源となっていた。


「あむあむ」


 すり鉢状になった観客席で、人々が賑やかに中央の試合場へと声援を送る中、リルナ・ファーレンスはノンキに焼き鳥を頬張る。屋台で買った一本50ガメルの串には四つの鶏肉が刺さっており、香ばしく炭火で焼き上げ、塩をパラパラとふった簡易的な食べ物だ。


「んふふ~、美味しい」


 しかし、単純だからこそ美味しい。焼いてキュっと絞まった鳥肉と塩の相性は抜群とも言え、リルナが魅了されるのも仕方がない。


「あ、始まるよ~」


 焼き鳥に夢中なリルナの隣では、リンゴ飴をペロペロと舐めるルル。真っ赤な飴で舌を真っ赤にさせても気にせず、会場を指差した。

 試合会場に出てきたのは一人の男で、どうやら司会を担当しているらしい。短い挨拶を拡声魔法で大きくして会場内に響かせた。


「それでは早速参りましょう。まずは1レベルから5レベルの試合です。第一試合はダサンの街の冒険者! 『火喰い猫亭』所属、ロガー・ヘンズ選手!」


 司会に呼ばれて出てきた選手は、やはりルーキーらしくリルナと変わらない年齢だった。まだまだ子供の面影を残す少年ロガーは緊張の面持ちで会場に向かい礼をする。


「がんばれー!」「いいぞトップファイター!」「がんばれロガー!」「期待してるぞ!」


 などなど。

 会場内から身内を含めた声援が飛ぶ。それに応えるようにロガーは大きく剣を突き上げた。

 試合で使われる武器の刃は潰してあり、ナマクラだ。それでも打ち所が悪ければ怪我をしてしまうので、回復魔法を使える神官が会場に控えている。ただし、彼らの出番は優勝者の女王戦に集中してしまっているのが現状であり、ほとんどの試合では怪我までいくような闘いは無かった。


「対戦者はサヤマ城下街、『イフリート・キッス』所属! しかし名前は秘密なマスクド・プリンセス選手です!」


 続けて登場したのは、豪奢な白いドレスを動きやすいように改良したものに、簡易的な皮鎧を装備した少女だった。美しい金髪は背中を越え臀部まで届くほど。サラサラと動きに合わせて零れるように風になびいていた。

 小さな身長には不釣合いなほどに長いバスタードソードを持ち、まるでおとぎ話に出てくるドラゴンを退治したお姫様みたいだった。

 ただし、その顔にはマスクがピッタリと付けられており、口元しか表情は分からない。煌びやかなそのマスクは紅を基本とし、右側には貴族趣味にも似た大きな羽が付けられている。

 その威容な姿に、観客席は一瞬にして静まるが……


「いいぞ~! 姫様~!」「やっちまえ、姫~!」「メローディア姫! 姫! ひめええええええ!」「きゃー! こっち向いて姫様~!」「かわいいぞ、姫!」「付き合ってくれええええ!」「母親をなんとかしろー!」「好きだー!」「姫! 姫! 姫! ひめえ! えええええええ!」


 と、一瞬にして声援に包まれた。

 名前も顔も隠しているが、開かれた王室――加えて冒険者としてそこそこ有名だったメロディであることは残念ながらバレバレだった。


「あはは! もうバレてる! あはは! あはははははは!」


 知っていたリルナは焼き鳥を落としかねない勢いで笑った。隣にいたルルも、クスクスと笑う。

 もっとも、メロディも正体がバレるのは承知の上だったらしく、バスタードソードを掲げて観客の声に応えるのだった。


「うむ、がんばるぞ! あとドサクサで告白しても妾は応えんからな! 正々堂々と告白しにくるが良い! 妾はいつでも受けてたつぞ!」


 お姫様の宣言に、冒険者たちはヒューヒューと色めきだつ。

 しかし、かわいいお姫様の後ろにはどうしても凶悪無比な母親の姿がチラつき、一歩を踏み出せない若者は、う~む、と尻込みしてしまうのだった。


「かっこいいね~、メロディ」

「うんうん。いいよね、前衛はっ。わたしじゃ無理だもん」


 さすがに後衛職である魔法使いは試合に参加する者はいない。前衛をバックアップする職業が多い上、接近戦に向いておらず一人で参加は現実的ではなかった。


「あ、そろそろ始まるよ~」

「がんばれ、お姫さまっ!」


 メロディとロガーが礼をする。

 観客の声援の下、冒険者闘技大会の始まりを告げる剣戟の音が響くのだった。


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