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召喚士リルナのわりとノンキな冒険譚  作者: 久我拓人
冒険譚その9 ~お子様ダンジョンに挑戦!~

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~お子様ダンジョンに挑戦!~ 9

 なんとか渡りきったリルナは鉄門の前にあるスペースに座り込む。すこしばかりスカートを持ち上げると、太ももの内側に擦り傷が多数。踏み外したときに角で傷つけたのだろう。


「痛い……」


 少しばかり出ている血を拭ってからスカートをおろす。ヒリヒリとするが、行動に支障はないし、しばらくスカートの中身を誰かに見せる予定もない。


「次は妾が行くぞ」


 リルナが精神的ダメージを癒している間に、メロディが細通路へと挑戦する。


「気をつけてな」

「うむ!」


 なにやら自身満々に頷いたメロディは両手を広げて、慎重に渡り始める。冒険者としては当たり前以前の能力なので、メロディは危なげなく中央付近までやってきた。


「そろそろじゃな」


 慎重に、ジリジリと歩を進めると微かに聞こえる発射音。パシュっと音と共に、吸盤の矢が発射された。


「ふん!」


 メロディは矢を避けようともせず、しっかりと額で受けた。吸盤はズレることなく額にピッタリと張り付くが、メロディは動揺することなく、そのまま渡りきる。


「ふはは、どうじゃ!」

「お、男らしい……」


 額の吸盤はそのままに胸を張るメロディに、リルナは賛辞をおくった。俗に呼ばれる『漢探知おとこたんち』。罠に堂々とかかり、そのまま乗り切るという盗賊泣かせの罠解除方の一種だ。もちろん、オススメはされていない。


「ほな、ウチも行くで~」


 サクラはそう軽く言うと、トンとジャンプした。天井が低い中、サクラは起用に前方に跳んでみせる。一歩目で細通路に着地すると、再び前方ジャンプ。射出される矢を難なく避けて、二歩目を着地。そして、三歩目で鉄門へと辿り着いた。


「すごい」

「さすがじゃのぅ」

「ふっふっふ。美少女としては、そんなマヌケをさらす訳にはいかんからな」


 その言葉に反論するには、実力も美貌も足りないので、リルナは唇を尖らせた。美少女、というカテゴリーではメロディに軍配があがるが、そんな美少女も吸盤を額に引っ付けていては台無しだ。肩をすくめてから額の吸盤をひっぺがした。


「おめでとうおめでとう! 見事にクリアーしたね、お姉さんたち! じゃぁ次に案内するよ」


 細い通路も、ドールにとっては普通の道と変わらない。余裕で渡ってきた彼は、そのまま鉄門前に立つ。すると、鉄門は自動で開いた。


「次のステージにご案内~!」


 ドールは機嫌良くぴょこんぴょこんとジャンプして、体を回転させながら起用に進んでいく。それに続くようにサクラ、メロディと進み、リルナはやっぱり太ももの内側が気になるようで、ひょこひょこと付いていった。

 次の部屋は、先ほどまでとは違いこじんまりとしていた。およその正方形で五メートル四方の部屋になっていた。

 天井は少しばかり高くなっているが、相変わらず魔法の明かりが部屋を照らす。そして、正面と左右に黒く大きなプレートが掲げられていた。その下には、まるで台のように床の一部分が突出しており、一人がその上に乗れそうな程の大きさだった。


「さてさてお姉さんたち! 次はリドルだよ!」


 ドールが部屋の真ん中で振り返り、大げさに両手を広げた。


「リドル? って、なんじゃ?」


 メロディの質問にサクラが答える。


「いわゆる『なぞなぞ』や。パンはパンでも食べられないパンはな~んだ、というやつやな」

「食べられないパン……あれか、小麦粉と間違えて片栗粉で作ったパンか」

「……なにそれ、メロディ」

「妾が作ったパンでな。というか、パンに成らなかったな、アレ」


 同じ白い粉でも全く違う物なので、さぞかし残念な結果になっただろうな、とリルナは苦笑した。


「答えはフライパンだよ、メロディ」

「……なるほど。つまりシャレが利いている問題、というやつじゃな」

「なぞなぞをそう評価するんは、お姫様ぐらいやろ」


 サクラは肩をすくめてから、ドールに説明を促した。


「この台の上に乗ると、プレートに問題が表示されるよ。リドルに正解すればOK! 問題は全部で三問。全てに正解すると次に進めるよ! でも、間違えたらちょっぴり痛いバツが待ってる! 楽しみだね!」

「それって死なない?」

「痛いだけだよ。死んじゃったら意味がないしね!」


 あまり信用のならないドールの言葉に、三人は少しばかり相談する。結果、経験と実力があり、いざとなったら何とかしてくれそうなサクラが試すことになった。


「どれからでもいいんか?」

「いいよ! 交代してもいいし、誰かが一人で答えてもいいよ! とにかく三問正解するのがお姉さんたちの目標だ!」


 わかった、とサクラは正面の台に乗る。すると、どこからともなくジャジャンと楽器を打ち鳴らす音が聞こえた。それと共に黒のプレートに魔法の光が文字を記していく。まるでリルナが使うペイントのように、共通語で文字が書かれていった。



 問題……立派な存在なのに、いつも人に踏みつけられている。わたしは誰?



「まさか本当になぞなぞとは……え~っと、立派やから偉い人。せやけど、踏みつけられとる。ん~……被虐趣味の王様?」


 ブブーという音がどこからともなく響く。もちろん、リドルの答えが間違っていた音だ。何が起こるのか、身構えるサクラに対して、それは上からやってきた。

 無音の落下。

 サクラの頭に、金属の板がクリーンヒットする。


「あいたー!?」


 ぐわい~ん、と湾曲しながら金属板は床へと落ちる。と、同時にサクラが台から降りて頭を押さえてうずくまった。金属板は薄いので意識を失うほどのダメージではない。しかし、痛いことは痛いので、珍しくサクラがダメージを負った姿をリルナとメロディはケラケラと笑った。


「くぅ……笑うんはええけど、答え分かるんか?」

「妾はサッパリじゃ」

「わたし分かるよ」


 リルナは台の上に飛び乗る。問題は出されたままなので、そのまま答えを叫んだ。


「答えは『スリッパ』!」


 ピンポーン、というちょっとマヌケな音が部屋へと響いた。そして、プレートの問題に、大きくはなまる印と、よくできました、の文字が加わった。


「おぉ、確かにリッパじゃが人に踏まれとるのぅ。この部屋はリルナに任せるぞ!」

「まっかせて!」


 サクラもそれに賛成なのか、頭をなでながら手で合図をする。

 リルナは次の問題に挑むべく、右の台へと乗った。再びジャジャンという音と共に問題が刻まれる。



 問題……1文字目がどこかへ行くと、小さな子供になるよ。

     2文字目がナになると、群れで襲ってくるよ。

     3文字目がズにのると、思い詰めて襲ってくるかもしれないよ。

     私は誰?



「わ、むずかしいかも?」


 台の上でリルナは、ふむ、と人差し指を口元に当て、思考を巡らせるのだった。


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